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平常時に負荷を 緊急時に癒しを【早く帰る教師術】

■学校には、2種類の仕事がある

仕事には「先回りしてどんどんすすめていける仕事」と「その場その瞬間に取り組むジャストな仕事」の2種類があります。

先回りしてできる仕事の代表格は、授業準備です。未来で何を教えるかは、すでに決まっていますよね。

ジャストな仕事の代表格は、生徒指導や保護者対応です。生徒がトラブルを起こすタイミングは読めません。トラブルが起きたことによる対応を来週に先延ばしすることもできません。いじめで困っている子を放っておくなんて、ありえませんよね。その日やその瞬間に取り組むべき重要な仕事です。

■ジャストな仕事の連続が教員を殺す

教員が苦しいのは、ジャストな仕事で自分の時間が埋めつくされたときです。緊急かつ重要な対応を「あと追い」し続けることが一番しんどいのです。

僕自身も経験があります。

前任校で中1を担当していたときの4月にLINEトラブルが起き、それを収めるために1日に8件家庭訪問に行ったことがあります。A君が生んだトラブルをA君の保護者に報告します。次にA君に便乗したBくんの家に行き、保護者に報告。そして、被害にあった、C君、Dさんの家にいって説明しにいく・・・という流れです。

対人の仕事ですから、当然とんとん拍子で話が進まないこともあります。

なんとか学校に戻ってきたものの、明日の授業の準備ができていないことに気付きます。授業プリントをやっつけで作って印刷し、学校を出るころには深夜0時を回っていました。

心身の疲労が回復しないまま翌朝を迎えることになります。起きても憂鬱で、責任感で学校に向かいます。

授業準備がしっかりできていないので、面白くない授業をしてしまう。「そんなことをしていると生徒の気持ちが離れていってしまう」という思いから自己肯定感も下がっていく。

そして、その日にまたトラブル発生で、その起きたトラブルの対応もしなければならない・・・。この生活が1週間続きました。

「しなければならない思いで動き続けること」と「心身の疲労を回復する時間がとれないこと」のダブルパンチで教員は倒れます。

当時、僕は2組の担任で、1組と3組の同僚の担任の先生もLINEトラブルの指導の対応を一緒にしていました。男3人が午前0時まで学校に残って仕事をしていましたね。今となっては笑い話ですが、1人だけなら、たぶん病んでましたね笑

■平常時に負荷を 緊急時に癒しを

この記事で伝えたいことを一言でいうと、「平常時は先回りして仕事をすすめて筋力アップしておこう。緊急時は思いっきり回復しよう。」ということです。

この記事では、教員が自分の心身の健康を持続させ、なおかつ継続的に早く帰れることができるノウハウを紹介しています。

■平常時に負荷をかける方法

先回りしてできる仕事は なんといっても授業の準備です。教師の最も重要な仕事の1つであり、時間をかければクオリティーが上がるジャンルの仕事です。加えて、量が膨大です。平常時にしっかり準備し、xdayに訪れる緊急時に備えておきましょう。

「授業の準備」は細かく分けると次の1~4の仕事からなります。

  1. プリントをwordでつくる 

  2. 実際に解いてみる

  3. ミスがないのを確認したら、生徒の人数分印刷する

  4. 授業で使う Power Point のスライドをつくる

僕は2週間先の授業まで準備しています。数学は週4回授業があるので、先8コマ分の授業ができるようにしています。そのため、印刷された大量の授業プリントがロッカーの中に入っていますね。

僕は、授業プリントを作ることを、朝起きて、学校にいくまでの時間に自宅でやっています。一番頭がクリアな状態ですから、仕事もはかどります。

wordで作成した授業プリントをIPadに転送し、IPad上でアップルペンシルを使って、生徒が解くように答えを書き込んでいきます。

プリントの構成がまずくないか、余白がせまくないか、誤字脱字がないかを確認していきます。これをせずに、PCの画面上だけで確認すると、なぜかプリントのミスに気付けないんですよね。

コーヒーを飲みながら好きなBGMをかけて、ええ感じ。

プリントの印刷は学校で行い、単元ごとにまとめて印刷するようにしています。数学の空間図形の単元のプリントが8枚あれば、その8枚を生徒の人数分、一気に印刷してしまうということです。

8枚 × 200人(生徒数)=1600枚  もの紙を一気に印刷してロッカーに保管しておきます。

プリントを1枚作って、その1枚を印刷し、別日にまた1枚作っては印刷し・・・というスタイルだと、時間のロスが生まれます。具体的なロスを挙げると、印刷機がある部屋まで歩いて往復する時間や、印刷機の電源を入れてから起動するまでの時間などです。

教員の方の中には、一気にプリントは作らず、授業をした生徒の反応や感触を見て、次の授業のプリントをつくりはじめ、印刷する人もいます。また単に仕事が追い付いていなくて、「とりあえず明日の授業ができたらいいや」という人もいます。

授業は生ものですから、生徒に合わせたり旬な話題を盛り込んだりする考えには賛同します。が、非効率な働き方と、緊急事態発生によってジャストな仕事が生まれたときに、結局授業準備に手が回らなくなるので、僕は一気に準備してしまう派です。

