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連載小説 砂上の楼閣3


『計画3』

「清香、今日は遅れるなよ。」

『分かってる。19時だったよね?』

父親に頼まれ仕方なくではあるが、今夜は知人との会食がある。

最も、それは口実で、父の本音は私をその男と結婚させたいのだ。

仕事上で父を支える有能な男。それが父の評価だったが、私は正直、あまり好きではない。

それを察してか何かに託つけ、二人を会わせようとする。

今は適当に合わせているが、折を見て自分の気持ちは伝えなければならないと思っている……。


松永グループ。
札幌を中心に道内は勿論の事、東北から北関東までを網羅した物流の北海道最大手。

その会長を務める父は、各方面に影響力を持つ。後を継ぎ社長に就任した兄も、父を尊敬している。

しかし清香自身は証券会社に勤め、家業には全く興味がない。と言うより、関わりたくないのが本音だ。

それはやはり高校時代の、あの事が影響しているのであろう。

受験を控えた高校3年の冬、帰宅途中に連れ去られ、外界から隔離された空白の一週間。

あの事がなければ、今とは全てが違っていたかもしれない。

未だに明らかになっていない、拉致した奴等と、それから救ってくれた誰か。

清香が、後にも先にも行けずに漂うように生きているのは、あの冬から全てが止まっているからなのかもしれない。


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