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Netflixオリジナル 『ハリウッド』 語るべき物語は誰もが持っている

ハリウッド Season 1
監督:ライアン・マーフィー 2020年 アメリカドラマ( Netflix )

Netflixのドラマは見始めると止まらない。
5月の新着ドラマ「ハリウッド」も御多分に洩れず。

このドラマはテンポがよくて軽快。
「夢を叶える」「自分に正直に生きる」というテーマが物語の軸となる。

舞台は第二次大戦後のハリウッド。
映画スターを夢見たり、監督や脚本家として映画を作ることに情熱を注ぐ人々が登場する。彼らはダイバシティに富んでいて、白人はもちろんだが、アジアンハーフ、黒人、同性愛者、当時ではまだめずらしい女性社長など、マイノリティ側の人々が数多活躍する。

そんな彼らが成功のために、時には大きな声では言えないようなことをして、最終的には夢を勝ち取るのだから爽快だ。
わかりやすい悪役も登場するけど、基本登場人物が全員良い人なのも、ハラハラせず気楽に鑑賞できる要因のひとつと言える(少なくとも私にとっては)。

そしてSeason1の最終回では、登場人物たちが制作した映画が主演女優賞から作品賞まで最優秀賞を(ほぼ)総なめするという展開。
「これでもか!」と言うくらい、めちゃくちゃハッピーな終わり方なので気分を上げたい時にはオススメだ。実際、仕事でぐったりした後に鑑賞してかなり気分が持ち直した。

一方で、ドラマでは人間の影の部分も描かれる。
長年同性愛者であることを隠して生きてきたプロデユーサーのディックの苦悩や、黒人で同性愛者という二重の差別を受けるアーチーの絶望など、所々に深いテーマが散りばめられていることが物語のスパイスになっている。

最終回でディックはガンで死んでしまうのだが、彼の恋人が葬儀で語った言葉が響く。

彼が死んだ夜、残した言葉がある
「自分に正直に死ねた」

苦しんだ末、ディックは同性愛者であることを隠すのをやめ、ついに心から愛する同性の恋人を得ることができた。人生を終える前に自分に正直になれたことで救われたのだ。

ところで、ディックほどの苦悩ではないとしても「自分を偽らずに生きている」と言い切れる人はどれほどいるのだろうか。
少なくとも私はディックの最後の言葉を聞いて、心がざわざわしてしまうくらいには自分に正直じゃない。きっと無理をしている部分があるのだ。自分を解放しきれていいないとも言い換えられるかも。

また、脚本家であるアーチーが脚本賞を受賞した舞台で語る言葉にも励まされる。

どんな人生も、重要な物語だ。
自分の人生は語られなくて当然と思わないで。
価値のある話だ。胸をはって自分の人生を知らしめてほしい。
語るべきだと俺が証明した。聞きたがっている人はいる。

たぶん、自分を全面的に肯定できる人はそう多くはないのではないだろうか。
だからこそ、アーチーの言葉は多くの人々の心に届く。どんな人生もそれぞれに重要な物語なのだ。たとえ名もない市民として生きていたとしても、そこにはその人だけの大切な物語が存在する。要するに自分の人生を他人事のように傍観してはもったいないと言うこと。そんなことをしていたらこの世を去るときにきっと後悔する。

何はともあれ、このドラマはとてもよくできたエンターテイメントだ。
アウトサイダーな人々を登場させ、軽やかなストーリーの中にも心に留めるべき普遍的なものをさらっと絡めて表現する。複雑になりがちな題材をあえて単純に分解して物語に乗せる。そして、どこまでも前向き、最後は超ハッピーエンド。

気軽に楽しめて前向きにな気持ちになれる作品です。

(day4)

写真:香港(2012)

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