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組織を「なめらか」にして、プロダクト開発のスピードを上げるデザイナーのチカラ

はじめまして!GoodpatchのUXデザイナーのなかねみかと言います。

私は前職でスタートアップを経験していましたが、デザイナーとしてしっかり事業に貢献できる動きができているか、自信が無くなることが多くありました。

例えば、大きな機能追加などがない中、要件整理や小さい機能の追加など、タスクを消化する役割以外に何ができるか悩ましい日々が続いていました。

しかし、そこで気づいたのは、サービスやプロダクトの開発チーム、つまり組織に対してデザイナーが寄与できるポイントが少なくないということです。


デザイナーが組織に貢献する場面は、実は少なくない

例えばプロダクト開発のグロース期。0→1の立ち上げ時から比較すると、大きく人員も拡大する時期でもあります。しかし、組織が大きくなればコミュニケーションも取りづらくなり、足並みがそろわず、成長や開発のスピードが落ちてしまう……そんな経験、身に覚えがありませんか?

逆に言えば、組織の足並みがそろうことが成功の要とも言えるでしょう。組織をなめらかにする役割は、POや事業責任者の仕事では?と思う人もいるかもしれませんが、デザイナーにも適性があります。

デザイナーは、未来を解像度高く可視化できるのが大きな特長です。その特長を生かして、チーム全員の認識を揃えることができるでしょう。

「大きな施設を作りたい!」「ホテルがついてる」「楽しい施設がたくさんある」と要件を言葉で理解するより、実際の絵を描き、「こういう施設になります」と説明する方が全員の認識が合いやすいですし、建設的な議論も進みやすくなるのです。

デザイナーが組織課題を「なめらかに」解決する場面を考える

このように、皆で議論をする場を用意したり、目線を揃えたりといった役割にデザイナーが向くことが分かります。

では、具体的にどのような場面で活躍し、どのようなチームの課題を解決するのか、その事例をいくつかご紹介しましょう。

部署同士のつながりをなめらかにし、相乗効果で実力を発揮できる場所を作る

部署同士の軋轢がある、もしくは仲は良いのに何となく物事がスムーズに進まないことがあるかもしれません。

これは人のつながりの問題以前のことであり、同じ絵を見せても人の数だけ解釈が発生するためです。仲が良いと、この解釈を個人間で解消することができるため、ズレの発生が少なくなりやすいだけで、繋がりの固まり同士での解釈の違いは残ったままのことが多いでしょう(「誰々がこう言ってた」というのが、仲のいい人同士で展開されるなど)。

デザイナーが間に入ると、チームの状況を観察し、問題点を洗い出します。一人ずつの考えを明らかにして解釈のズレを統一し、全員で議論できる場を用意し、収束させます。これにより、共通した気持ちを明らかにし、メンバーの考えを全員で理解し、その上で自分たちのやりたいことを健全に議論し、前進させることができます。

一方、人と人の間のズレをうまくする方法として、「交渉」という手もあります。交渉とはそれぞれの立場を理解し、それぞれのステークホルダーのメリット・デメリットを考慮しながら合意できるストーリーを導き出すことだと思います。

とはいえ、同じプロダクトを作る、例えば開発チームなどとは、それぞれのチームのメリット・デメリットを優先するより、「プロダクトの成功」という共通の目的を目指して進むものです。

お互いの腹を探り合いながら収める手法をとるより、考えていることを開放して全員で理解し、全員でより良い方法を導き出す方が、いいプロダクトが作れる。そう考えれば、デザイナーの作る議論の場の方が適しているでしょう。

ユーザーの声を心から聞いて寄り添える、やわらかな気持ちを作り出す

今どき、ユーザーの声を一切聞かない開発チームもかなり少なくなりました。しかし実際は「ユーザーの声は大体知ってるけど、他の対応で忙しくて……またこんど!」と、何となくユーザーの声を聞く優先度が上がりきらない方が多く、大喜びで情報収集している方はまれな印象があります。

よくある手法として、カスタマーセンターのVOCから課題の部分を抜き出し、端から検討する方法があります。これは重要度の高い課題を素早く拾い上げられることで有効である反面、課題しか見えないというデメリットも。ネガティブな文句ばかり聞き続けていると、段々と開発チームの心がすさんでしまうのも、地味ですが重要な問題だと思います。

課題を解像度高く理解するには、それに至った背景が重要です。ユーザーも「いいところを引き出すために、もう少しこうなったらいいのに」という応援を含んでいるケースも多いです。一方で、声の大きいクレームなどは早く対応しないといけない気がしますが、紐解くと、単なるユーザーのわがままな都合が理由かもしれません。

デザイナーは、ユーザーの行動とそのときの気持ちを照らし合わせて可視化することができます。さらに、ユーザーが価値と感じているところとその阻害要因をまとめ、対応が必要な箇所を適切に特定します。また、直接的に課題を修正するだけでなく、全体を見てユーザーの目的を達成するためにどうしたらいいのか提案できます。

