みぶ真也

俳優、怪談ライター

みぶ真也

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最近の記事

次世代ハラスメント

セクハラ、パワハラ、モラハラなどに続く次のハラスメントは、おそらく… 「課長、最近、髪が薄くなりましたね」 「君、訴えるぞ」 “ハゲハラ”だろう。 「秋山くん、最近、おっぱい大きくなったね」 と同じハラスメントだ。 同じ課のOLを“ボインちゃん”と呼ぶのも問題なら、“チャビン部長”というあだ名も訴訟につながるだろう。 ハゲ“頭ポンポン”など、もっての外である。

    • 俳優の休暇

       三島由紀夫先生の「小説家の休暇」を読んでタイトルを思いついたのだが、俳優の休暇とはそもそも何か。  舞台にせよ映画やドラマにせよ、役者は役を貰った瞬間から演技を考える。 この役はどういう人物か、自分との共通点は何か、自分との相違点は何か、相違点があるならそれをどう演じるか……等々  稽古が始まる前であれそうしたプランをあれこれ考え、結局、24時間役作りという労働をし続けることになる。  その労働は本番終了後まで継続する。  そして、次の役が巡って来るまでが休暇ということにな

      • 老優 ますます……

        鈴木忠志さんやピーター・ブルックの本を読み、次はアルトーかなと思ってたらジョージ・バーンズ氏の「努力せずに100歳まで生きる方法」を手にしてしまった。 ま、一応演劇書と言えないこともない。 俳優でありカントリー歌手のジョージが87歳の時の著書。 長生きするためのエクササイズや食事が紹介されており、若い美女と共に訓練に励む楽しそうなバーンズ氏の写真がたくさん掲載されている。 86歳の時、生命保険に加入することを条件にハリウッド映画に出演することをなった。 審査医から血圧やら食生

        • 二人はジャンキー

          リチャード・ルポフによると、エドガー・ライス・バロウズの「火星のプリンセス」に出て来る肉体を脱出する高揚感、宇宙への飛翔、色とりどりの火星人、ヒーローとして活躍し美女を手に入れる多幸感などはペヨーテによる幻覚ではないかと仮定されている。つまりメスカリンだ。 確かに、ラストでは“老婆が緑色の薬を調合する”シーンまである。 エドガーは騎兵隊時代に、ネイティブアメリカンから得た祭祀用のペヨーテを試用した可能性もあるという。 だとすれば、アメリカを代表する作家二人のバロウズは、共にド

        次世代ハラスメント

          秒で終わった初恋

          「私のとこが好きなの?」 「えっ?普通に身体目当てだけど……」

          秒で終わった初恋

          本郷直樹さんとの対話3

          みぶ「ところで、青い三角定規が歌った『青春がくれた季節』は本郷さんが歌う予定だったと聞きましたが……」 本郷「うん、最初ぼくにオファーが来たんだ」 みぶ「断られたんですか?」 本郷「いや、他の歌を唄うつもりだったから、泣く泣く……(笑)」 みぶ「『朝の恋人』ですか?」 本郷「いや『僕でいいなら』の方。こういう作品の方がぼくに合うんじゃないかと思って」 みぶ「それは正解だと思います。『僕でいいなら』は素晴らしかったです。癒し系の歌だけど、本郷さんの唄い方がエルヴィスっぽくて……

          本郷直樹さんとの対話3

          本郷直樹さんとの会話 2

          みぶ「あのジャンプスーツは素敵でしたね。今は、伊丹さんのとこにあるんですか」 本郷「伊丹くんと新御三家がぼくらの後のアイドルだったからね」 みぶ「ぼくは本郷さんとにしきのさんと野村(真樹)さんが御三家の二代目になると思ってました」 本郷「にしきのさんと野村さんは少し先輩だね」 みぶ「雑誌の腕相撲企画で、本郷さんはにしきのさんに勝ったけど、野村さんに負けちゃったんですよね」 本郷「よく知ってるね(笑)。三つ巴の戦いだったよ」 みぶ「三人とも強かった」 本郷「みんなスポーツマンだ

          本郷直樹さんとの会話 2

          本郷直樹さんとの対話

          本郷「はじめまして」 みぶ「はじめまして……って言うか、本当ははじめましてじゃないんです。昔、本郷さんに会って握手して貰ったことあるんです」 本郷「へえ、そうなの?」 みぶ「ちょうど『僕でいいから』の頃です。イベントでサイン貰って握手していただきました」 本郷「新人賞獲って忙しかった頃だね」 みぶ「はい、ハードスケジュールでちょっと疲れ気味のようでした。でも、憧れの人を前にして光栄でした」 本郷「それはありがとう。新人賞の同期は女の子ばかりで、男はぼくだけだったな」 みぶ「え

