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国際情勢:カナダについて

 この記事は、カナダの考察だ。(11,740文字)
 若い友人がカナダに行く事になり、依頼されて書いた。
 ちょうど今頃、飛行機の中で、この記事を読んでいる。
 目次は以下だ。

 ・概論
 ・ケベック州
 ・オンタリオ州
 ・トロント
 ・Vancouver
 ・カナダの政治と軍事
 ・Justin Trudeau
 ・中共とカナダの問題
 ・カナダのLGBTQ

・概論  
 カナダは、多言語移民社会である。同じ北米大陸にあるアメリカ社会とはやや異なる。実はアメリカ社会もヒスパニック系が多く、スペイン語もかなりあるが、広く分散しており、英語が全く通じない地域は、殆どないと思われる。それに対してカナダは、言語的地域性がある。  

 カナダ社会は大別して、三つに分ける事ができる。英語圏のオンタリオ州、フランス語圏のケベック州、そして中西部の英語圏の地域だ。人口密集地はオンタリオ州1,400万と、ケベック州800万だ。この二州だけで2,200万なので、全人口4,000万の約半分だ。  

 残りの英語圏の地域は、Vancouverがある西海岸のブリティッシュコロンビア州が400万、隣のアルバータ州が400万だ。中部のサスカチェワン州とマニトバ州は、人口100万を超えている。大まかに見て、中部から西海岸までの四州で、人口1,000万だ。

 フランス語圏のケベック州周辺の四つの州は、それぞれ人口100万に満たない。 北極圏の三つの準州は、それぞれ数万しか人口がいない。 カナダ連邦は、10の州と3つの準州で、構成されている。


ケベック


・ケベック州
 カナダ全体では、英語とフランス語を公用語とするのに、ケベック州だけ、フランス語のみを公用語とする。当然、フランス語話者が80%を占める。英語話者は10%だ。保守的な社会で、古い。カナダ社会の柱の一つになっている。カナダの起源と言ってもいい。

 ケベックは、18世紀のフランス語を保存する同質的な社会だ。ここだけカナダではないようだ。過去のフランス社会がそのまま残っている。古い植民地のフランスだ。

 起源は1534年のヌーヴェル・フランスにまで遡る。1608年に州都ヴィル・ド・ケベックが建設される。1763年のパリ条約で、イギリス領となった。だがイギリスからの入植者は増えず、1791年に、ヌーヴェル・フランスは、現在のオンタリオ州とケベック州に別れた。

 1867年にカナダ自治領が成立し、現在のケベック州の原型ができた。第二次世界大戦までに、何度かケベック州の領域が広がった。そして1977年にフランス語憲章ができて、州の公用語をフランス語のみとしたため、(現在では緩和されている)多くの英語話者が立ち去った。

 ケベック州はカナダの一部で、カナダ社会の柱の一本だが、全体と溶け合わない異質な社会だ。カナダは、多文化社会を許容しているので、その一つだと考えられている。独立運動もあるが、現在では下火である。州単独でやっていける程の経済力がないからだろう。

 宗教的には、カトリックが支配的で、言語的な比率(80%)と等しい。プロテスタントが支配的な北米大陸で、カトリックで纏まった社会はケベックだけだろう。そういう意味でも、特徴がある。ここは18世紀のフランス社会を、色濃く残している。

 言語と宗教は、社会学的に、相関関係があるが、まさにケベックはその例だろう。


オンタリオ州

・オンタリオ州
 カナダの政治と経済の中心だ。オンタリオ州最大の都市はトロントだが、カナダ首都オタワもある。これはニューヨークとワシントンD.Cの関係と似ている。カナダ・アメリカの経済の中心は、トロントとニューヨークで、政治の中心は、オタワとワシントンD.Cである。

