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グノーシス主義とカオス理論とパターナリズムとハイリスクハイリターンな変化とベルトコンベアの関係


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注意

漫画
『ドラゴンボール』
『ドラゴンボール超』

テレビアニメ
『ドラゴンボールZ』
『ドラゴンボール超』
『ドラゴンボールGT』

特撮テレビドラマ
『ウルトラマンZ』


小説
『予め決定されている明日』(小林泰三)

テレビドラマ
『JIN-仁-』
『JIN-仁-完結編』
『テセウスの船』
『天国と地獄~サイコな2人~』

これらの重要な情報を明かします。ご注意ください。


はじめに


 『ドラゴンボール』とカオス理論の関係についての考察を記しました。


2022年2月28日閲覧

 また、『ドラゴンボール』や『NARUTO』にはパターナリズムがあるとも記しました。


2022年2月28日閲覧

 そして、負と正のフィードバックによるハイリスクハイリターンな変化の考察を記しました。


2022年2月28日閲覧

 ここで私は、タイムトラベルとグノーシス主義などを踏まえて、世界を変えることへの独特の恐怖、ベルトコンベアを妨害するような部分があり、それがカオス理論とパターナリズムを繋げるという考察を記します。


カオス理論とパターナリズム

 まず、『ドラゴンボール』では、強くなるのを繰り返すインフレーションと、敵の出現により「塞翁が馬」のようにプラスとマイナスが反転し得る部分、弱点を突いて実力差を覆す攻撃に対応しにくい非線形性と、重要な役割を果たしていた人物がそうでなくなるコミカルさが、予定調和を崩します。
 そのため、過去を変えるタイムトラベルでは僅かな変化が世界を大きく変化させます。『JIN-仁-』のバタフライエフェクトのようにです。

 そして、ここに私は、『ドラゴンボール』特有のパターナリズムが絡むと考えます。
 『ドラゴンボール』では、「何が起きるか分からない」カオスな部分があると記しましたが、その例外が、「地球人の一般社会に戦いの詳細を知られることがない」、「地球人のほとんどが無力であり、被害を防ぐ努力をほとんどしない」、「ミスター・サタンが強運で活躍して評価されるのを繰り返す」予定調和です。
 なお、『ドラゴンボール超』では、モナカが悟空に強いと誤解されたままである予定調和も加わります。
 それは、「何が起きるか分からない、どのような危険な戦いになるか分からない」状況で、「地球人のほとんどは主人公達に比べて圧倒的に弱く、状況を理解する能力もない」、「主人公達ならば比較的深く理解出来る」ということは「分かる」ために、主人公達が地球人を信用せずに善意で強引に守り方を決めるところがあります。

 ちょうど台風の目のように、「自分達の指示の外では何が起きるか分からないが、自分達の指示がもっとも確実なことだけは分かる」というような論法なのです。
 つまり、カオスな戦いで、軸のようにして「一般人の無知、無力」な部分が予定調和として働き、それがパターナリズムを維持するのです。
 先の記事で記したように、『ドラゴンボールGT』の終盤や『ドラゴンボール超』アニメ版の並行世界では、それが少しずつ崩れました。
 しかし、それぞれ描写に限界がありました。

タイムトラベルに関するパターナリズム

 そして、『ドラゴンボール超』のパターナリズムの原因には独特の「カオス」があります。その1つは、タイムトラベルの罪悪感です。
 まず、『ドラゴンボール超』では、人命を軽んじる破壊神や全王などの神によるパターナルな部分があります。
 破壊神は気分で生命体を「あの世に行けない」ように魂ごと「破壊」をします。それは、孫悟空に「物騒」、「おっかねえ」と言われています。全王はその破壊神も含めて「消滅」させられます。
 しかし、その能力はむしろ、『ドラゴンボール』原作や『ドラゴンボールZ』で死者を裁く閻魔大王より格上の神々や、悟空などの戦士があの世で特別扱いされたり、死んでもあの世で活動したりする安心感を防ぐ部分があると私は推測しました。



