【最近は、こんな感じ】 指図はされたくないから。
上海で生活する女の子たちの日常って?
ファッション、メイク、食べもの、よく行くお店。あと、普段考えていること。悩んでいること。そして目標。
そんなあれこれを、同じ目線で聞いてみた。
@mie_shanghai
06 miko
共通の友達が、mikoさんのことを
「未来の子」と呼んでいた。
そんな感じ。
好きなものも、考え方も。
世界へ羽ばたいて行ってしまう前に、
ちょっとだけ話を聞かせてほしい。
――ニューヨークの大学に在学中なんですね。
miko はい。ファッションマネジメントについて勉強しています。いまはパンデミックのため帰国中。来年1月にアメリカに戻る予定です。スタイリストになりたいと思っているのですが、最近上海でちょっと仕事する機会があって、「つまらない」と思ってしまっているところ。スタイリストよりカメラマンの権限が強いし、ブランドが指定した服を着せる感じ。自分が着せたい服を着せられない。人に指図されながら仕事するのは嫌だな、と。作品自体もクリエイティブなものが少ない。なので、卒業したらヨーロッパに行こうと考えています。リスクを恐れず、クリエイティブでアートな作品を受け入れてくれるのはやっぱりフランスやロンドンだと思います。
――日本にも留学していたんですよね。
miko 高校留学していました。きっかけはアニメ。『ONE PIECE』『進撃の巨人』『銀魂』『メイドインアビス』とか、大好きで。母には大反対されましたが、自分が決めたことなので強気で押し切りました。いま、妹も日本に留学しています。
――その後、日本で進学しなかったのはなぜですか?
miko いいファッションブランドもたくさんあって、個性的な人はいるのですが、ファッションのテーマの主流が「好嫁風(モテ)」だったから。そういうの、苦手。あとは、男女差別の問題。日本では女性が仕事のリーダーになるのは難しいと思った。就職して、おじさんの言うことを聞くのは私は無理です。東アジアはそういう分野の課題が多いと思います。
“冷たいピンクに合うコーデ”
――今日のコーディネートについて教えてください。
miko トップスは『PRADA』、スカートは『Cavalli』、ブーツは『DIANA』、コートは『HOLIDAY』、バッグは『Guess』。コート以外全部ヴィンテージ。『閑魚』(フリマアプリ)はヴィンテージを買ったり、着なくなったものを売るのによく使っています。
――未来のスタイリストがいま注目しているブランドを教えてください。
miko 『Mugler』『Versace』『Fanci Club』『I.AM.GIA』『Vivienne Westwood』『Paloma Wool』『ROWEN ROSE』。あと、最近はベトナムのブランドにも注目しています。南国なので、肌見せ系のかわいい服が多いんですよ。中国のブランドは良いのもあるけどちょっとパクリが多いので、いまは飽きてきた感じ。『RUI』や『ShuShu/Tong』とかはまだ好きだけど。でも、まだ若いので、好きでも高くて買えないブランドがたくさんあります。
――使っているコスメを教えてください。
miko マスカラは『KATE』、アイシャドウとアイブロウは『Joocyee』、ファンデーションは『資生堂』、チークは『QLINIQUE』です。パッケージがかわいいと選んじゃいますね。『淘宝』(EC)で買います。私は冷たい色調が似合うと思うので、冷たいピンクに合うトーンのもので揃えてみました。
“フェミニズムを意識していく”
――この前mikoさんに教えてもらった『三個摩梭女子的故事』(※)、観ました。おもしろかった……。
miko 学校の課題で、サステナビリティについて調べたのが中国の少数民族に興味を持ったきっかけです。ミャオ族のシルバーアクセサリーや草木染の服など、彼女たちの伝統的な技術はすごくサステナブル。自然を尊重しながら生きている気がした。しかも、よく調べるとミャオ族だけでなんと108種類もの分枝があって、本当に複雑。そんななかで、『三個摩梭女子的故事』に出てくるモソ族について知ったんです。母系の社会を形成している、すごく先進的な民族。
※香港のドキュメンタリー作品(2001年)。内容はぜひリンク先を。
――普段意識もしていなかった、新しい考えを知った気がしました。
miko 出てくる女性、みんなきれい。フェミニズムについては、年齢を重ねていくなかで、女性に対するさまざまな社会的圧迫があることを意識するようになり、興味を持つようになりました。友達とのコミュニケーションや、メディアからの情報で徐々に覚醒した感じですね。フェミニズムを意識している人は自立していて優秀な人が多いと思います。私も、結婚はしないと思うし子供も要らない。指図をされたくないから。なんか、上海にいるまわりの男子を見ているとほんとに責任感がない人が多い。トラブルは解決するものなのに、回避しようとする人が多い。あと、全然普通なのに、なぜかみんな謎の自信がある。その自信はどこからくるのか、と。
――最近日本のニュースで、「中国で上野千鶴子の本が売れている」というトピックを見ました。
miko 社会学者で、フェミニズムや老後ケアに関する本もたくさん出していますよね。東大でのスピーチ、すごく感動しました。大勢の人の前で、いまの社会での男女差別による残酷な現状を言えるのがすごい。「いまのままでは、誰も報われない社会になる」と彼女は言っていました。教師はこうあるべきだと思いました。
――ほかにすごいなと思う有名人はいますか?
miko 天海祐希。ある番組で、結婚したくない人たちに対して「自分は絶対に結婚しないから、安心してありのままの自分で生きていこう」というような話をしていて、かっこいいなと思いました。あとはマツコ・デラックス。自分の発言に責任を持っているところと、常に女性を尊重するようにと番組で言っているころがとても好き。東アジアはLGBTQのコミュニティにアンフレンドリーですが、彼女はポジティブなイメージのアイコンになっていると思う。ベラ・ハディッドは、裕福なのにすごく頑張り屋。ファッションで社会問題について発信している。あとはデュア・リパ。スタイルが好き。スタイリストがいいんだろうな。勉強したくなります。
――将来、どんなことをしてみたいですか?
miko アイコンをつくり上げること。昔はいろいろなファッションアイコンがいましたが、いまは少ないと感じます。情報が多過ぎて選べないからかもしれません。あとは、昔のほうが反逆精神があったと思う。それと、いまは表現力は多様だけど、独特さには欠けている。トレンドをフォローするばかりで。でも、私もそうなのかもしれないな、と思うことはあります。
(取材日:2022年11月5日)
<彼女のお勧め>
『竿屋』(上海市長寧区仙霞路158号虹橋商厦4階)
☆イチジクチーズハムとか、食べたことがない居酒屋料理がある。家でも再現してつくったり。
『南風』(上海市長寧区虹橋路1452号盛京銀行地下1階)
☆本場の沖縄料理が食べられる。ジーマーミ豆腐が好き。
『発福韓家』(上海市静安区大沽路411号)
☆韓国料理店。スンドゥブチゲがおいしい。豆腐が好きなので。
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萩原晶子
フリーライター。上海にて2007年頃よりガイドブック、ファッション誌、機内誌、ウェブなどの記事を手がけている。
カルチャー誌『Ketchup.』(上海と東京で販売)など。
ins:@hagiwara_akiko_
photo
阿部ちづる
2006年にフォトグラファーとして独立。ファッション誌、ビューティー誌、週刊誌、写真誌等のグラビア、ポートレート写真を撮影。アイドルグループやグラビアモデルからのアーティスト写真撮影で指名されることも多く、女の子の新鮮な表情を切り取る。
佐々木希『ささきき』(集英社)、武田玲奈『Rena』(集英社)ほか多数。
ins:@chizuru0821
https://lov-able.com/photographer/chizuru-abe
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