俳優の休暇
三島由紀夫先生の「小説家の休暇」を読んでタイトルを思いついたのだが、俳優の休暇とはそもそも何か。
舞台にせよ映画やドラマにせよ、役者は役を貰った瞬間から演技を考える。
この役はどういう人物か、自分との共通点は何か、自分との相違点は何か、相違点があるならそれをどう演じるか……等々
稽古が始まる前であれそうしたプランをあれこれ考え、結局、24時間役作りという労働をし続けることになる。
その労働は本番終了後まで継続する。
そして、次の役が巡って来るまでが休暇ということになるのだが、休暇には発声練習や肉体訓練、あとは架空の役作り以外にすることは何もない。
従って、体がムキムキでやたら滑舌の良い役者というのは、休暇が多い、つまり売れていない俳優という訳であり、これはぼくにも当てはまる(!)
作家は休暇の間に書いた日記を三島さんのように本にして出版して印税で儲けることも可能だが(休暇じゃないやないかい)、役者の休暇はただの休暇で筋肉も滑舌も、それを活用する役を与えられなければ無用の長物である。
しかも、この無用の長物も日々充電しておかなければ放電して消えてしまうのだ。
言わば、客のつかない娼婦のようなものである。
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