          本郷直樹さんとの対話

          乱暴者

          14才のある日、マーロン・ブランドがバイクに乗って街へやって来て、ぼくを後ろに乗せて演劇の世界へ連れて行った。 以来、ぼくは二度ともとの街へは戻らなかった…… というのが映画「乱暴者」を観た感想。

          呪いの月夜

           その夜、ほろ酔い気分で駅から自宅へ帰る途中のこと。  通りかかった産土神社にある鎮守の森の前に、何やら白い塊が目に入った。  近づいてみると、裸の人間がうずくまっているようだ。 「大丈夫ですか?」  声をかけると、顔がこちらを見上げる。  月の光に照らされたその顔は野性的な美女。特にそのきらっと光る瞳に目を奪われた。 「気分が悪いんですか?」  彼女は首を振って立ち上がる。 「あっ!」  思わず声を出してしまった。  美女ではなく引き締まった体の少年だったのだ。  彼の裸体

          呪いの月夜

          わだばマーロンになる

          1970年、“前回の”大阪万博の年になる。 古本屋さんで買った10年前の「スクリーン~西部劇特集号」のページをめくった途端、強烈な目力の顔が現れた。 「『片目のジャック』監督・主演のマーロン・ブランド」 と説明があった。 版画家棟方志功さんは子供の頃、先生から一枚のゴッホのひまわりの絵を見せられて「わだばゴッホになる(自分はゴッホになる)」と決意されたそうだが、まさにそんな「人生を決める」印象だった。 以来、ぼくは自分で創った作品をひとり芝居で演じたり、朗読をして発表した

          わだばマーロンになる

          三島由紀夫と三桁の魔力

          ベンチプレスの選手だった頃、試合で100kgを挙げた時は感動しました。 考えてみれば90→95→100kgというのはそれぞれ5kg差なのだから、トレーニングしていれば力は確実にアップするはず。 それでも、100という三桁の数字は「何かをなしとげた」感を得られるもの、そしてちょっと自慢したくなるものでした。 「かつて私は、胸囲1メートル以上の男は、彼を取り巻く外界について、どういう感じ方をするものかということに、一つの認識の標的を宛てていた。それは認識にとって明らかに手にあま

          三島由紀夫と三桁の魔力

          石原慎太郎の季節

          高校の時、親の年代の人同士が「我々の若い頃は慎太郎や裕次郎が大スターで……」と話しているのを聞いた。 石原慎太郎さんの文壇への登場ぶりはかくも強烈なものだったらしい。 作家であり、スポーツマンであり、映画俳優であり、歌手であり、政治家であり…… 三島由紀夫さんも同じようなことをしていたとは言え、彼の場合は「作家」「武道家」「軍人」「俳優」などの役割を自分を中できっちりカテゴライズし、晩年は「文士として生きるか武士として死ぬか」と語ったりしていたそうである。 石原さんはそれより

          石原慎太郎の季節

          ラブクラフト3夜

          第一夜 「名前はアイコよ。コは愛する子じゃなくて、工芸の工と書くの」  彼女の息が妙に生臭く、厚化粧の下の肌が鱗に覆われており、愛工の英訳が ラブクラフト だということに気づいた。 第二夜 「ここ戸隠神社には九頭竜伝説があって、九つの頭と龍の尾を持つ鬼がこの地で岩戸に閉じこめられたと言われています」 「クズリュウ伝説は全国にありますね」 「この辺りの訛りでは九頭竜と書いて“クトゥルー”と読むんですよ」 第三夜 「おばあちゃん、夜中に声が聞こえたり、誰もいない家の中で人の姿

          ラブクラフト3夜

          満月の恋人たち

          「漱石はI love youを“月が綺麗ですね”と訳しました。今夜も月が綺麗ですね」 「満月ですわね」 「寒いですか?」 「どうして?」 「毛糸の手袋を急につけたみたいだから」 「私、手袋などしてなくってよ…それより、どうしてwerewolfを狼男と訳したんでしょうね。女もいるのに…」

          満月の恋人たち

          燃えよアーナンクー

           今から30年前習った空手の流派で最初に教わった古流の型の名前は「アーナンクー」だった。  4大流派(松濤館流、剛柔流、糸東流、和道流)にはない型で、流祖喜屋武朝徳が台湾から持ち帰った型とも、父親から学んだ型とも言われる。  アーナンクーは「南光」「阿南君」などの漢字を当てはめられるが、阿南とは泊に拳法をもたらした禅南(チャンナン)の呼称という人もいる。  もしかしたら、大極拳や形意拳のように阿南拳という名の拳法があったのかも知れない。  個人的には、お釈迦様の弟子の阿難が空

          燃えよアーナンクー