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大学学部で数学はどこまでやればいいの?[理系非数学科向け]
専門科目はともかくとして、
学科で割り当てられない専門的な数学を学部の期間でどこまでやればいいのか?
数学科ではない理工系学科では、たとえば、次の科目は開講されていません。
これらは、次に挙げるような本、もしくは数学科講義の聴講で、学部生の間に修めておくのを推奨します。(そのさき、将来に渡って、ずっと困ります)
ルベーグ積分(測度論)+確率論・確率過程
佐藤坦,はじめての確率論 測度から確率へ,共立出版,1994
服部久美子先生のおすすめ(数学セミナー2021年7月号より)
開講されていないとはいえ、学部で提供される数理科目だけでは、研究テーマによっては、4年次や修士で基礎的知識が足りなくなります。
全然足りない。全く歯が立たない。早めにこの事実に直面しておくべきでしょう。
(学部生としては頑張りすぎの)上限レベル
新井朝雄,現代物理数学ハンドブック,新装版,朝倉書店,2022
掲載されている内容、そして数理物理学研究における必要性は、漏れる項目はなく、和書随一の網羅性がある。
図書館・研究所・研究室に配架を目的に出版されているのでしょう。朝倉書店のハンドブックはいずれも2〜3万円します。
高価な本なので、買うのであれば旧版2005『現代物理数学ハンドブック』ユーズドでも可。
この『現代物理数学ハンドブック』を眺めるだけで、理工系を研究するに当たり、数学に関して、
何が必要であり、
どのくらい知っておくべきなのか
を把握できます。
そして『現代物理数学ハンドブック』は、事典として使うだけでなく、通読可能であり、学習に使えます。
数多くの数理物理学の書籍を上梓されている北大 新井朝雄先生だけあり、その集大成といえる『現代物理数学ハンドブック』では、すべての物理数学の分野を一冊で学べます。
※ 新井朝雄先生の書かれた主要な数理物理学の書籍は下部に載せておきます。
この『現代物理数学ハンドブック』では、つぎのように書かれています。
本書は、大学の理工学の学部において2年次くらいまでに学習する数学 -具体的には微分積分学、行列論を含む線形代数学の初歩、複素解析- を修得していれば読めるように書かれている。
上記で挙げた集合・位相・ルベーグ積分・確率論・テンソル・微分幾何学について(非数学専門向けによる書籍で)概要を知ってからがいいでしょう。
注意しておきたいことは、全体を通して、数学科向き・数学研究者スタイルの抽象度の高い記述になっています。具体的な計算法や例については、他書にあたる場合も出てきます。
(学部生にはちょうどいい)普通レベル
『朝倉数学ハンドブック』も、朝倉書店のハンドブックの特徴「読める」辞典です。『現代物理数学ハンドブック』に比べて、教科書的な記述であり、具体的な計算例も扱われています。
編:飯高茂,室田一雄,楠岡成雄 朝倉数学ハンドブック 基礎編,朝倉書店,2010
816ページ、分野ごとに本を揃えるよりも安上がりかもしれません。
集合と論理/線形代数/微分積分学/代数学(群,環,体)/ベクトル解析/位相空間/位相幾何/曲線と曲面/多様体/常微分方程式/複素関数/積分論/偏微分方程式/関数解析/積分変換・積分方程式
編:飯高茂,室田一雄,楠岡成雄 朝倉数学ハンドブック 応用編,朝倉書店,2010
632ページ
確率論/応用確率論/数理ファイナンス/関数近似/数値計算/数理計画/制御理論/離散数学とアルゴリズム/情報の理論
その他に、
非数学専門家向け、理工学に最適なバランスでの記述。
「知らない項目を調べたときに理解できる」が一つの望むべき到達点です。
辞書的にあーわ配列順になっており、「引く事典」です。この本での通読・学習はやりにくい。
(学部生にはちょうどいい)普通レベルの洋書
Arfken,"Mathematical Methods for Physicists",7e,Academic Press
1200ページ、古典物理〜量子力学で必要となる数学を網羅。
翻訳『基礎物理数学第4版Vol.3 特殊関数』があるが、原書4e以降翻訳が進んでいない。
事典ではなく、教科書です。和書による類書に比べてかなり丁寧。そのために本が厚い。
演習問題の解答が手に入らない。(WEBで見つかるかもしれません)
Byron & Fuller,Mathematics of Classical and Quantum Physics,Dover
665ページ、古典物理〜量子力学で必要となる数学を網羅。
和訳版なし。今後も出ないと思われます。
Arfkenよりも数学レベルが高い。
新井『ヒルベルト空間と量子力学』とは違う意味での、プラグマティック(実用的)な量子力学のための数学書。
新井先生による数理物理学の著作から主要なもの
読むだけで修士の2年間を使い果たしそうです。全部揃えるにも、5~10万円は掛かります。
場の量子論と統計力学,増補版,2023(旧版1988)(江沢洋先生と共著)
増補版には「南部・ゴールドストーンの定理(もしくは対称性の自発的破れ)」の(厳密な)数学的定式化とその証明が加筆されている。
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