 カナダ:アメリカ トロント:オタワ=ニューヨーク:ワシントンD.C

 ただカナダの場合、首都オタワは独立行政都市ではなく、オンタリオ州の一都市に過ぎない。ケベック州とオンタリオ州の境目に位置する。カナダの架け橋となっている。

 オンタリオ州には、アメリカの三大ビックモーターのうち、フォードとゼネラルモーターズが工場を作り、自動車産業が盛んだった。今はどうなっているのか分からない。経済の浮き沈みで、アメリカ同様、今はrust belt(銹錆地帯)になっているかもしれない。


トロント

・トロント
 オンタリオ湖岸の北西に位置し、Core area(中心街)で250万人以上、Greater Golden Horseshoe(都市化された周辺地域)で、900万人以上の人口がいる。

 東京の首都圏より若干小さいが、それでも金融センターがある国際都市である。湖に面しているとは言え、海沿いのニューヨークに似ている。経済都市だ。

 1834年に、ヨークからトロントに名称を変えて、市になった。人口は9,000人だった。だが1846年から1849年にかけて、アイルランドでジャガイモ飢饉が起きると、アイルランド系の人たちがどっと流入して、カトリック系アイルランド人がトロント社会の主流を為した。

 この集団がトロントの中核となるが、20世紀に入ると、最初はイタリア人、イギリス人、フランス人が来たが、戦後は東欧系・ロシア系・華僑も入り、西欧人の比率を下げた。今では華僑がトロントの人口の一割を占める。職場ではイタリア語広東語が多いと聞く。

 言語的には、英語→フランス語→イタリア語→広東語の順で優勢だと思われる。ただ東南アジアから来る人も多く、今では華僑よりも多い。言語地図は変わっているかも知れない。

 宗教的には、カトリックが最大勢力で30%、プロテスタントが20%で、50%がキリスト教徒だ。無宗教は20%もいる。残りの30%はその他の宗教である。

 最近、アメリカやヨーロッパで、自身の宗教欄に、ジェダイの騎士と書く者が増えており、全体の1%を超える地域もあるらしい。Star WarsのJedi Knightは、疑似宗教だと思うが、1%を超えた地域では行政の担当者が置かれる。トロントにも当然、いると思われる。

 気候についてだが、7月の最高温度が40度で、1月の最低温度が-32度で、72度の寒暖差がある。なお東京の最高温度が40度で、最低気温が-1度くらいなので、寒暖差は41度である。結論から言うと、トロントは人の住む場所ではない。生命の危険性がある。

 カナダは、特にトロントは感染症が流行り易い傾向がある。これは2003年のSARSコロナウイルスの時からそうだ。SARSは、今のコロナウイルスと80%程度の同じ遺伝子を持つ。これらのウイルスは姉妹関係にある。SARSが流行ったのだから、新型コロナも流行る。

 だが流行の原因は、別にあるだろう。中国古典によれば、感染症には目があると言われ、徳を積んだ善人は感染せず、逆にそうでない者は感染すると言われる。中国古典は原則、嘘を言っていない。多くの場合、経験則に基づいて、そう言っている。だからトロントは問題がある。


Vancouver

・Vancouver
 言語人口と宗教人口が一致しない、複雑な国際都市である。(ある意味では一致している)

 そういう意味では、同じカナダの中でも、ケベックとは対照的である。同質性が薄く、異質な文化がかなり混ざり合った社会が形成されている。2020年の国安法以降、香港人も多く、Hongcouverというスラングまである。
 
 Vancouverは、北米大陸西海岸で有数な貿易港でもあり、アメリカ合衆国のシアトルより港が大きい。コンテナ取扱量では、ロサンゼルス、ロングビーチ、ニューヨークに次ぐ第四位の港である。だが経済規模、人口、その他では、隣のシアトルに大きく負けている。
 
 言語人口だが、Vancouverの約95%の人が英語を知っている。ただ英語を母語としているだと、約50%にまで下がる。二位の言語は広東語で約15%、三位の北京語が約10%、四位のフランス語が約10%と続く。後はタガログ語、スペイン語、パンジャーブ語の順だ。
 