2022年2月28日閲覧


 破壊神ビルスは周りを振り回す身勝手なところがありますが、「死んでもあの世で変わらず暮らせる」悟空や神々を「破壊」で圧倒したり、「自分より弱い相手を滅ぼす戦闘を楽しみながら、破壊神には従うサイヤ人」を「肝心なところでへたれるからむかつく」と言ったり、強さで食事を独占しようとする魔人ブウに「それがお前の理屈か」とさらなる強さを見せつけたりと、相手の無神経さや身勝手さ、配慮の足りないところを突いて露悪的に罰しているとも言えます。
 つまり、ビルスなりの善悪観で強引に支配している、パターナルな部分があります。

 たとえビルスが魔人ブウやベジータや悟空に善意を持っていなくても、「こいつが自分自身より弱い相手を振り回すなら、さらに強い自分がこいつを振り回すのは同じ理屈だ」というビルスなりの善悪観を持っている可能性はあります。
 ビルスが人間や格下の神々を強引に支配したのも、ある意味ではその神々や悟空が地球人にしたのに通じるところがあるとも言えます。パターナリズムにさらなるパターナリズムが加わっています。
 そしてビルスは、未来のトランクスが本来善意で過去にタイムトラベルして歴史を分岐させたことを、付き人の天使のウイスと共に注意しました。
 実際に、トランクスが人造人間17号と18号に対処するためにタイムトラベルしたのは、別の人造人間19号と20号による犠牲者が出たこと、命の助かった戦士がのちに魔人ブウのエネルギー源になったこと、生き延びた悟空が界王ザマスに乗っ取られたことなどの悪影響をもたらしました。
 最終的には、未来のトランクスにとって「元の未来」である並行世界が全王に消されました。
 「塞翁が馬」により、ハイリスクハイリターンな変化をもたらしています。

カオスにプラスとマイナスの影響を抑える

 環境問題について、温暖化が良い影響をもたらす可能性があるとしても、その影響がプラスかマイナスか予測出来ない綱渡りになるならば、現状を維持すべきだとする「予防措置原則」という概念を池内了氏が挙げています。
 『ドラゴンボール超』は、たとえ始まりが善意でも、歴史を変えるのは、プラスとマイナスの影響を予測出来ないので防ごうという概念があります。
 それに逆らうのは、ハイリスクハイリターンな、際限のない被害をもたらす可能性があります。
 負と正のフィードバックの概念から考えますと、プラスがマイナスに転じるのは一見負のフィードバックが働きバランスを保つようでありながら、被害の絶対値が増える正のフィードバックがあります。
 あえて際限のない被害を起こす、ハイリスクハイリターンな「悪意」を持つ悪役もいます。それが『銀魂』の虚などです。


 「状況がカオスで、無力だとほとんど確定している一般人は悟空達の指示に従うべきだ」というパターナルな論理が、「状況がカオスなのだから、トランクスも歴史を変えるべきではなかった、ビルスに罰せられるべきだ」になるとも言えます。
 また、未来のトランクスが自分の未来の消滅する前の並行世界を生み出して帰ったあと、全王に関わろうとする悟空に関してビルスは、「お前の無邪気さも、宇宙にとって危険と言える」として破壊を検討しました。

グノーシス主義の「無知な創造」


 そして、私がタイムトラベルなども踏まえて重視するのは、グノーシス主義です。
 これは「この世に悪があるのは、至高の世界から誤って産み落とされた無知な神が物質の世界を創造したためであり、人間は内部に秘められた神の性質を認識することで救われる」という思想で、キリスト教で異端とされています。
 私が考える限り、タイムトラベルで並行世界が生まれる場合、それは世界にどのような影響が及ぶか予測し切れないまま変化させる「世界の無知な創造」であり、グノーシス主義に繋がると考えます。
 『ウルトラマンZ』もそのような展開になるのではないか、と私は推測しています。


