消えない月
読んだ
"月"ってタイトルにつく本を集めているから気になって
安定にちょっと暗い本を読む
前回の『神さまを待っている』の著者、畑野智美さんの本
本の帯に、「お願いです!こんな怖い小説、私だけのものにしないでください。」ってコメントがあって、レジ向かおうとしてやっぱりUターン、を三回くらいした。本当に
これ
以下ネタバレ
読んでいて鳥肌だったしやっぱりセキュリティは大切、そして自分の身は自分で守らないと…って実感してた(この話はどうしようもない場合だけど)
話が通じない、理解し合えない人ってどうしても存在するんだろうけど、怖すぎた
主人公の"さくら"はマッサージ師を目指して東京に来て、福々堂で働いている二十八歳の女の子(二十代前半に見える)
そこで客として出会う"松原さん"
DVでもサイコパスでも外面は良いし、後者は特に口が達者で魅力的に見られがちなの。だからさくらも最初は素敵な人だと思ってた
(今思ったけど家庭環境や育ち方、学生時代の松原さん本人の価値観の描写とかから、もう生まれつきのサイコパスだよね?さくらと出会ったからとかじゃなくて)
(『ケーキの切れない非行少年たち』を思い出した)
いろんな方のレビュー読んでたけど、アダルトチルドレンなのでは?って書いてる方も多かった
二人が出会った頃に戻って、
自分が気になってる人からこんなことされたら普通に嬉しいよなあ…って
愛と執着は違うけど、完全に彼の場合は執着
「この人!」と思うとうまくいかないこと多いし、恋は盲目現象で見えるはずのものも見えなくなるけど、
そんなはずない些細なことも彼女との運命だと思えて、それが尚更さくらへの執着へ繋がる
そもそも松原さんがひねくれすぎてて、優劣で人を見たり、自分が上ってアピールしないと気が済まなかったり、どんなに素敵に見えたとしてもこんな人絶対嫌だ
し、自分の理想を自分自身にも相手にも押し付けて、現実を見ていないの
友人の住吉に対しても、優劣をつけたがる
無理すぎ
明るく無邪気に見えた住吉も、実は感じ取ってて
ある程度のジェラシーは交際関係において健康的だと思うんだけど、個人的にいきすぎた束縛は良くない、したくないしされたくない
これが普通なんだとか、自分が悪いんだとか思うと、飲み込まれていく
(読んでるだけで息苦しい)
あとLINEについてふと共感したところ
話の中で、"月"が何回か出てくるんだけど、それを松原さんの存在や恐怖に例えている感じが良かった
ていうかそもそもわたしだったら、最初にご飯作ってあげた時に「これだけ?」とか言われたら「この人ナシ」ってなるなあ
あと口答えするな、っていう言い方
モラハラってやっぱり幼少期の母との関係が強いのかな?明らかに松原さんは、「父親みたいになって」って育て方で歪んだし、「母親みたいな彼女」の理想(結局母親の理想も崩れるんだけど)が強すぎる
こんな旦那嫌、こんな家に嫁ぐの嫌って思いながら読んでた
真面目で優しいさくらと、その隙に付け入っては自分を正当化させる松原
読みながらマンションの鍵を換えようとしないさくらに、逃げている間でもLINEをすぐ既読つけちゃうさくらに、モヤモヤしまくってた
あと多分頼りたい、助けて欲しいの気持ちからなんだろうけど、さくら自身の気持ちも安定しないの。あんまり好きになれなかった
まあさくらも寂しさとか焦りとかそういう気持ちもあったんだろうけど
でも恐ろしいよなあ、自分か相手かどちらかが死なないと終わらない
結局場所を変えても変えても突き止められて、最悪の結末を迎えるんだけど
池田先生と幸せになって欲しかったな、さくらが、っていうのもあるけど池田先生の努力と想いが報われて欲しかった
警察の対応が署によってだいぶ違うことも、ストーカー問題って区切りというかどこからどこまで、とかどう対応するかとか難しいことも、現実でもそうなんだろうな
ストーカーは被害者よりも警察よりも努力して、運を味方にするって
桶川ストーカー事件を思い出した
ストーカー問題を軽く考えている人たちに読んで欲しい本
怖かったけど引き込まれて、あと続きが気になって一気読みした
でも松原さんが気持ち悪すぎるせいで、後半の自分語りみたいな部分読み飛ばした。言葉は悪いけど、「知らねえよ」っていうような気持ち
イヤミスハマりそう
わたしのトラウマになりそうなこのシーン
月はどこにいても、誰といても、こっちを見てるしついてくるもんね
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