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【最近は、こんな感じ】 仕事の全部が楽しい。

上海で生活する女の子たちの日常って?
ファッション、メイク、食べもの、よく行くお店。あと、普段考えていること。悩んでいること。そして目標。
そんなあれこれを、同じ目線で聞いてみた。
@mie_shanghai

29 水顔

<Profile>
水顔(シュイイェン)
生まれ年:1995年
出身:内モンゴル自治区赤峰市
職業:プロデューサー
小紅書 @水顔 制片
Ins @shuiyan_z

あの有名雑誌のカバー写真を、
1人で? フリーランスで!? 
水顔さんは、編集者やカメラマンたちに、
心の底から信頼されているのだろう。
仕事ができる人って、
多分こういう人。


――犬を連れてきてくれた!
水顔 ビションフリーゼとマルチーズのミックスです。名前はベーグル。まだ5か月です。『小紅書』で里親募集を見て、1か月のときに引き取りました。たまに吠えるけど人懐こいです。

――水顔さんの職業は「制片人」とのこと。日本語にすると「プロデューサー」ですが、具体的にどんな仕事をしてるんですか?
水顔 雑誌の掲載写真や広告写真のプロデュースです。中国版の『BAZZAR MEN』『GQ』『ELLE MEN』などを手掛けています。

水顔さんが手がけた写真の数々。

――えー、すごい。
水顔 撮影までの過程が楽しいですね。具体的な流れとしては、まず編集とカメラマンが表紙のイメージを決める。その後、私とアートディレクターが場所などを検討して編集にフィードバックし、決定したらロケ地のアポなどを私がとって、諸々準備をして撮影に入る。一枚の表紙写真のために毎回20人くらいのスタッフが関わっています。

現場にて(水顔さん提供写真)

――日本だと、アポをとるのは編集の仕事かな。
水顔 そうなんですね。あと、私は予算まわりのことも担当しているので、最初の予算内に全部収めなければならないし、撮影が終わったあとは収支を含めた総括レポートを提出したりする仕事もあります。

――日本の「プロデューサー」のイメージと違う。水顔さんみたいな人が現場にいたらすごく助かりそうですが、話を聞くだけで大変な仕事だと思います。
水顔 ロケ地との話合いが大変。いつも1人で話し合いに行きます。あとは、編集、カメラマン、アートディレクター、モデル、スタイリスト、広告のクライアントなどの間に入って、彼らそれぞれの意見を取りまとめないといけない。

“紙媒体はなくならない”

――しかも、それをフリーランスでやっていると。
水顔 仕事は月数件あって、撮影前はすごく忙しいです。でも、嫌なことは全然なくて毎回楽しいです。この前も、イメージにぴったりのロケ地を見つけてすごくいい写真が撮れた。場所は「玉佛寺」の境内です。「どういう撮影をするのか」ということをお寺側のスタッフに説明して、交渉して。結果、すべて無料で場所を貸してくれたんです。

上海を代表する寺院の一つ「玉佛寺」で撮影した作品。『ELLE MEN』に掲載。

――仕事をしていてストレスを感じることはありますか?
水顔 ないです(笑)。そういう過程が全部楽しいし、撮影の日もすごく楽しい。

――中国は、日本よりも紙媒体離れが進んでいると言われています。
水顔 でも、私は雑誌の文化が衰退しているとは思ってなくて。若い人に人気のモデルやタレントも雑誌に出るし、一定の地位は保っていると思います。書店も増えていますよね。カフェやブランドとコラボしたり。紙媒体自体は今後もなくならないと思います。私自身、映像やネットよりも紙のほうが好きなんです。

――この世界に入ったきっかけは何ですか?
水顔 大学時代にアメリカ留学して、広告について勉強しました。その後、インターンで雑誌の仕事をしたのがきっかけです。すごく楽しくて。で、気づいたらもう3年目です。

――いま、水顔さんのまわりにいるインターンの学生さんはどんな感じですか?
水顔 5歳くらい若いだけで考え方が違うなーと(笑)。本当にこの仕事をしたくて来ているのではない気がする。たとえば撮影日、スタイリストさんのアシスタントは現場にいちばん早く入って衣装のアイロンがけをしなくてはならないんです。なのにこの前、知らない人がアイロンがけしていて、インターンのアシスタントはソファでくつろいでいたんです。それを見たスタイリストさんが「この人、誰?」とアシスタントに聞いたら、アシスタントが「アイロンがけのために呼んだ阿姨(掃除など代行する人)ですけど」って……。

