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【映画感想】浅草キッド


かなしい。かなしかった。
画面の中で、彼らが笑っていても、
そして、彼らが笑わせていても、
それでも、そこはかとなく、かなしい。
この「かなしい」にどれをあてようか。
悲しい?
哀しい?
なんだか、どれも違う気がする。
どれか漢字をあてたとたん、何かが違う気がする。
だって、彼らはかっこいいから。
深見千三郎という人はかっこいいから。


ビートたけしという人は私にとって、
物心ついた時には
すでにビートたけしだった。
ツービートの時代すら知らない。
たけし軍団で殿、と呼ばれて
爆破させてるような人だった。
ましてや深海千三郎という人はもっと知らなかった。

大泉洋演じる、この深見千三郎という人が
すごく、いい。
情があって、面白くて、粋で、
芸というものを愛していて…。

芸に生きる人はどこか、かなしい。
それに魂を全部捧げて、
報われる人もいれば、
報われない人もいる。
そもそも報われるということはどういうことだろうか。
有名になること。
お金持ちになること。
人々に愛されること。
芸の道を極めること。

人々に師匠と言われ続けた深見千三郎は、
ある意味では報われている。
芸を愛し、芸に愛されていた。

時代の狭間にある人は、かなしい思いをする。
舞台の時代から、テレビになり、今はネットの時代に…。
その流れにうまく乗る人もいれば、
乗れない人も、乗らない人もいる。
どちらがいいも、どれがいいもなく、
それぞれに良さがある。
けれど、その狭間にいる時、
人はくるしく、かなしい思いをする。

それでも彼らは笑わせている。

笑われんじゃえねぇぞ。笑わせんだよ。

映画「浅草キッド」深見千三郎の台詞より

大泉洋がすごく、いい。

かなしいけど、あったかい。
あったかくて、愛さずにはいられない
深見千三郎という人そのものを
大泉洋に重ねて、さらに大泉洋が好きになってしまう。

ところで、「浅草キッド」という歌が好きだ。
本は読んだことないのだけれど、
数年前紅白歌合戦でビートたけしさんが歌っていたのを聴いて、
いい歌だなぁと思い、iTunesで購入。
菅田将暉さんと桐谷健太の方を。
なぜなら菅田将暉が好きだから。
映画「火花」は観てないけれど。
原作は読んだ。
その世界観にもぴったりなのだが、
この「浅草キッド」という歌がとても良い。

夢は捨てたと言わないで
他に道なき二人なのに

「浅草キッド」歌詞より

原作も読んでみたいと思った。
有名になる人がいて、有名にならない人もいて、
尊敬する人がいて、
愛される人がいて、
孤独を感じる人がいて、
理解してくれる人がいて、
華やかな世界に住む人がいて、
そこから離れる人がいて、
その背中に何かを感じる人々がいる。

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