石原慎太郎の季節
高校の時、親の年代の人同士が「我々の若い頃は慎太郎や裕次郎が大スターで……」と話しているのを聞いた。
石原慎太郎さんの文壇への登場ぶりはかくも強烈なものだったらしい。
作家であり、スポーツマンであり、映画俳優であり、歌手であり、政治家であり……
三島由紀夫さんも同じようなことをしていたとは言え、彼の場合は「作家」「武道家」「軍人」「俳優」などの役割を自分を中できっちりカテゴライズし、晩年は「文士として生きるか武士として死ぬか」と語ったりしていたそうである。
石原さんはそれよりずっと大らかで、好きなことを好きなようにやってるだけという姿勢に近い。
大正生まれと昭和生まれの違いなのだろうか。
ぼくは個人的に政治家ではなく作家の石原さんのファンなので、政治より執筆をライフワークにして欲しかった。
守りたいものを訊かれ、三島さんは「三種の神器」、石原さんは「自由」と答えたのも興味深い。
三島由紀夫は三島由紀夫であろうとし、石原さんは自分像にあまりこだわってなかったのかも知れない。
「生まれ変わったらクジラになりたい」と言っていた石原さんの遺骨は、四人の息子さんの手で大洋に散骨された。
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