ユーザーの声を聞けるのは本来とても嬉しいことであり、これだけ明確に自分たちの仕事が社会から評価されるシーンもないはず。

日々のモチベーションになり得るこの声を受け止めにくいのは、やはり「怒られるんじゃないか」と心が固くなっているのが原因ではないかと思います。ユーザーはどこがいいと思っているか、そのために何に困っているのかをデザイナーが紐解き、分かりやすく可視化し伝えることでユーザーを身近に感じられることで勢いよく、より良いプロダクトを作る気持ちを作り出せるのではないかと思います。

チームメンバーの判断軸を作り、開発がなめらかに進むようになる

ガンガン開発のチケットを消化していきたいのに、何となく躓くことが多い。こっちのチケットは要件を検討中で、こっちのチケットは現在POに判断を仰いでいる最中。またその進捗も何となく良くない。モノができ始めてきていても、「このデザインでいいんだっけ」「こんな仕様でよかったんだっけ?」と悩むことがあると思います。

それでは、逆に理想はどんな状態でしょうか。一人一人がガンガン自己判断しながら迷わず開発をスタートでき、出来上がりもユーザーの喜ぶ顔が想像できるぐらい自信がある!そして、そんな状態をチーム全員が保てていることが理想では無いでしょうか。夢のようです。

これらの状態を実現するには、自己判断ができる判断軸を持つことができていること、自分たちが作りたいプロダクトを明確に理解していることが必要とわかります。

デザイナーは未来を可視化し、全員の理解の解像度を上げるのが得意です。どんな価値を作り上げたいか、それはユーザーにどのように使ってもらえるものかを明確に言語化できます。

また、「分かりやすい操作性」など、解釈に齟齬が発生しそうなワードも、このプロダクトにおいての「分かりやすい」とは何かを明らかにします。これらを言語化・明確化することで、正しい道に進めているか、その都度自己判断しながら開発に取り組むことができるでしょう。

プロダクトの価値を発見・検証し、成長のスピードをなめらかに加速させる

いいものを作るのは当たり前だけど、まずは売上を立てないといけないのが、プロダクト開発の現場です。これにより「もっとコストをかけたいが予算の都合上難しい……」という悩みを抱えているチームは多くあると思います。

しかし、夢を描くのがデザイナーで、現実を乗り切るのがビジネスと割り切ってしまうのは非常にもったいないと思います。

大きく事業を伸ばす際に欠かせないのは非連続的な成長ですが、その前に連続成長なくして非連続成長はありません。連続成長の要は、何が成長に大きく貢献しているのかを明確に理解し、改善しながら実施し続けられることです。

事業成長ができている理由として、「自社の強みはこれ!」そして「購入してくれる人はこんな人!」と即答できる人は多いですが、そのユーザーが数ある競合の中で、なぜその製品を選ぶのか、気持ちまで精度高く理解している人は少ないように思います。

デザイナーはプロダクトの価値を作り出すのが得意ですが、同時にどこに価値があるのか発見するのも得意です。何がどんな背景でどんな人に価値があるのかを発見することで、マーケティングや開発自体にも良い影響を与えることができます。

また、デザイナーは価値仮説検証も得意ですが、ここまで価値が言語化されていればどの変数を変えて仮説検証をすればいいのか、すぐに組み立てることができます。しっかり仮説検証をした確実な成長のノウハウは、積み上げ式のため成長を確固たるものにでき、手応えを感じながら成長することができるでしょう。

プロダクトの成功のために、デザイナーは組織の「潤滑油」になる

ユーザーと企業、チームとチーム、経営と開発──デザイナーは両者の間に潤滑油のように入り込み、滑らかに組織を勢いづけることができます。

今まで培ってきたチームや文化。それぞれが持つ役割。社内オペレーション。変えるのは簡単なことではありません。また、「こういう価値を言い続けてるけど変えられないんだよ」と嘆くデザイナーやPOもいることでしょう。

自社の宣伝のようですが、こういうときにうまく活躍できるのが外部のデザイナー会社だと思います。さまざまな現場で培ったスキル・ノウハウはありますが、一番強いのは他社であるということです。第三者が介入し、フラットにする提案は多くの既成概念を取り払いやすくなります。

特に私たちGoodpatchはデザイナーなので、今までご紹介した具体例を、アドバイスするだけでなく、一緒に最後までやりきり成功体験を作り出します。デザインに対する門戸を広げる第一歩を作りだすのに有効に使ってみるのもおすすめです。

なぜ、デザイナーがそんな大変な役割を担うのか、と疑問に思うかもしれません。それがエンドユーザーにとって素晴らしいプロダクトを作る一番の近道だからです。プロダクト開発は最後まで作りきり、市場に出さなければ机上の空論になってしまいます。

私たちデザイナーは社会をより良くするサービスやプロダクトを作り出し、ユーザーにとって少しでもいい毎日を送ってもらうことを目指しているので、作り切ること・実現することが最も大事なのです。

だからこそ、組織全員が全力を出せる土壌があり、内容が拙くてもより多くの行動や施策ができて、きちんと学習していける状態を構築するのも、デザイナーが輝く価値ではないかなと思います。


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