 宗教人口だが、無宗教が55%と最大多数となっている。これは北米大陸でもかなり異質な方で、例えば、ニューヨークの無宗教は22%である。ニューヨークのカトリックは33%、プロテスタントが23%で、第三位に無宗教が来る。Vancouverは、かなりおかしな都市だ。
 
 調査の仕方に問題がある可能性もあるが、Vancouverの宗教人口は、無宗教が55%、キリスト教が30%、仏教が4%、イスラム教が3%だ。他、ユダヤ教、シーク教、ヒンドゥー教などだ。先住民の宗教と、ジェダイの騎士が1%ほどいる。トロントとも比率が異なる。
 
 カナダという国は、本当に統一性がない。言語的にも英語圏とフランス圏で割れているし、宗教的にはキリスト教が優勢だが、圧倒的という程でもなく、都市部では無宗教が多い。
 
 カナダは文化の多様性を誇っているが、これは古典ギリシャ語の感覚で言わせてもらえば、コスモスではない。カオスだ。現代人の多くは、多様性という言葉をコスモスのように使っているが、殆どの場合、秩序がない。だから紀元前のアテナイ人であれば、カオスと言うだろう。
 
 生命の多様性という言葉がある。生命は神仏が造ったものだから、秩序がある。シェリングに従えば、自然とは目に見える精神であり、精神とは目に見えない自然である。生命も自然に含まれるので、生命とは目に見える精神である。つまり神仏のこの世の顕れとしての存在だ。
 
 この意味では、生命の多様性は、神の庭であり、秩序があり、コスモスと言える。
 
 だがカナダの文化の多様性は、コスモスから程遠い。まさにカオスだ。この連邦国家は、将来分裂したり、消滅したりする可能性がある。連邦制で纏まっているが、多様性というカオスを許容するために、不都合を覆い隠したり、嘘を吐くカナダの政治家は多い。
 
 アメリカ合衆国と比べても、カオスの度合いは大きいと考えている。その象徴が、カナダの西海岸にあるVancouverであると思う。トロントと比べても、Vancouverはおかしいが、トロントにも、性の多様性を誇る世界最大のLGBTQコミュニティがある。どっちもどっちか。
 
 カナダの中で、ケベックだけ孤立して、古い社会を保っているが、発展性はない。


The Parliament Buildings

・カナダの政治と軍事
 カナダ連邦の政治と軍事は複雑である。よく似た国としてオーストラリア連邦がある。どちらも首相が、政治と軍事のイニシアティブを握る。ただし国家元首はイギリス国王だ。これはカナダ連邦もオーストラリア連邦も変わらない。イギリス連邦に属しているからだ。

 第二次世界大戦後、イギリス連邦が成立した時は、大英帝国を継承する組織として、意味があったが、その後インドが独立するなど、徐々に実質が失われ、現代では理念的なものに留まっている。この緩やかなイギリス連邦の中に、今もカナダとオーストラリアがある。

 カナダもオーストラリアも、イギリス国王の代理として、カナダ総督オーストラリア総督を置いている。総督はイギリス国王から、統治権の委任状を渡されているが、さらに総督から首相に軍隊の指揮権を委任している。総督とは名目上の国家元首の代理である。

 この総督に権力は存在する。法律に基づいて、首相を解任する権限を持っている。滅多に行使される権限ではないが、1975年、オーストラリア総督ジョン・カーが、オーストラリア憲法64条の規定に則って、当時のゴフ・ホイットラム首相を罷免した。

 これは社会的批判を招き、それ以降は無難な人物を総督に選ぶようになった。カナダも、オーストラリアも、政府が選んだ総督の候補者を、イギリス国王が承認するという流れを取る。事実上、イギリス国王に選択肢はないが、名目的には、総督を選ぶ事になっている。

