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白と黒

最近、「人間関係リセット症候群」という言葉を聞いた。人間関係で何か嫌なことがあると、連絡先を全部消したくなったり、相手の全てが嫌になったりする現象のことらしい。

気持ちは理解できる

この現象の根本原因は、"完璧主義" からくるらしい。完璧主義であるがあまり、すべてをリセットしたくなってしまうみたいだ。
最近、そんな思考の人が増えてるみたい。
完璧主義は、言い換えれば白黒思考のことだ。
思考回路に、白か黒しか存在しないのだ。
グレーが存在しない。
だから、何か嫌なことがあれば、すべては〇〇のせい。〇〇なんか大嫌い。人間関係なんて最悪。
全部リセットしちゃえ。
そんな具合らしい。
これは人間関係だけに言える話だけではない。
何か失敗をしたら、自分なんて駄目だ、最悪な人間だ。そんなふうに捉える。これも白黒思考だ。
でも冷静に考えれば、何か失敗しただけで自分が駄目な人間な訳がない。
人は、失敗することもあるし、成功することもある。
失敗するからといってダメ人間ではないし、ちょっと成功したからといって格別に素晴らしいというわけではない。
そんな、グレーな考えができなくなってる人が多いみたいだ。

話は変わるが、もう10年以上前、パリに旅行した。

フランス最大の都市であり、EUを代表する大都市である。アメリカのシンクタンクが2020年に発表した世界都市ランキングでは、ロンドン、ニューヨークに次いで3位にランクインした。

エッフェル塔、ルーヴル美術館、凱旋門は行ったことのない人でもイメージできるほど知名度は絶大であり、芸術の街、ロマンの街、そんなイメージが連想されるだろう。

当時私が抱いていたイメージから、自由で、芸術的で、優雅に人々が暮らす街は一体どんな街なのかなぁ〜と、のほほんと思った。

しかし、その旅行で、未だに忘られない光景を目撃した。

夜、地下鉄を降りて、ホテルまで歩いていた時、

公衆電話の傍で、薄いマットレスを敷き、一枚のブランケットと新聞紙だけを置いて、寝そべっている親子がいた。5歳くらいの女の子と、その父親だ。

この2人はホームレスなのだ。
その時の私よりだいぶ年下の女の子だった。

なんか、パリのイメージと違うなぁ
と思った。

エッフェル塔があって、ルーヴル美術館があって、ゴッホの『パリのカフェテラス』みたいな黄色いカフェでみんなが優雅にくつろいでるのがパリじゃないの?
そんな一面があることは、なんだかちょっとショックだった。

また別の日。シャンゼリゼ通りを歩いた。
道沿いには日本でも見かけるような高級店が立ち並んでいた。

しばらく歩いていると、道は混んでいるはずなのに、一箇所ポカンと人が道を空けている場所がある。何なのかと思って近づくと、ムスリムの女性が、紙コップを持ち、頭を下げて、

please give me , please give me money !

と叫んでいた。

今考えれば当たり前だが、ムスリムの女性がパリにいることは、当時の私には結構驚きだった。

今考えれば本当に当たり前だとは思うのだが、お金を恵んでください、と叫ぶほど逼迫している人がパリの、シャンゼリゼ通りにいるという光景が、なんかアウェーに感じた。

その当時の自分の中に何故かあった、

欧州=優雅

というイメージが覆され、綺麗な街並みの中にも世の中には困っている人がたくさんいるのだなぁと思った。

また、これもだいぶ前、ドバイを訪れた。

アメリカやイギリス、フランスは行ったことがなくても大体想像できる。でも、ドバイがどんなところなのかあんまり想像つかない。そういう想像つかない場所に行くから、面白いことだらけだった。

夏に行ったのだが、50度くらいはあったような気がする。肌に突き刺さるような、鋭くてまとわりつくような、熱を感じた。

空港職員は黒い長い服を着て、目しか見えない。とにかく仕事のやる気がない。ものすごいスピードで印鑑を押している。
本当にお金をもらっているのかな

一通り観光地を周って気づいたことがある。

どこに行ってもアラブ人に出会えない。

アラブ人は、見れば一目瞭然だ。女性は目を隠して高級バックを持っている。男性はポロシャツを着ている。

でも、観光地で働いていた人は皆、インド系の顔立ちでどう見てもアラビア人では無い。

夜中、スーパーに食料を買いに行こうと思い、外に出た。スーパーへ向かう途中の路地に、インド系の男性が4.5人、タバコを吸ってたむろしていた。どうしてもその路地を通りたくなかったが、スーパーに行くためには仕方ない。

到着したスーパーのレジで働いている人も、インド系だった。

最終日、ついにアラブ人を見つけることができた。但し、ドバイモールの中でだけだ。

けれど、その同じモール内のお土産屋で私にポストカードを売ってくれた店員はインド系なのだ。

日本にいれば、どこでも日本人を見ることができる。コンビニで働いてるのも、スーパーで働いてるのも、カフェで働いてるのも、逆にデパートで買い物してるのも大体日本人だ。

でも、この国では違う。外で働いている人はみんな、海外からの出稼ぎ労働者だ。物価の高いドバイで稼いで、故郷へ送る。そして買い物をするのはみな、アラブ人なのだ。

さらによく見ると、バージュカリファ周辺は栄えているが、ちょっと外れると雰囲気がガラッと変わる。超高層ビルばかりだが、よく見るとビルの間隔がかなり空いていた。

ドバイはラグジュアリーで夢のある街だなぁと思うが、もちろんそれだけではない面もある。

白いイメージが白、黒いイメージが黒、というそんな単純な世の中ではない。

別に綺麗な街にだってそんな一面はあるし、お金持ちはいるし、貧困層だっているし、悩んでる人はいるし、超ハッピーに生きてる人はいるし、様々なのだ。

色んな人がいて色んな世界線があって毎日毎日色んなことがあるのだ。
だから、なんか嫌なことがあるからっていって全部否定したりする必要はなくて、そんな時、そんな人もあるなぁ、と思っていれば楽なのかもしれない!

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