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私が、本の力を信じ切れていなかったのかもしれないーー年の瀬に読書の意味を考えてみた

本が好きだと言っておきながら、私が、本の力を信じていなかったのかもしれない。
ここ最近、一人で考えていたことを、思いつくままに綴ってみたいと思います。一段と寒さが増したこともあり、少し寒いトーンになっていてもお許しください❄️⛄️(笑)

10月末からnoteにておすすめの児童書の紹介を始めました。
初めは純粋に、良い本がたくさんあるので、一人でも多くの方に知っていただきたいという思いだけで、深く考えずにスタートしました。

紹介したい本は山積みなのですが、紹介するならしっかり紹介したい、昔読んだ本も改めて読み返し、細部まで魅力を紹介したいという思いが強く、どうしても短編ものの紹介が多くなってしまっているのが現状です。


また、noteを始めてみて改めて実感したことですが、児童書に限らず、本をおすすめしている方は世の中にたくさんいるということを痛感しています。そして、すでに多くの方が紹介していて、その価値は皆がわかっているならば、自分がわざわざやる必要はないのではないか?という思いが頭をもたげてきました。
寒くなってきたので、物事が億劫になり、また少し傲慢になっていたのかもしれません。

自分一人の力なんてたかが知れている。記事を一本書いたところで何も変わらない。。。そこまで卑屈には捉えていませんでしたが、更新が止まってしまったのは事実です。

生きる喜び、生きる希望、生きる勇気、生きる知恵を届けたい

私が本の紹介を始めたいと思ったのは、私自身が本に救われ、本によって多くのものを得てきたからでした。

私が出版界に身を置く理由は、
本を通じて、あるいは、本の中にあるたった一つの言葉に出会うことによって、
一人でも多くの方に
生きる喜び
生きる希望
生きる勇気
生きる知恵
を届けたい
と心の底から願っているからです。

私の力は微力だとしても、本や物語、言葉が何かのきっかけになればと強い祈りを込めています。
一歩を踏み出す後押しをしたいなんておこがましいことは願いません。ただ、一歩を踏み出すにはとても大きなエネルギーが必要ですので、前進する一つのきっかけになれればと願っているのです。

本が持つ力について、また自分ができることについて考えていた時、手元あった『橋をかけるーー子供時代の読書の思い出』を読み返しました。


これは美智子さまが1998年に行われた国際児童図書評議会(IBBY)の第26回世界大会にてお話しされた基調講演を収録した本です。
この本は、私に読書の意義や子供時代における本の大切さを教えてくれる、とても大切な一冊です。

今回改めて読み返し、パワーをいただけたので、美智子さま素晴らしい講演の内容を、少し紹介させていただきたいと思います。

大人が、本の力をどれだけ信じられているか

美智子さまは子供たちに本を読んでもらうために、とても大切なことを語られています。
子供に強制しても何も身につかない。子供たちが自発的に行動することで、その子の芽がひらき、花が咲くのだということを教えられる一文です。

「子供はまず、「読みたい」という気持から読書を始めます。ロッテンマイアーさんの指導下で少しも字を覚えなかったハイジが、クララのおばあ様から頂いた一冊の本を読みたさに、そしてそこに、ペーターの盲目のおばあ様のために本を読んであげたい、というもう一つの動機が加わって、どんどん本が読めるようになったように。幼少時代に活字に親しむことが、何より大切だと思います」

『橋をかける』より

ご自身の戦時中の幼少期の読書体験を振り返られ、読書の意義についてはこのように語られています。

「国が戦っていたあの暗い日びのさ中に、これらの本は国境による区別なく、人々の生きる姿そのものを私にかいま見させ、自分とは異なる環境下にある人々に対する想像を引き起こしてくれました」

『橋をかける』より

「どのような生にも悲しみはあり、一人一人の子供の涙には、それなりの重さがあります。私が、自分の小さな悲しみの中で、本の中に喜びを見出せたことは恩恵でした。本の中で人生の悲しみを知ることは、自分の人生に幾ばくかの厚みを加え、他者への思いを深めますが、本の中で、過去現在の作家の創作の源となった喜びに触れることは、読むものに生きる喜びを与え、失意の時に生きようとする希望を取り戻させ、再び飛翔する翼をととのえさせます。

悲しみの多いこの世を子供が生き続けるためには、悲しみに耐える心が養われると共に、喜びを敏感に感じとる心、又、喜びに向かって伸びようとする心が養われることが大切だと思います」

『橋をかける』より

この部分を読み、美智子さまは心底、本の力、物語の力を信じ切り、本に思いを託されているのだということを感じ、言葉では表現できないほど感動しました。

子供が本に出逢う時、少なからずそこに大人が介在します。
その大人が、その本をどれほど信じているかによって、本の持つ力は無限大に広がっていくのだと思います。

読書とは根っこであり翼である

「今振り返って、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。

何よりも、それは私に楽しみを与えてくれました。そして、その後に来る、青年期の読書のための基礎を作ってくれました。

それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに、大きな助けとなってくれました」

『橋をかける』より

「子供達が、自分の中に、しっかりとした根を持つために
 子供達が、喜びと想像の強い翼を持つために
 子供達が、痛みを伴う愛を知るために
 そして、子供達が人生の複雑さに耐え、それぞれに与えられた人生を受け入れて生き、
 やがて一人一人、私共全てのふるさとであるこの地球で、平和の道具となっていくために」

『橋をかける』より

コロナ禍で流行った言葉を用いれば、読書というのは、「不要不急」のものなのかもしれません。勉強のための本は必要ですが、物語などはなくても生活ができるかもしれません。

しかし、太古の昔から物語が存在していることを思うと、人々は物語を通じて根を養い、翼を広げていたのだということを教えられます。

これは私自身によく言い聞かせていることですが、
「深く考えることも大事だけれど、それと同時に、前進し続けることも大事である」。

私は色々と考えているうちに行動に移せなくなってしまう、何かと言い訳をつけてしまうのですが、どんなことがあっても、人は前進しながら生きていくのだと思います。
ですから、私は微力ながらも、いま自分にできることをコツコツやり続けていきたいと思います。

※結論、noteの更新頻度を少し上げられるように頑張ります。(笑)

何はともあれ、美智子さまの『橋をかける』は、とても素晴らしい内容ですので、ぜひお読みいただければ幸いです。

私はこの本で、新美南吉さんの『でんでんむしのかなしみ』を知りました。そしてそれは、美智子さまのご体験とともに私の心に残り続けています。


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