2022年2月28日閲覧

 そして、『ドラゴンボール超』では、無知な並行世界の誕生が世界全体を揺るがしてしまう危険性があります。
 それは『ドラゴンボール』特有の予定調和の少ないカオスと、神々が自分なりの善悪観で強引な独断をするパターナリズムによって批判されます。
 さらに、『JIN-仁-』では、タイムスリップにより個人が世界を変えてしまい、善意、悪意を問わずに影響を及ぼして取り返しの付かなくなる部分があります。
 他の日曜劇場でも、『テセウスの船』では過去にタイムスリップした主人公が父親の冤罪を防ごうとしたものの、一度未来に帰ったところ冤罪は別の形で実現し、自分の家庭すら消滅していたという別の悪影響が発生しました。

ベルトコンベアを妨害する危険性

 さらに、そこにはベルトコンベアのような、あるルールや動きに個人の無知な変化が加わり、多くの人間に害をなしてしまう可能性があります。
 ベルトコンベアは無知な人間が分割された作業を協働で行い、周りに合わせる善意の連鎖を起こすものの、その共通の目的に悪い部分があっても止められない悪行の連鎖も起こす危険性があると記しました。





2022年2月28日閲覧


 『天国と地獄~サイコな2人~』では、周りの刑事と同調出来ない女性刑事の望月が、孤立して手柄を挙げようと単独行動を取った末に、容疑者と体が入れ替わるというSFの状況に追い込まれ、容疑者に振り回されたり部下を振り回したりを繰り返します。
 しかし、その容疑者にも隠れた事情があり、真犯人と自分が「際限なく間違っていくのをあなたに何とかしてもらうために入れ替わったのかもしれない」と最後に話しました。
 その真犯人と望月は、それぞれ社会的に孤立して周りと協力し合えない、抵抗するときに残忍になってしまう、ベルトコンベアに逆らうような部分がある程度共通していました。
 ベルトコンベアに逆らうのは、「際限のない間違い」を生むとみなされるのかもしれません。

 しかしその恐怖が、ベルトコンベア自体に悪い部分があっても止められずに放任するリスクも生みます。

大き過ぎて償えない罪

 小林泰三さんの『予め決定されている明日』では、異次元から三次元の仮想世界を計算する仕事をさせられる人物が主人公です。
 その仕事に辟易とした主人公は、三次元の高性能な計算機で楽をするために、計算に手を加え仮想世界を変化させて、住人と取引をしました。
 しかし、それは主人公が楽をした分の計算を三次元の計算機で行うため、異次元の誰かが肩代わりしたに過ぎず、さらに恐ろしい結果が待っていました。
 異次元の計算はあくまで最初から決まっている仮想世界の結果を導き出すものであり、主人公が計算を変化させたことで、計算問題そのものが変質し、新しい世界が生まれて取り返しが付かなくなってしまったのです。
 それはベルトコンベアを止めるような、僅かな変化で全体にマイナスの影響をもたらすものでした。経済学にも通じるものがあると私は認識しています。
 主人公は「あまりに罪が重過ぎて償えない」と言われ、自分のもたらした結果を嘆きました。
 『JIN』、『テセウスの船』のタイムスリップ、『サイコな2人』の孤立などは、グノーシス主義における、無知な世界の創造にも繋がると考えます。
 それは現実のカオスが招くものです。
 さらに、社会から孤立する人物に「お前がこうして周りに逆らうことは、たとえ善意があったとしても、結局はお前にとってもマイナスの影響をもたらして後悔することになる。だから逆らうな。それがお前のためでもある」と従わせる「善意も含む支配」、つまりパターナリズムも見受けられます。
 『JIN』や『テセウスの船』の主人公の歴史を変えた後悔、『サイコな2人』の主人公が批判されることなどに繋がります。


