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国際情勢:プーチン大統領について➀ 

 この論考は、プーチン大統領、ロシア連邦共和国、ロシア・ウクライナ戦争について、述べている。必要に応じて、ウクライナの大統領やアメリカの大統領についても触れているが、フランスの大統領については、より多く触れている。ヨーロッパの破滅だけは、どうしても看過できないからである。(全体文字数44,000字、➀は4,401字)

 なお外国語で書かれている部分もあるが、日本語だけ追えば、十分理解できる。参考のために入れているが、元の内容が気になった時だけ、見ればよい。上段に日本語、下段に原文を置いている。以下、こんな感じだ。
 
 プーチン大統領
 「もし誰かが正規軍を送りたいという願望を持つなら、それは間違いなく人類を非常に深刻な、世界的な紛争の瀬戸際に立たせるでしょう。これは明らかです」
 『独占:タッカー・カールソンがウラジミール・プーチンをインタビューする』より 2024/02/08

 President Putin
 “ If somebody has the desire to send regular troops that would certainly bring Humanity to the brink of very serious global conflict. this is obvious.” 
 From Exclusive: Tucker Carlson Interviews Vladimir Putin 02/08/2024
 
 論考はすでに始まっているが、これは話が長くて、敵わないという人もいるだろう。要旨だけ、知りたい人は、太字だけ読んで、飛ばして行けば、時間を節約できる。
 
 フランスのマクロン大統領は、以下の条件を満たせば、アメリカ抜きでも、フランス軍地上部隊を、ウクライナに派遣すると発表した。(LCI『ウクライナの地上部隊:マクロンは罠にかかっている?』2024/05/05より)

 ➀ウクライナ軍の戦線崩壊
 ②キエフからの要請があった場合
 
 Troupes au sol en Ukraine : Macron est-il pris au piège ? 
 『ウクライナの地上部隊:マクロンは罠にかかっている?』
 https://www.youtube.com/watch?v=QIeW7K0dFsQ

    17 :37  05/05/2024   LCI

 Emmanuel Macron est-il pris au piège depuis qu’il a réitéré ses propos sur l’envoi de troupes en Ukraine à deux conditions, l’effondrement du front ukrainien et la demande de Kiev ? La France peut-elle y aller seule ?

 エマニュエル・マクロンは、ウクライナの戦線崩壊とキエフからの要請という2つの条件でウクライナに軍隊を派兵するという発言を繰り返して以来、罠にはまっているのだろうか? フランスは単独で行くことができるのか?(拙訳)
 
 これが現在の大きな問題だ。
 ロシア・ウクライナ戦争は、大きな転換点を迎えている。
 プーチン大統領の発言は2024/2/6、マクロン大統領の発言は2024/5/4だ。
 もう戦争拡大は、止まらない処まで来ている。少なくとも、これは欧州大戦になる。

 もしマクロンが止まるとしたら、次の下院選挙(2024/06/30)で負けて、野党との共棲(Cohabitation)を強いられた時かも知れない。フランスの首相が、国民連合(le Rassemblement National)から選出されて、野党の意見が強くなる。現在のRNの党首は、ジャン・マリーヌ・ルペンだ。国内優先で、ウクライナ支援には抑制的な立場を取る。

 ただフランスでは、大統領が全てにイニシアティブを握るので、外交・戦争で、首相の出る幕はない。
 
 共和国大統領デクレは、議会でひっくり返せるものではない。内閣に属する大臣・閣僚級の反対だけだ。
 
 大統領の専任事項も幾つかあり、内閣でも反対できないものもある。首相の任命、議会の解散などだ。
 
 戦争に関しては、どうなっているのか、分からない。だが派兵から始まるのであれば、なし崩しか?
 
