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☆本#180 試練と幸福「櫛挽道守 くしひきちもり」木内登著を読んで

この著者2作品目。時代小説家だった。
この長編は、方言が強いのでそこが読むとき少々ネックだったけど、江戸時代後期、主人公は櫛職人の娘で、そのこども時代から結婚後まで描かれている、骨太な話だった。
端的に言うと、女性が自分の意思など持てないというか言えない時代に、それを貫き、悲しみや苦労を乗り越え、最終的にはしたかったことができていて、家族と心が通いあえる話。

読み始めて早い段階で、弟が変死する。跡継ぎがなくなったことで、主人公は葛藤もあり、結局親の薦めの縁談を断り、櫛職人の父親に技術を学ぶ道を選ぶ。

それを見ていた妹は、自分は誰からも大事にされてなく、母親や姉のようになりたくないと、自分で嫁ぎ先を見つけてくる。当時、親が結婚相手を探す時代だったにも関わらず。妹は子供を産んでも顔を見せない。

主人公は婚期を逃すも、以前父親の技術を学びに来た男が戻ってきてまた学ぶことになり、状況的にその人と結婚する。というか、その人が嫁にもらってくれることになる。

あるとき、弟が物語を作り、絵を描き、それを旅人に売っていたことを知る。それは、当初友人のためだったんだけど。知らなかった弟の家族への思いを知り、家族や周りともいろいろあって、主人公は技術を父に認められ、最後夫とも心を通い合ったことを感じる。

長編なので、実に「いろいろ」ある。約170年ほど前の田舎に住む女性の状況がわかる本でもある。

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