ただし、授業で使うパワーポイントに関しては、既に作っていたスライドをどんどん修正して、その日その日の旬な話題を盛り込んでいきます。

例えば、「円の接線」を教えるとき、ちょうどワールドカップの時期だったため、三苫選手のアシストの映像をパワポのスライドに盛り込みましたね。

これが接線に見えた僕は、職業病。
接っしているから、ボールは外に出ていないのだ。

僕の平常時の授業準備スタイルをまとめると

  • 2週間先の授業プリントを毎朝こつこつ作っていく。

  • ある単元のプリントが全部できたら、全てを一気に印刷する。

  • Power Point のスライドに旬な話題を盛り込み、授業の鮮度を保つ。

といった具合です。


平常時にできる仕事を もう1つあげるとすれば「所見」でしょう。

通知表の所見 や 道徳の所見を書く作業は、年度終わりの3月に着手する傾向があります。

なぜか。
40名分もの所見を書くのは大変な仕事で やりはじめるのが億劫だからです。加えて、タイムリミットが3月の後半の修了式の日で、時間的余裕があるため「今やらなくても、いいわ。」と思ってしまうのです。

担任業の右も左も分からない初任者が、先輩が3月に所見を書き始めているのを見て、育っている現状も問題です。締め切りが迫ってきたことで、平常時の仕事」だったものが「緊急の仕事」に変わっているのに気付けるかどうかです。

所見を書くのは、3月以外にもできます。というか3月にやらない方がいいと考えています。

3月は学期末の成績をつけたり、中1、中2なら校外学習、中3なら私立入試があったりする大事な時期だからです。ただでさえ緊急事態が起こるとパンクする恐れのある時期であるため、所見を書いている余白はありません。

所見書きは、生徒1人1人に異なったメッセージを届ける大事な仕事です。40人分書く上で、伝える文章を考えるための時間や労力が必要です。ミスも許されません。

そのため、所見は各学期ごとに10人ずつくらい書いて、確認もしっかり行い、負担を平常時に分散させておくというのが得策だと考えています。僕自身は3月には余白をつくりたいので、2学期までに全員分書き終えるようにしています。


教員の仕事には、まだまだ平常時にできるものがあります。

マストな仕事に取り組む前に「なんとなく、毎年この時期にこの仕事をしているけど、ほんとに、その時期にしかできない仕事なの?」と自問自答することが、早く帰る教師術の1歩目です。

締め切りが迫った緊急時に、一気に長時間仕事をするとミスが生まれます。脳が正常に機能するのは13時間までだからです。してしまったミス対応に余計時間がかかってしまうと、負のループに陥ってしまいます。

■緊急時に癒す方法

生徒指導や保護者対応などは、事象や程度にもよりますが、とにかく時間がかかり、そして心身疲れます。

対応が終わってからは、その日はそれ以外の仕事は一切せずに帰りましょう。

銭湯に行ってお湯に浸かったりサウナに入ったり、ときにはマッサージに行ったり、お酒を飲んだり、早く寝たりなど、回復することに全振りしましょう。

回復せずにボロボロの戦士のまま、翌日教壇に立ってもうまくいきません。授業がうまくいかないと、生徒の心は離れていき、余計に新たなトラブルが生まれる可能性が出てきます。

小学校がまさにこれ。おもんない授業をする先生のクラスは荒れます。

新たに生まれたトラブル対応に時間をかけざるを得ない状況に陥り、おもしろい授業の準備ができない という負のループに入ると、余計に状況や心身はしんどくなります。

負のループに陥らない唯一の方法は、平常時に負荷をかけてパワーアップしておくこと。「俺は今、緊急時に回復アクションがとれる余白時間を意図的につくっている」という思考と行動で平常時を過ごしましょう。

仕事が「あと追い」よりも「先回り」の状態になっている方が精神的にラクですね。


■もし負のループに陥ってしまったら・・・

負のループを断ち切る方法は

  1. 負のループに入っていることを自覚する

  2. 月~金曜まで笑顔で頑張る

  3. 土曜はゆっくり休んで回復する

  4. 日曜は、翌日の月から金の準備をしっかりする。


まずは自覚することだ。
「勤務時間が ほぼ毎日20:00を超えている。寝ても疲れがとれない・・・」となったら、負のループに入っていると思って間違いない。

お金をもらっている以上、プロとして月~金まで、子どもの前で笑顔で頑張る。

土曜日は、休もう。

「日曜に仕事したくない・・・」なんて呑気なこと言ってる場合じゃない。負のループから正のループに戻るにはエネルギーがいるのは当たり前。半日でもいいから準備しよう。
正のループに入ったら状況は好転するし、心身のエネルギーも安定する。
未来への希望をもって、俺はやるぜ。

日曜に結局、何もせずに心の中にモヤモヤ抱えたまま過ごし、日曜の晩に「明日から仕事だ。嫌だ。」と思いたくないんだよ。日曜日という平常時に癒しを求めるのは、ほどほどに。


ちなみに、真面目な人ほど、土曜も「仕事しないと追いつかない」と思いますが、意図的に休んだ方が良いです。ほんとに病気になってしまいます。一番大事なのは、仕事ではなく、自分の心身の健康と家族ですよ。休むことを「サボっている」と捉えるのではなく、「充電している」と考えましょう。

正のループに入ったら、土日に一切の仕事をする必要がなくなりますね。

■SDGsな働き方と新しいフェーズ

教員の過剰労働が社会問題になり、教員の成り手が減ってきています。

日本の小中学校がSDGsな持続可能な働き方ではないことが表に出てきたからです。しかし、「膨大な仕事量があるから忙しいのだ。」と思考停止にならず、自分の働き方を工夫することで、SDGsな働き方に近づけることができるはず。まあ8:00~17:00で終わる量じゃないけどね笑

余談ですが、今までは自分のコントロールできる範囲の仕事を工夫していましたが、学校の仕組み的にSDGsではないものもたくさんあるので、今後はそこに新しい提案をして、勤務する学校の仕組みを変えていこうとも思っています。早く帰る教師術2.0 として新しいフェーズに入ります。

これからも「平常時に負荷を 緊急時に癒しを」を合言葉に。


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