まとめ


 カオス理論、パターナリズム、リスクとリターン、グノーシス主義が、ベルトコンベアのような現実の機構と繋がり、「世界を変える恐怖」をもたらすようです。

 これらは、数学、論理学、倫理、宗教、哲学、政治学、経済学などを繋げて説明出来るかもしれません。

参考にした物語

漫画
鳥山明,1985-1995(発行期間),『ドラゴンボール』,集英社(出版社)
鳥山明(原作),とよたろう(作画),2016-(発行期間,未完),『ドラゴンボール超』,集英社(出版社)
空知英秋,2004-2019(発行期間),『銀魂』,集英社(出版社)

テレビアニメ
清水賢治(フジテレビプロデューサー),松井亜弥ほか(脚本),西尾大介(シリーズディレクター),小山高生(シリーズ構成),鳥山明(原作),1989-1996,『ドラゴンボールZ』,フジテレビ系列(放映局)
金田耕司ほか(プロデューサー),葛西治(シリーズディレクター),宮原直樹ほか(総作画監督),松井亜弥ほか(脚本),鳥山明(原作),1996 -1997(放映期間),『ドラゴンボールGT』,フジテレビ系列(放映局)
大野勉ほか(作画監督),冨岡淳広ほか(脚本),畑野森生ほか(シリーズディレクター),鳥山明(原作),2015-2018,『ドラゴンボール超』,フジテレビ系列(放映局)

特撮テレビドラマ
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020(放映期間),『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)


小説
小林泰三,2003,『目を擦る女』,ハヤカワ文庫(『予め決定されている明日』)

テレビドラマ
村上もとか(原作),石丸彰彦ほか(プロデュース),森下佳子(脚本),2009,『JIN-仁-』,TBS系列(放映局)
村上もとか(原作),石丸彰彦ほか(プロデュース),森下佳子(脚本),2011, 『JIN-仁- 完結編』,TBS系列(放映局)
東元俊哉(原作),渡辺良介ほか(プロデューサー),高橋麻紀(脚本),2020,『テセウスの船』,TBS系列(放映局)
中島啓介(プロデュース),平川雄一朗ほか(演出),森下佳子(脚本),2021,『天国と地獄~サイコな2人~』,TBS系列


参考文献

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伊勢武史,2012,『「地球システム」を科学する』,ベレ出版
現代位相研究所/編,堀内進之介ほか/著,2012,『統治・自律・民主主義 パターナリズムの政治社会学』,NTT出版
沢登俊雄/編著,1997,『現代社会とパターナリズム』,ゆみる出版
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藤巻一保,2009,『世界の天使と悪魔 図解雑学 絵と文章でわかりやすい!』,ナツメ社
林道義,1980,2007,『ユング 人と思想59』,清水書院
真野隆也,1995,『天使』,新紀元社
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著者/J.ブリッグス+F.D.ピート,訳者/高安美佐子+山岸美枝子,2000,『バタフライパワー-カオスは創造性の源だ―』,ダイヤモンド社
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丹波敏雄,1999,『数学は世界を解明できるか:カオスと予定調和』,中公新書
米沢富美子,1995,『複雑さを科学する』,岩波書店
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池上彰,2013,『これからの日本、経済より大切なこと』,飛鳥新社
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池上彰,佐藤優,2015,a『大世界史 現代を生き抜く最強の教科書』,文春新書
池上彰,佐藤優,2015,b,『希望の資本論 私たちは資本主義の限界にどう向き合うか』,朝日新聞出版
カール・マルクス(著),今村仁司ほか(訳),2005,『資本論 第1巻 上』,筑摩書房
カール・マルクス(著),今村仁司ほか(訳),2005,『資本論 第1巻 下』,筑摩書房
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斎藤幸平,2021,『NHK 100分de名著 カール・マルクス『資本論』』,NHK出版
佐藤優,2014,『いま生きる「資本論」』,新潮社
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