 ただ国家元首の代理ではあるので、統治の大権を持っている。理論上は今も時の首相を解任する事は可能だ。議会政治が機能しなくなった時の安全装置にはなるかもしれない。ただ普段は、その存在が注目される事はない。植民地時代の遺物と見なされている。

 カナダの首相も、オーストラリアの首相も、総督から政治のイニシアティブを任され、軍隊の指揮権を委任されている。軍隊の最高指揮官はイギリス国王、だがイギリス国王が総督に委任状を渡し、さらに総督が首相に指揮権を委任している。

 だがカナダも、オーストラリアも、軍隊の規模が大きくなく、安全保障面では大きくアメリカ合衆国に依存している。カナダ軍などは、事実上、米軍とセットでないと動けない。冷戦時代にNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)を作り、両国で共同運営している。

 NORADの指揮は、アメリカ合衆国大統領とカナダ首相が共同で行うが、力関係から言って、事実上、カナダ軍は米軍に組み込まれていると言ってもいい。だからカナダ軍は、イギリス国王→総督→首相→アメリカ合衆国大統領という委任の流れがあり、指揮権は不明瞭だ。

 オーストラリアも、アメリカの同盟国であるが、カナダ軍ほど米軍に組み込まれている訳ではないので、行動の自由はある。ただ戦力の問題で、オーストラリアも、米軍に大きく依存している事に違いはない。どちらもイギリス連邦の国だが、アメリカが主導権を握っている。

 戦後アメリカが確立したスーパーパワーが為せる技だが、イギリスも、アメリカも、カナダも、オーストラリアも、英語の国という点で、こういう事が起きていると言えるかもしれない。これは特筆すべき事だろう。言語的な一体性が、連結を可能にしている点は見逃せない。

 アングロ・サクソン系が、この星で一番の勢力である事は、言語的な理由が大きい。信は力なり、言葉は地図なりと言ったところか。アメリカも、カナダも、オーストラリアも、イギリスから誕生しているので、こういう集団が出来上がるのは、自然の流れだろう。


le premier ministre du Canada

・Justin Trudeau(1971/12/25~)
 2015年から第29代カナダ首相を務める。第20・22代首相Pierre Trudeau(1919/10/18~2000/09/28)が父親である。オンタリオ州オタワ出身。最終学歴はモントリオールのマギル大学大学院で地理学を専攻した。28歳の時、父の国葬で、人々の印象に残るスピーチをした。

 2015年11月4日、44歳でカナダ首相に就任すると、閣僚を男女同数で、組閣した。

 2016年と2017年、世界最大のLGBTQの祭典、トロントのプライドパレードに参加

 2018年10月、嗜好品として大麻を合法化した。日本政府は渡航注意を呼び掛ける。

 2019年12月3日、NATO首脳会議に出席したが、トランプ大統領に対する陰口がテレビで流れてしまい、同大統領の激しい怒りを買う。のちに鉄鋼で高い関税をかけられた。

 2020年11月23日、新型コロナウイルスの感染拡大により、トロントをロックダウン

 2021年8月13日、カナダ政府は、約30万人の全連邦政府職員をはじめ、民間航空機や長距離鉄道、大型客船などの乗客に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付ける方針を発表した。遅くとも同年10月末までに全接種を完了させるとした。

 2022年2月14日、新型コロナウイルスのワクチン接種の義務化に抗議するデモ(「フリーダムコンボイ(自由のための車両隊列)」=長距離トラックのドライバーたちのデモ)を鎮圧するために、緊急事態法を発動し、政府に大権を与え、人権を一部制限した。

 2023年5月21日、G7広島サミット最終日に、本人の強い希望で原爆資料館を訪問した。

 Justin Trudeauは、フランス大統領Emmanuel Macronとよく似た政策をやる。思考、反応、行動においても共通性がある。二人とも世界経済フォーラム、ダボス会議によく出ているので、グローバリストとタグ付けされる事が多い。変形マルクス主義の一形態だと思われる。
 