 アメリカだと、議会の反対があれば、大統領はマリーンしか動かせない。しかも半年間だけだ。
 
 アメリカの大統領は、日本の総理大臣や、フランスの大統領に比べて、かなり権力が制限されている。

 それよりも謎と言われているのが、今回の解散総選挙に挑んだマクロンの考えだ。明らかに情勢は不利で、与党は敗ける。それにもかかわらず、下院を解散して国民に信を問うた。直近の2024/06/09に執行された欧州議会議員選挙でも、与党はRNに敗けている。これはRNとの共棲(Cohabitation)を視野に入れたマクロンの議会戦術だろう。

 首相は、今のガブリエル・アタルでなくてもいい。それよりもRNから首相を入れて、挙国一致にもって行く。それが狙いではないだろうか?ロシアと戦争はやるけど、ちゃんと反対意見も取り込んだよというポーズだ。

 マクロンが考えそうな事だ。選挙に負ける事も見込んで、次の作戦も立てている。

 逆に、これで潰れるようなら、自分もここまでと考えている。そういう見切りだ。

 とにかく、国民に信を問う形を取り、共和国の運命を占っている。とんでもない占い師だ。

 39歳で大統領になった時、ルイ・ナポレオンの再来と言われたが、本当に第三帝政でも狙っているのか?イスラエルの戦時内閣を見て、何か重大なヒントを得た可能性がある。注意が必要だ。ウクライナの大統領ではないが、戦争中につき、選挙はできません。だから禁断の三期目もやりますとか言い出しかねない。事実上の帝政か。

 第二次世界大戦では、アメリカのフラクリン・ルーズベルトが同じ手で、三期目どころか四期目もやった。戦争を言い訳にして、世界中で長期政権が誕生するかもしれない。習近平も四期目を狙っている。仮に台湾を手土産に、四期目に入れば、人类命运共同体の皇帝にでもなるのだろう。皇帝たちの大戦か。まさに第一次世界大戦の再来だ。

 RNのルペンは、反グローバリストだが、情熱を欠いた論理的政治家だ。だから、非論理的で、無意味な熱弁を振るうマクロンにいつも敗ける。彼女が前回の大統領選で負けたのは、志の低さだと思う。論理性を欠くが、熱意があるマクロンの方が、志があるように見える。少なくとも、国民には、マクロンの方がやる気があるように見えた。

 ルペンは頭が良くて、周りに優秀なブレーンを置いて、意見をよく聞いて、理解している事は、伝わって来た。だがそれは、熱意がないため、他人の意見を言っているだけに聞こえてしまう。これはフランスのエリートが陥る悪癖だ。たとえ間違った事を言っても、熱意があるマクロンの方が、自分の意見を言っているように聞こえる。

 ル・ラッサンブル・ナショナル、国民連合は、2018年に出来た。前身をル・フロン・ナショナル、国民戦線と言う。創設者はジャン・マリ・ルペンで、現党首ジャン・マリーヌ・ルペンの父だ。極右と呼ばれ、国民戦線を作った。娘の代で、穏健化し、名誉顧問の父を追放して、極右のイメージを捨てた。だから彼女はクールでないといけない。
 
 カナダのジュスタン・トルドー首相と並んで、世界経済会議の雄であるマクロンは、グローバリストで、志だけは高い。だがダボス会議に影響を受けた彼の見識は、間違っている。基本的にマルクス主義の亜流である。21世紀になっても、懲りずに、計画経済の変形をやろうとしている。彼らは人類を管理する事が正義だと思っている。

 AIこそ新世界の神だと思って、ビックブラザーとでも名付けて、人類の管理に乗り出すかもしれない。
 スポンサーはジョージ・ソロスで、プロジェクト・マネージャーはビル・ゲイツと言った処か?
 『開かれた社会とその敵』で、知られる科学哲学のカール・ポッパーが、黄泉の国から指導する。
 興味があるなら、この三人の繋がりを調べてみるといい。ソロスとゲイツは仲がいい友達だ。
 ポッパーとソロスは学問上、師弟関係にある。ソロスはDoctor of Philosophyだ。
 ソロスの行動原理が、ポッパーの『開かれた社会とその敵』に導かれていると考えると理解し易い。

