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EC口コミデータとID-POSデータをもとにしたAIでの販促文章自動生成の取り組みのご紹介

こんにちは!データストラテジストの山田です。

先日、西鉄ストア様、リテールAI研究会様と共同のプレスリリースを配信したのですが、日経新聞でも取り上げていただくなど非常に大きな反響をいただいています。

ECサイトの口コミ・購買データ×AI、購買者の声を元にしたPOPで隠れた需要の掘り起こしに成功

このプレスリリースの内容をより詳細に発表するためにNRF2024: Retail’s Big Show Asia Pacific(NRF APAC 2024)に参加してきましたので、今回はプレスリリース内容の深掘りとイベントレポートをお送りします。

プレスリリースの説明

プレスリリースの内容を端的に説明すると、AIベースでのリテール革新をリードする「ID-POS」×「ECデータ」×「AI」の活用事例です。

小売店では、来店客の購買意欲をかき立てるために商品ごとに説明用のPOPをつけるという施策をすることが多いのですが、一般的にスーパーマーケットでは1万点ほどのSKUが存在すると言われており、すべての商品にPOPを作成することはコストの観点から現実的ではありません。そのため、一部の重点商品にのみPOPをつけるということが一般的に行われています。

また、メーカーでは、大きな広告費や販促費をかけられない商品は新規顧客との接点を作りづらいという課題がありました。逆に、消費者から見ても限られたPOPやパッケージなど限定的な情報からしか商品の情報を得られず、良い商品と出会うチャンスを逃してしまっています。

そういった課題を解決するために、リテールAI研究会の分科会において、西鉄ストア・マインディアが共同で取り組んだのが、「ID-POS」+「ECレビュー(口コミ)」×「生成AI」で販促文章を自動生成する取り組みです。
実施のフローは以下の通りです。

  1. 西鉄ストアのID-POSデータをAIで解析し、各店舗の商品棚ごとに顧客層の特性と購買傾向を解明

  2. 1の結果から潜在需要が見込め、かつ種類が多く訴求が難しいカレーカテゴリと韓国のりを対象商品に選定

  3. マインディアのEC口コミ・購買データをAIで解析し、商品ごとに消費者評価の傾向を特定

  4. 各商品に対して見込み客の特性を踏まえた商品説明文を、AIで自動生成

カレーの棚で実際に使用したPOP

本来、店舗、正確には商品棚ごとの客層を捉え、かつ、SKUごとに最適な販促文章を作成しようと思うと、店舗数(商品棚数)とSKU数の掛け算で膨大な工数が必要になってしまうため、そうした施策は現実的に実施ができません。しかし、データの解析や文章の生成にAIを活用することで最小工数で客層連動型のPOP作成の施策を実施することが可能となりました。
また、EC上の口コミデータを活用することで、より消費者の目線に近い販促文章を生成しています。

これを実現するためには、ID-POSというオフラインのデータからの客層分析と、ECの口コミというオンラインのデータを統合してデータを活用する必要があります。それぞれ単独でも膨大な量のデータが存在するので、その適切な処理にはAIの力が欠かせません。

今回は一部店舗、一部商品での限定的な実験でしたが、それでもカテゴリ全体で昨対比約105.5%の売上伸長という結果を得ることができました。もちろん工数をかけた施策を行う重点商品であれば珍しい数値ではありませんが、「定番商品」を中心にこの成果が出たことに大きな意義があると考えています。

NRF APAC 2024

概要

NRF2024: Retail’s Big Show Asia Pacific(NRF APAC 2024)とは、全米小売業協会が主催しアメリカで毎年開催されている展示会『Retail’s Big Show』のAPAC(アジア太平洋地域)版です。APACでの開催は今年が初めてでした。
6月11日〜13日にシンガポールのマリーナベイサンズで開催され、シンガポール、中国、日本などから約7,000人が来場するほど、大いに盛り上がっていました。

感想

今回のNRF APAC 2024では、「顧客体験の最大化・最適化」に強くフォーカスされていた印象です。共通して重要視されるのが、「実際に得られる経験」である中で、「実際の顧客の経験」であるレビューデータをベースにPOP生成が出来るのは非常に本質的で面白い形になっていると感じています。
実際、日本だけでなく海外の方からも非常に興味を持っていただいていました。特に中国ではすでに50%近くにまでEC化率が高まっているので、日本と比べてもECのデータの重要度が高いと言えます。日本でも年々EC化率は高まっていますので、今後その重要度は高まっていくでしょう。

AI活用という文脈では、データ分析やオンライン施策での活用面では多くの事例が紹介されていましたが、オフラインの実店舗での施策はほとんど紹介されておらず、この取り組みはAPAC全域で見ても先進的な取り組みだと認識できました。

今後の展開

取り組みの強化と拡大

今回はまだ一部店舗、一部カテゴリでの実験的な取り組みでしたが、今後は対象となる棚の追加(飲料や酒類など)、対象となる店舗の追加(うまくいったカテゴリは他店舗へ)を考えています。
また、今回が、「売れている商品」をより売れるようにするという目的で実施しましたが、オフライン店舗の売上・粗利向上に繋がる高単価・高粗利商品、要は、「売りたい商品」を売れるようにするための、実施対象の調整も並行して実施を計画しています。
こうした調整と細かな生成AIへのプロンプトのチューニングを重ね、より効果的なPOPを幅広く、かつ、簡単に生成できる状態を目指します。

取り組みの進化

電子棚札の活用を通じて、例えば時間帯別、曜日別での客層の違いやコメントごとの反応状況を加味してコメントを変える、「ダイナミックコメント」という新しい取り組みにも挑戦していきます。販促物としての効果がより見込めるだけではなく、副次的に、印刷や設置といった工数の削減も見込めます。
また、ECでの売上状況とPOPの効果による売上の変動も踏まえて品揃えに反映させていくような取り組みにも並行して挑戦ができるようにもなります。
さらに、既存の取り組み内容や上記の今後の取り組みを踏まえて、インバウンド対策で、諸外国(アジア系)の言語でのPOP生成にも対応していきたいと思っています。

まとめ

本取り組みにご興味のある小売事業者様、メーカー様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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