 Emmanuel Macronは、信仰に関しては、不可知論の立場を取っており、神はいるかもしれないし、いないかも知れないという発言をしている。事実上の無神論者だろう。Justin Trudeauに関しては、何も聞いていないが、二人の行動はよく似ているので、近い立場だと思われる。

 ハッキリ言って、この二人は、政策上、碌な事をしていない。


L'Amérique du Nord et le Parti communiste chinois

・中共とカナダの問題
 2018年12月5日、カナダ司法局は、米警察当局の要請で、華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)兼副会長の孟晩舟氏をカナダ西部バンクーバーで逮捕した

 2018年12月10日、カナダの元外交官のマイケル・コヴリグ氏が中国で拘束された。

 2018年12月18日、カナダの実業家のマイケル・スペイヴァー氏が中国で拘束された。

 2019年1月19日、米司法省が、制裁逃れや企業技術窃取で、華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)兼副会長の孟晩舟氏を起訴した。

 2019年3月4日、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟氏が、政治的動機に基づく不当逮捕だとカナダ政府を提訴した。

 2019年5月16日、アメリカのトランプ大統領は、「これはアメリカのコンピューターシステムをめぐる非常事態だ」として、安保リスクある機器使用を禁止した。事実上、華為技術(ファーウェイ)を念頭に置いた措置と見られる。

 2019年5月17日、中国外務省は、アメリカが華為技術(ファーウェイ)の通信機器の使用や同社への輸出を規制したことに反発し、報復措置を取る考えを表明した。

 2020年7月15日、イギリス政府は、5G通信網を構築する上で、華為技術(ファーウェイ)の通信機器を排除する事を決定した。この措置は2027年までに完了する予定。

 2021年6月4日、アメリカのバイデン大統領は、トランプ前大統領が米国民の投資を禁じた中国企業31社を59社に拡大する事を決定した。華為技術(ファーウェイ)も含まれる。

 2021年8月11日、中国で拘束されたカナダ人ロバート・ロイド・シェレンバーグが、大麻所持で死刑判決を受けた。カナダの中国大使がこれを批判。中共当局は関係ないと黙殺。

 2021年9月24日、カナダ当局に逮捕され、アメリカへの身柄引き渡しが決まっていた華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長が、米司法省との司法取引に応じた。その結果、中国で拘束されていたカナダ人2人が解放され、同日に孟晩舟副会長は中国に向かった。

 2021年9月25日、カナダ政府は、中国で拘束されていた二人のマイケル、元外交官のマイケル・コヴリグ氏と実業家のマイケル・スペイヴァー氏が解放されたと述べた。
 
 この問題は、トランプ大統領による米中貿易戦争の余波を、カナダが被ったという事だろう。中国のスパイウェアは狡猾なので、アメリカ当局は目を光らせ、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)をマークしていた。第三国でCFOが逮捕されたので、ややこしい事になった。

 Trudeau首相は、一貫して受け身で、アメリカと歩調を合わせざるを得なかったし、中共もアメリカではなく、カナダに焦点を当てて、報復を続けた。アメリカも、中共も、直接対決せず間接的に戦った。このパターンの争いは、将来日本でも起こり得る事である。

 アメリカも安全保障問題となると、共和党も民主党もなく、トランプもバイデンもなく、一致した継続行動を取るので、対決の姿勢は強硬となる。中共も戦狼外交で応じるが、その相手はアメリカではなく、第三国に向かう事が多い。これまで見て来たパターンである。


LGBTQ au Canada

・カナダのLGBTQ
 
カナダについて書く時、避けて通れない道がある。LGBTQだ。

 現代のカナダは、LGBTQのサンクチュアリになっている。
 
 なぜそうなっているのかと言うと、宗教勢力が弱く、伝統的な価値観も薄い社会が広がっているカナダだからこそ、新しい運動としてのLGBTQが定着し、発展できたのだと思う。他の社会ではこうはならない。