 これが西側に巣食うグローバリストたちの陣営だ。東側のロシアを本気で邪魔だと思っている。
 だから民主党最大の出資者になって、バイデン大統領を使って、プーチンを攻撃している。
 グローバリストたちは、ダボス会議に出席し、情報社会から管理社会への移行を試みている。
 従来の国連だけでは飽き足らず、戦争、貧困、疫病などを解決するための世界政府を構想する。
 これはドラッカーが『ポスト資本主義社会』で述べていた知識社会ではない。管理社会だ。
 これは蘇ったマルクスの呪文であり、別種の共産主義革命、AI管理型全体主義だろう。
 ポッパーの『開かれた社会とその敵』をドグマにして、思想的に展開すれば、こうなる。

 『開かれた社会とその敵』では、マルクスを持ち上げて、プラトンやヘーゲルを批判している。
 全体主義を批判して、ハイエク、ドラッカー、アレントと並びたいのだろうが、逆である。
 マルクスを持ち上げたら、全体主義が起きるので、ポッパーは思想的に、正反対の位置にいる。
 矛盾している事に気が付いていないのだろう。だが現代アメリカで強い影響力を持っている。
 ポッパーは、世界経済会議、ダボス会議出席者の密かなセントラル・ドグマだと思われる。
 
 ルペンはこれに、真っ向から反対する立場に身を置くのに、まるで他人事のように冷静に喋る。
 ジャン・マリーヌ・ルペンは叫べない。叫んだら、また極右のレッテルを貼られる。これは枷だろう。
 彼女はどこまで問題を理解しているのか、表情から読み取れない。ただ正しい理屈を喋っている。

 イタリアの首相メローニが欲しい。彼女はイタリアのプリマドンナだ。
 ホント、火の玉のようなイタリア語を叫ぶ。無論、反グローバリストだ。

 Io sono italiana! Sono un politico! Sono una donna!
 私はイタリア女だ!政治家だ!女だ!
 
 ルペンをフランスのトップにすると、何だか国運が下がりそうな気がする。これは外国人の立場から、今の共和国を見た時、そう見える。論理的で、正しい事を言っているからと言って、国が興隆する訳ではない。だが過去世、ヨーロッパ人として、フランス人として、生きた者として、どうしても現在の共和国には、文句を言いたい。

 とにかく、マクロンが破滅の扉への血路を開いて、欧州を地獄に墜としそうだと感じている。
 マクロンの頭の中と、ネタニヤフの頭の中では、すでにかなり嫌な未来が展開している。
 もうこの際、誰でもいいから、戦争拡大、欧州大戦を止めて欲しい。世界大戦は嫌だ。

 なおネタニヤフについては、2023/10/07のガザ地区侵攻前、2023/09/10、以下で警告した。
 『国際情勢:イスラエルの運命とその精神 レギオン、アパルトヘイト、ホロコースト』
 https://note.com/michel_enzo/n/n0aed714c51a1

 重苦しい気分に襲われて、どうしてもネタニヤフについて、書かねばならないと思い書いた。
 これ以上、悪く書けないというぐらい、彼を悪く書いたが、結果的に足りなかった。
 だが彼が、とんでもない悪業をやろうとしているのは分かっていた。だから警告した。
 無駄な事かも知れないが、現在位置から、遠景を眺める事は、決して無駄ではないだろう。
 
 砲弾の生産量、主力砲弾の数だけ見ても、実は第三次世界大戦はもう始まっている。
 アメリカが年間100万発155mm弾を生産し、西側全体で年間300万発生産を目指している。
 ロシアはすでに年間300万発152mm弾を生産し、2025年には、450万発生産を目指す。
 主力砲弾の熾烈な生産競争は、2023年から始まっている。完全に戦時体制だ。
 
 結局、陸戦は、砲弾の数で決まるので、先に沢山作って、多く撃ち込んだ方が勝つ。
 ロシア・ウクライナ戦争で、ロシアが有利なのは、152mm弾の数が多いからである。
 ロシアは現在、152mm弾を、一日1万発も、ウクライナに撃ち込んでいる。
 物量で、ウクライナは完全に押されている。ドローンや精密誘導弾だけで戦争は勝てない。
 
 ここまでが前段。問題提起だ。
 この論考の中心となるテーマを上げた。
 以下、論考の背景やタイムラインを簡単に記す。


                                    

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