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2017年11月の記事一覧
コラボ作品集《雪》10 最終話
『晴れ傘』
微かに聞こえる鈴の音。水気を含んだ大粒の牡丹雪が揺らしている。
「明日は晴れたら傘差してけ」
伯父がボソリと言った。
降った後、晴れると屋根から雪崩れる雪。埋もれた時、息を繋ぐ僅かな隙間を確保するためだ、と言う。
「じゃ、日傘でも差してこ」
「ばっか」
強面の伯父の顔が冗談に綻んだ。
俳句 kusabue
140字小説 悠凜
コラボ作品集 《雪》7
『雪ものがたり』
誰?わたしを呼ぶ人は。
今年もたくさんの物語を見つめるわ。
涙もぬくもりも、わたしが寄り添えば一枚の絵を見るようね。
わたしは大丈夫。儚い命を繰り返し生きるわ。どんな色にも染まるけれど、決して誰のものにもならないの。
そんなことを思いながら、わたしは呼ぶ人に応える。
「今、舞い落ちるわね」
☆俳句 kus
コラボ作品集 《雪》3
『声援』
一段と吹雪いてきた。
目の前を通り過ぎる今、小さな掌で固めた雪の玉を持ち、鼻水を垂らしながら走り回っていたあの子の姿が蘇る。
どれ程の練習に耐えて夢を追いかけて来たことか……
タスキを繋ぐまであと300メートル。その背中を見つめながら、祈るような言葉が漏れてくる。
「まだ、泣くな」と……
☆俳句 kusabue
☆1
コラボ作品集 《雪》2
『明くる』
運が悪い人間とは、僕の事に違いない。
死にたくなる程の失態を演じた日。身体を縮めて歩く僕の目に入ったのは、今どき珍しい街頭テレビ。画面の中も灰色の雪景色。
「そうか…スキー競技の大会か」
自分には関係ない。通り過ぎようとした時、目を射る銀の光。思わず立ち止まり目を見張った。
雪が舞い散る、一面の銀世界。選手達の板が光を引いて煌めく。まるで白銀に輝く朝陽のように。
(…夜