 そういう意味で、カナダが、LGBTQのサンクチュアリになったのは当然と言える。

 LGBTQをおさらいしておこう。Lとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gは、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bは、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Tは、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、Qは、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称の代表格だ。他にも言い方はあるかも知れないが、ここではこの言い方で表記を統一する。

 カナダでは、外国渡航者に、LGBTQ指標による国ごとの差別の度合いを測る地図がある。それによると、ロシアとイランが、LGBTQが渡航してはならない危険な国となっている。

 ロシアは、プーチン大統領の考えによる処が大きい。彼はロシア正教のチーフ・エクソシストだ。ロシア正教的にもLGBTQは敵である。イランは厳格なシーア派イスラムなので、LGBTQなど存在さえ許されていない。悪名高い道徳警察に捕まって、その場で殺されるだろう。

 LGBTQは宗教の敵である。近年、エルサレムで、ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の聖職者の代表者たちが、観光地としてやって来る客の中にLGBTQがいて、聖域に入った場合どうするのか、話し合った。なんと三教とも一致して、LGBTQ排除で決まった。

 歴史的に見ても、この三教の意見の一致は、極めて珍しく、他で聞いた事がない。

 それくらいLGBTQは、嫌われている。世界はこの事実を重く見るべきだろう。単に教えや伝統に反するからではない。これは人類にとって、極めて危険な傾向でもあるからだ。LGBTQを放置してはならない。

 LGBTQは、しばしば性的少数者と言われる。この性的少数者という言い方は、性的多数者という表現を予想させる。つまり、性的多数者が、性的少数者を社会的に抑圧しているという議論だ。これは歴史上、どこかで見た構図である。そう、これはマルクス主義だ。

 ブルジョアが少数で、プロレタリアートが多数という点では、逆さまになっているが、資本家が権力を持ち、労働者が権力を持たないという点においては、性的多数者による社会的抑圧から、性的少数者を解放せよという議論は、マルクス主義の階級闘争理論と同じ構造を持つ。

 ブルジョア(資本家)が、プロレタリアート(労働者)を抑圧し、搾取している。だから万国の労働者階級が立ち上がって、資本家を倒して、革命を達成しないといけない。20世紀の中頃ぐらいまで、西欧では、共産主義に対して敬意を表して、民主主義の別形態と呼んだ。

 これは、まだ共産主義がどういうものか分からず、期待していた時期だからでもある。

 今LGBTQも、敬意を以て接せられているので、歴史的にこの段階にあると思われる。

 だが時間が経過して、恐ろしい真実が明らかになってくれば、敬意など吹き飛ぶ。

 話を戻そう。マルクス主義は無神論で唯物論である。当然、生まれる前の話なんかしない。神も仏もあるもんかという世界観だから、前世の話なんてしないのは、当然の帰結だ。

 マルクス主義は、フランスの実存主義と親和性が高く、男女の偶発的な結合から人間が生じ、母胎から偶然投げ出されたという議論を受け入れる。今風に言えば、親ガチャだ。

 どっかの誰かが、「On ne naît pas femme, on le devient.(人は女に生まれるのではない。女になるのだ)」という名言を吐いたらしいが、これはLGBTQの祖先だろう。

 幼少期から自己の性に違和感を覚えているかのような告白が、LGBTQのお決まりのコースだが、これはフロイトの心理学説の影響だろう。もっともらしい言い訳に使える。

 変形マルクス主義の一形態+実存主義( à la mode française)+フロイトの心理学説=LQBTQというのが、思想的因数分解だろう。全部、生まれる前の話が抜け落ちている。

 LGBTQで、神や仏を信じている者がどれだけいるだろうか?いや、理論的に矛盾するので、殆どいないだろう。いたら、その人はちょっとおかしい。LGBTQも無神論で唯物論だ。

 だから、なぜ自分が生まれたのか分からない。無論、生まれた時、前世の記憶は、リセットされるので、基本的には分からない。時々覚えている人もいるが、それは例外である。この生まれる前が分からないという事が、神仏が人類に用意した最大の試練だろう。

