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連載小説『五月雨の彼女』(全14話)

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夫の愛人は、小学生の頃に私をいじめたあの子でした。同い年の正反対なふたりが、時を経て再び対峙することに…。 (2022年4月9日~5月25日)
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【YouTube動画】連載小説「五月雨の彼女」のプロモーション動画をアップしました🐢☔…

 皆さん、こんばんは🌜  先日までnoteで連載していた小説、「五月雨の彼女」のプロモーショ…

連載小説『五月雨の彼女』(最終話)

「そうだ、これだけあんたに渡していくわ。慰謝料の足しにして」  未知華が私の前に差し出…

連載小説『五月雨の彼女』(13)

「じゃあ、そろそろ行くわ。この後、新しいところで仕事なの。まだ話があるんなら、またあの弁…

連載小説『五月雨の彼女』(12)

 ガラス窓の向こうでは、変わらず雨が降り続いている。  排気ガスを含んだ空気を洗い流すよ…

連載小説『五月雨の彼女』(11)

「知らない! 母さんの話なんて持ち出すからよ。泣かせるのも、侮辱するのも、マウントするの…

連載小説『五月雨の彼女』(10)

「何だか楽しそうね。私の苦しむ顔が見られて嬉しい?」  私は、未知華の目を見て尋ねた。 …

連載小説『五月雨の彼女』(9)

「今の制服の子、もしかして、加賀原さんのところの瑠璃加ちゃん? ひとりで来たの?」 「学校から未知華ちゃんに会いに来たみたいなの」  「ここにいる時から仲良しだったものね。未知華ちゃんって、まだ瑠璃加ちゃんと同じ城葉女子に通えてるのかしら」 「そうみたいよ。山岸さんの奥さん、旦那さんに出ていかれちゃったでしょう。この部屋も抵当に入れられてたみたいだから心配だったけど、未知華ちゃんはそのまま学校に通えてるみたいで安心したわ」 「でも、城葉女子って学費の他にもとんでもない

連載小説『五月雨の彼女』(8)

 私を馬鹿にするようなことを言ったり、敵に回るようなことをするようなことは決してしなかっ…

連載小説『五月雨の彼女』(7)

 出会った頃の未知華は、こんな表情をする子だっただろうか。  私が未知華と出会ったのは…

連載小説『五月雨の彼女』(6)

「なんて顔してるのよ。もっと傷ついた顔してくれないと、話し甲斐がないわ。せっかく私を呼び…

連載小説『五月雨の彼女』(5)

 あのクリスマスイブ、倫史は私の家族と、私と過ごすことよりも、目の前にいる未知華と過ごす…

連載小説『五月雨の彼女』(4)

 私が倫史と結婚したのは、十年前。私が三十歳を迎えた年だった。  当時、私は法学系の大学…

連載小説『五月雨の彼女』(3)

 未知華は「また話すのか」という面倒な面持ちをこちらに向けたが、カップに残った冷めた紅茶…

連載小説『五月雨の彼女』(2)

 未知華の背中では、その真ん中あたりまである長い髪がふわりと巻かれ、明るい茶色の髪に陽光が反射すると、白く砕ける波頭を思わせた。彼女の海原を思わせる美しい後ろ姿に一瞬たじろいだが、何もせずに帰るわけにはいかないと腹の下に力を込める。 「お待たせしました。加賀原の妻です」  入り口側に背中を向けて座っていた未知華の向かいに立って声を掛けると、彼女は爪先に三日月の張り付いた綺麗なピンク色のフレンチネイルでスマートフォンをタップするのを止めて顔を上げた。 「え……?」  彼