バスにゆられて、島へ。(1)灯台
三崎港に行くと、バスに揺られて、あるいは野菜と魚のマルシェ「うらり」前から出ている舟で、むかいの城ヶ島に上陸することもある。
バスなら十五分、舟なら五分。
都内から二時間以上かけて、三崎に来るだけでも特別な日なのに、そのうえ島に上陸するなんて(上陸、という言葉の響きが好きだ)、なんて贅沢な一日だろうと思う。
「うらり」で三崎名物、肉まんならぬ「とろまん」を食べる。
城ヶ島で、魚介類(主に焼きイカ)をつまむ。
そこから、離島探索がはじまる。
お土産屋さんのある短い通りは、いつ行っても変わらない。
店先で貝殻のモビールが揺れて、ボールを追いかけてぐるぐるまわるぬいぐるみが、白い台の上でバタバタと音を立てている。
最初に訪れたときは確か、マグロの形をした「かぶと焼き」というおまんじゅうを買った。
お店のお姉さんに「今日は『トロと休日』というゲームが好きで来たんです」と話しかけてみると、懐かしいと言って、色々と話を聞かせてくれた。
立ち話が続いたものだから、奥から出てきたご婦人が、お茶をだしてくれたりもした。
こんなふうに、この町で「猫のトロ」というキャラクターの話をすると、会話がはずむ。
地元の人となにかきっかけがあって話せることは、ありがたいことだと思う。
城ヶ島では、なんとなく灯台を見て、岩礁を歩く。
涼しい季節なら、岩礁に寝そべってみることもある。
カモメやトンビの、甲高い鳴き声。
ゆるやかな波の音。
島で聴く音は、港町から聴く音ともすこし違う。
視線の先には、空と海だけ。
水平線は、午後の光でぼんやりと輝いている。
目に見えるモノは、少ないほうがいいのかもしれない。
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