対抗
退屈な世界で、腐敗して行くだけの面影、かけがえのないものですら、賭け事に使われ、その場で消え去るだけの思いも、惰性に引き延ばされ、悲観的に至るだけの毎日を切り開く執刀医や、異物感を抱えている胃の底から現れた、がんじからめになった日常を縫い合わせる母の手や、この、傷だらけの旅の最中、多様性や、多目的なだけで、目的すら見失っているだけの、忌々しい現実に虐げられ、健気さも損なわれ、そこかしこで素っ気ない人々の、ふてぶてしい態度が目につき、嫌気がさすと語る君の心情に寄り添う影や、課せられた罪や、償いを謳う奴らの歪んだ正義や、犠牲になるための、供儀として運ばれて行く子供たちの悲しみが、いつしか呪いかなんかに変わり、今に苦しみを与え、揺蕩うまにまに広がる空の曖昧さや、嘯く言葉の谷間に住まう仙人のように過ごし、この、長いだけの旅路を色付けるための、君の役目や役割、与えられた役を、演じるためだけに現れた私や、煩わしい結末を吸い込む口、今に結合して行く動機が加速し、ささやかな生活に沁み入る原理的な初動や、凡庸な今朝を破壊するための提言や、象形文字の上で踊る原住民たち、大義を放棄して、自らの理想が食い込むだけの、惰性に引き延ばした世界の中では、正しさなんてものは、過去の遺物なんだよ、と、促す聖職者たちの欲や、クヨクヨしている暇もないから、悲観的なものを、打ち砕いて、奪われる前に、逃げ出し、捕まえられぬように、人里離れたところで、静かに待ち、過ちに対して、耐性がついて、何も感じられなくなる前に、誤りを正し、誰もが、誰かを責める前に、自らを正す事だけが、自らの世界を、正しいものにする事ができる。