 この分からないという事を、基礎にして、いや、言い訳にして、人類は様々な事を言って、様々な事をやってきた。全ての思想は、自己の誕生と死をどう解釈するかにある。

 だが生と死に意味を与える存在は、神仏しかない。絶対者、根本神、根本仏である。なぜなら、人間は被造物で、神仏によって造られた子供たちだからだ。だから目的がある。

 ある人は明るく、ある人は暗い。ある人は複雑で、ある人は単純だ。またある人は男性で、またある人は女性だ。全て意味がある。神仏が、宇宙を創り、世界を創造する時、善悪のドラマがないと詰まらないので、人類とその友達という登場人物をたくさん造った。

 我々は、いわば、神の絵本の登場人物みたいな存在である。約束されたシナリオに沿って動くが、時に自由意思を発揮して、ドラマでアドリブを利かせる。これが名演技であればよいが、時に神が描いた台本を台無しにする事もある。我々は不完全な存在だからだ。自由がある。

 だから、生まれる前に神仏とした約束、人生の目的、人生のドラマを忘れて、勝手な事をする事も可能である。神仏はそれくらいの自由を、人間に許容している。人間は神の子だからだ。

 それが、誰が見ても感動できる名演技、ドラマであればよいが、折角、生まれる前に神仏と打ち合わせした台本を無視して、舞台に上がったら、全然別の事をやり始めれば、観客席からブーイングが飛ぶだろう。舞台裏で、その人を前世から支えてきた人たちもがっかりする。

 生まれる前、神仏と打ち合わせた台本では、主役、男と書かれているのに、舞台に上がったら、なぜか女装して、「私の心は女だから」と言って、女子トイレとか女子更衣室に入り始めたら、そのお芝居はどうなるだろうか?コミカルな演技で誤魔化せるものなのか?

 人は生まれる前に、人生の目的に合わせて、性別は選択してきている。だから生まれた後、性別を変えようとするのは、人生の台本を破る事になる。神仏との約束を破る事になる。神仏との約束を破った者が行く世界が地獄だ。もしくは、地上の彷徨える影、不成仏霊である。

 死後、閻魔大王の法廷、もしくは、西洋であれば、白いカツラを被った裁判官のジャスティス・コートに召喚される者はまだ幸いで、そこで人生をレビューされる。人生の台本と照らし合わせて、どこがおかしいのか、傍聴者に見られながら、チェックされる。

 その中で、飛び切りおかしくて、恥ずかしいのが、LGBTQだろう。あの世的に見て、これほど奇妙な生はない。この世的にどれほど同情されて、どれほど社会的に配慮されたとしても、それは生まれる前に立てた約束を破っている。分からない。知らなかったは言い訳でしかない。

 LGBTQは、接してみれば、分かるが、悪霊の憑依を受けている。本人は気が付いていないが、人格や思考の一部を見えない影に乗っ取られている。かなり強度の憑依で、言葉だけでは、簡単に剝がれない。

 本人は自分の考えだと思っているが、見えない他人に操られてる。悲しい事だが、見えない者は存在しない事になっている。だから分からない。仮に、こちらが微かでも、悪霊の声が聞こえたとしても、意味がない。

 我々は本当に厳しい世界に生きている。仏教的には、苦海と言う。苦しみの海だ。前世も来世も分からないという無明の世界にいる。この闇は神仏を信じる事によってしか照らせない。

 カナダであれば、カトリックが優勢なので、まだ救いがあるかもしれない。だがそれはケベックだけの話であって、多分、オンタリオ州のトロントであれば、状況は全く逆転する。世界最大のLGBTQの祭典、プライドパレードがあり、感染症が流行している。

 感染症とは、中国古典に従えば、形を変えた神の眼かもしれない。カナダの闇は深い。

                                以上


 


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