――日本だと、若い子を叱れないという人が増えています。
水顔 私たちのなかにはきちんと注意できる人もいます。でも、「00后整治職場(仕事をやりたがらない2000年代生まれ)」という言葉もあって、諦めている部分はありますね。

――職場にいい先輩や尊敬する人はいますか?
水顔 カメラマンの張家誠です。写真がとにかくいい。東瀛風(日本的)だと評されることが多いですが、本質は中国的というか。作品の風格がすごく多様なんです。同じくカメラマンの宋万傑も尊敬しています。彼はいっしょに仕事をすることが多いのですが、仲間としてもとてもいい関係です。

“この業界のトップになりたい”

――では、仕事以外のことについて。お休みの日は何をしていますか?
水顔 エレキギターをやっているので、もっと練習してうまくなったらバンドやりたいなと思っています。好きなアーティストは伍佰。

――伍佰、めずらしい……。
水顔 何がいいかはうまく言えないけど、すごくいいと思うんです。声も好き。

自宅にてギターを練習中(水顔さん提供写真)

――水顔さんは内モンゴル出身ですよね? 上海に来たきっかけは何ですか?
水顔 従姉が上海に住んでいたからです。以前は北京に住んでいたんですが、そのときによく上海に来ていて、散歩向きで文化的な雰囲気が気に入ったから。同じ街にずっと住んでいると、環境を変えたくなりますよね。それも理由の一つです。

――では、内モンゴルでお勧めの場所はありますか?
水顔 内モンゴル出身ですが、ほぼ北京育ちなのでどこにも行ったことがなくて。でも、赤峰の草原はきれいです。烏蘭布統っていう場所。でも、冬はマイナス20度くらいになるので行かないほうがいいです。

赤峰の草原地帯(水顔さん提供写真)

――冬、行ってみたいけど……。では、洋服とかは、どこで買うことが多いですか?
水顔 『淘宝』。あとは、日本や韓国に旅行に行ったときに買います。今日のは韓国で買った服。ニットは『淘宝』のユニクロ。キャップは古着店で買いました。日本にも何回か旅行に行っています。いちばん好きなのは京都の鴨川沿い。おいしいすき焼きのお店もあって。そういう、旅先のお店情報はほとんど『小紅書』からですね。

――では、今後やってみたいことや目標を教えてください。
水顔 仕事が大好きなのでずっと続けたいです。この業界の国内トップになりたい。あと、国際的にも活躍したい。しかも第一線で。頑張りたいです。
(取材日:2023年12月22日 撮影地:泰安路)


<彼女のお勧め>

『Solo Garden』(上海市徐匯区長楽路333号)
☆食前に出てくるパリパリ食感のパンがおいしい。ステーキもすごくおいしい。

『純K』(上海市黄浦区徐家匯路618号日月光中心広場3階)
☆カラオケルームなのだけど料理がおいしい。私のお気に入りは鹵肉飯(ルーローファン)と椒塩鴨下巴(鴨の下顎の塩胡椒揚げ)。

『mammamia』(上海市静安区巨鹿路758号1階B2)
☆ルッコラサラダがものすごくおいしい。


text
萩原晶子
フリーライター。上海にて2007年頃よりガイドブック、ファッション誌、機内誌、ウェブなどの記事を手がけている。
カルチャー誌『Ketchup.』(上海と東京で販売)など。
ins:@hagiwara_akiko_
微博:Akiko06

photo
阿部ちづる
2006年にフォトグラファーとして独立。ファッション誌、ビューティー誌、週刊誌、写真誌等のグラビア、ポートレート写真を撮影。アイドルグループやグラビアモデルからのアーティスト写真撮影で指名されることも多く、女の子の新鮮な表情を切り取る。
佐々木希『ささきき』(集英社)、武田玲奈『Rena』(集英社)ほか多数。
ins:@chizuru0821
https://lov-able.com/photographer/chizuru-abe


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