見出し画像

有名キャスターがパニックアタックから学んだ「10% 増しの幸せ」

ゴールデンウィーク中に読んでとてもよかった本を紹介します。アメリカの3大ネットワーク、ABCテレビの有名なキャスター、ダン・ハリス氏が書いた彼の5年間の精神世界を探求する自伝『10% HAPPIER』です。

局内のライバルとの戦いや、激しい戦争のさなかでの戦場リポート、さらには、不安な気持ちを緩和するために始めたドラッグ... 結果、生放送中にパニックアタックを起こし、うつ病と診断されたダンが、たまたま上司からキリスト教福音派をはじめとする宗教の取材を任され、取材をしていくうちに最終的にたどり着いたのがマインドフルネス瞑想だったというストーリーです。

生放送でパニックアタックに襲われる


約502万人が放送を見ている中、パニックアタックを起こしたのが2004年の6月。この本が出版された2014年には、そのパニックアタックの映像が、ABCで本人により紹介されました。私も何度かこの動画を見ていたので、いつか本を読みたいとずっと思っていました。

動画は1:00あたりから、呼吸がおかしくなり彼の表情が変わるのが分かります。常に、自分の実力はまだまだこんなもんじゃないと自己否定をし、先輩記者たちが局内の競争に破れ、一人二人と消えて行く中、自分は生き残って出世したいという気持ちからワーカホリックに。精神に不調を起こしていることを薄々感じながらも、コカインやエクスタシーといったドラッグでごまかしていくうちにうつ病になったそうです。

懐疑心が強いダンを変えた一冊の本

ユダヤ人の家庭に生まれながら、全くの無神論者である彼が目覚めたのきっかけは、宗教やスピリチュアルリーダーの取材を始めてから同僚から渡された一冊の本でした。本来ならそのような本は読まない性格だったようですが、取材をしているうちに多様な思想を受け入れるようになり、エックハルト・トールの『ニュー・アース—意識が変わる 世界が変わる』を読んで、まるで自分の頭の中をそのまま書かれているような気分だったと説明します。

トールによると、人間は生まれてから死ぬまで、ずっと自分の頭の中の声に支配されている。その声は、ひっきりなしに何かを考えている ー ほとんどはネガティブな思考であり、同じのことのくり返しで、そして自分のことだ。

思考は頭の中の声

ただ、そもそも懐疑心が強い性格なので、本の中の自己啓発特有の表現などに違和感を覚えます。そして、その矢先に顔面に良性腫瘍ができて手術するという事態が起こり、その時に頭の中で恐ろしい未来予想図が広がったことにすぐに気づき、この「頭の中の声」を黙らせる方法を求める旅が始まったそう。その未来予想図とは「顔にざっくりと傷跡が残る→ ABCをクビになる→ ホームレスになる」という頭の中の声。しかし、エックハルトの本を読んでいたので、自分の頭の中の思考のありのままの姿が見え、その心配があっという間に消えた訳ではないけれども、以前よりも思考に支配されなくなったのだそう。

ダン氏は髪の毛を凄く気にしていて、その後もたびたび、薄毛の心配から暴走する妄想に支配される話しが出て来ます(笑)。そして、彼がインチキ臭いと揶揄するディーパック・チョプラ氏やエックハルト氏などを取材をするうちに、「エゴを抑制しながら、世俗的な成功を手に入れるにはどうするか」という究極の疑問を持ち始めます。

慈悲の心を持つと幸せになれる

その後、彼が導師とよぶ精神科医で仏教徒のマーク・エプスタイン氏と出会い、彼の勧めで10日間の瞑想合宿に参加。瞑想が頭の中の声を鎮めることを実感していきます。特に彼曰く「わざとらしくて無理がある」慈悲の瞑想を続けてみたことによっての効果を、「慈悲の心を持つといい決断が増え、もっと幸せになれる。反応するのではなく対応すること。味方を増やすという利点もある」と評価しています。最後は究極の疑問への答えも自分なりに出せたようです。

ところで、『10% HAPPIER』というタイトルですが、瞑想をはじめた当初、「怪しげだ。あいつは変な自己啓発にハマってしまったのではないか」と思われないように、瞑想をすると「10%増しでハッピーになる」という説明を思いついたとのこと。この本もそういったスピリチュアルを「怪しげだ」と思っている人に向けて書いたのだそう。

私の場合はパニックアタックではなくて不眠だったのですが、瞑想に辿り着いた経緯も似ているし、エックハルト・トールの「頭の中の声(Voice in your head)」ですべてが腑に落ちたところも、ヴィパッサナー瞑想を知り10日間の合宿に参加した経緯も自分と同じなので、(エックハルト、チョプラ両氏への揶揄以外は)全編共感できる内容でした。

大学での研究結果なども要所要所で盛り込まれているので、瞑想の効果等に懐疑的な方は、ぜひ読んでいただきたい本です。



この記事が参加している募集