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エッセイ・コラム

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感じた事をいろいろ書いていきますので、読んでみてください。
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2018年7月の記事一覧

《ありんこ》このnoteには、ありんことタイトルをつけよう

《ありんこ》このnoteには、ありんことタイトルをつけよう

背の高い木にさえぎられ、日陰ができた縁側でトウモロコシを食べた。

まだ小さな口でかぶりつく弟。ぽろりと粒が足元に落ちる。

なんでわたしは弟とふたりでここに来ているんだろう。

たいしてなじみのないこの場所に放り込まれた夏。

なんでふたりだけでここに来ているんだろう。

セミの声がやけににぎやかだ。

汗とトウモロコシでべたべたする弟の口を、ハンカチでぬぐった。

弟はニッと笑う。

「そうだ

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平成元年に生まれて

平成元年に生まれて

 末娘が生まれたのは平成になった年の梅雨の時期。

 三人目ともなればわたしにも余裕があった。上ふたりの子供を抱えその当日まで、自転車に乗って買い物にも出ていた。いよいよお産が始まる前兆が来たその時、家中をきれいに掃除してから義母にふたりを預け、荷物を持って病院に出かけた。

 子供を出産するということは、いつの時代であってもおおごとだ。医療の発達、痛みを和らげる技術云々だけではなく、それまで母体

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一瞬の時空旅行

一瞬の時空旅行

昧爽という言葉を最近になって知った。
明け方を意味するこの言葉に、ひとつの記憶が重なった。

ハワイを目指し日本を発ったのは夜。機体が夜明け前の空を飛び続けていた時に感じた事だ。

その飛行機は、明け方に日付け変更線を越える。
明日に向かって飛んでいたはずが、一瞬にして時間が戻り、すでに経験した日の明け方を、もう一度迎えることになる。なんとも不思議な話だ。

昧《不確か》なるものと爽《はっ

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詩集 《青い風花》矢口蓮人さん

詩集 《青い風花》矢口蓮人さん

そもそもわたしは『眺め読むような詩』を書いていたいと思っている。

 矢口さんが出されて文庫本 詩集『青い風花』が届いた。

 noteにおいても矢口さんの書かれる詩に惹かれる人は多いと思う。わたしもそのひとりだ。今回の文庫本の発売を楽しみにしていたので、届くとすぐに封を開け表紙を味わった。
 とても優しいイラスト。無彩色の中にところどころブルーが入る表紙イラストは、感情を静めてくれる。

 中に

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