【読書】破天荒ママの訓示
学校で、恋愛で、仕事で行き詰まった経験のある方にオススメの小説を
紹介します。
和田裕美『タカラモノ』(二葉文庫)
「ママ」は、浮気して時々男性について家を出ていってしまうような女性。
この物語は、娘のほのみの視点で、彼女の成長とともにママの生き様が
描かれています。
最初は小学生の頃から始まり、最終的に社会人になった頃のやりとりも
含まれているため、幅広い年齢層の方に共感していただける一冊だと
感じました。
今回は、そんなママの言葉の数々の中で、特に私がぐっと来た名言を
いくつかピックアップしてご紹介します。
「どうぞグレてください」
スナックで働き、夜家にいないママに対してほのみが
「こんな家なら、誰だってグレて不良になる!」と怒った時に
ママが言い放った一言です。
自分の人生なんだから自分のしたいようにやりなさい。
いくら娘が何かしようと、母親である自分は痛くも痒くもない。
困るのは自分自身なのだから。
そんな意味が込められていて、ほのみも自分の人生に責任をもって生活することの意義を見出します。
「処女は高く売れ」
自分の身体はかけがえないたった一つだけのものだから、
特別な時まで大切にしないといけないという優しい意味を含んだ言葉です。
ただ、この言葉だけを聞くと、やはり度肝を抜かれます(笑)。
「失敗をしていろいろ学ぶほうが、自分の人生にとっていい方法を
自分で見つけられる人になれる」
何度うまくいかなくてもまた同じタイプの男性を好きになって
一緒に出奔してしまったりするママ。
そんなふうに恋愛や結婚で失敗ばかりしてきたからこそ、
言葉に説得力が増すし、生きる糧になるのでしょう。
痛い目を見たとしても、それを力に変えるママの力強さが籠った言葉だと
感じました。
「相手のせいで苦しむなんて、相手の思う壺だし、アホらしい。
相手の壺から出なさい」
社会人となり、先輩社員の冷たい態度に嫌気が差しているほのみに対して、
ママは言います。
苦手な相手のせいで悩むのはすぐにやめて、
代わりに自分のことを強くしてくれて「ありがとう」と心の中で
唱えるようにしなさい。
これまた自分の人生を強く生き続けるママだからこそ言える、
芯の通った言葉だなと思いました。
意図的ではないにしろ自分を苦しめている相手に対して、
なかなか「ありがとう」なんて思えません。
ただ、自分は自分だと割り切り、すぐに気持ちを切り替える意識を
持つことで、徐々に「自分の心を強くしてくれてありがとう」と
相手に感謝できる日が訪れるのかもしれません。
生き様も発言も破天荒なのに、読むとなぜか心がふっと軽くなる。
そんな言葉が詰まった一冊です。
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