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連載小説『J-BRIDGE 』17.


「じゃあ私こっちだから。今日もまたよろしくね」
 定食屋の会計は、食い下がる明石を頑として撥ねのけたリリーが全額支払った。「お姉さんに任せなさい」とリリーが言ったときには、申し訳なさと情けなさでどれほど年齢のことを話そうかと思った明石だったが、結局黙っていた。
「ごちそうさまでした、……それと、ありがとうございました」
 店を出て五分ほど自転車を押してきた二人は、別々の方向へと散る交差点の信号で止まっている。リリー側の青信号が、ちかちかと点滅し始めた。
「やばっ、行くね、お疲れ様!」
「あの!」
「なに!?」
 漕ぎ出そうとしていたリリーの体がくっと止まる。
「リリーはいい人です。俺、頑張りますから!」
 点滅していた信号が赤に変わる。リリーはペダルにかけていた片足を外して、両の足で地面に降り立った。
「行動で示して。どれほどたくさんの言葉よりも、それが信じられるから」
 そう話すリリーの顔は照れているのか日の当たり加減か、ほのかに紅色に染まっているようにも見える。
「ほら青だよ! 早く帰りなさい!」
 明石側の信号を指差して、檄を飛ばすように指示を出すリリー。その姿を見た明石の顔が思わず綻んだのを見て、「帰る」と言い残して赤の信号を渡って去って行った。
「帰りますよ、言われなくても。……リリー、いつか俺が胸を張れるようになったら、ちゃんとばらすわ」


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