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シベリア鉄道に乗ってロシア大陸を横断し、いろんな街でいろんな人に話を聞いて回るプロジェ…

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シベリア鉄道に乗ってロシア大陸を横断し、いろんな街でいろんな人に話を聞いて回るプロジェクト「Место47」の日本語版を担当しています。ロシアの芸術の都サンクトペテルブルクに住んでいます。

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プーチンのそっくりさんとして生きること

シベリア鉄道でロシアを周り、さまざまな人の物語を集めるプロジェクトМесто47。記念すべき最初のストーリーは、プーチンのそっくりさんとして生計を立てる男性のお話です。モスクワの中心地、赤の広場で観光客を相手にする彼は、長年ある葛藤を抱えていました。 ========= 出身はシベリアのノボシビルスクです。20年くらい毛皮販売のビジネスをやってきました。ある日のことです。友達と食事をしていた時、彼女の息子がテレビの映像に釘付けになっていました。 「ママ!あれワーシャおじ

    • なぜ僕はここにいるんだろう(ロシア語翻訳記事)

      ロシアでは現在、政治活動家のナワリヌイ氏の釈放を求めるデモが全国で行われており、残念ながら政権側はそれを力で抑え込む構えを見せています。目の前で警察によってアスファルトに叩きつけられる若者を目にした時の、むき出しの暴力に対する恐怖と悲しみは、言葉を尽くしたところで表現するのは難しいでしょう。それに日本に住むみなさんにとっては遠すぎる出来事であることも十分理解しています。この国に住む一人の人間として自分に何ができるだろうと考えた結果、新聞で見かけたある記事の翻訳を載せることにし

      • 引き寄せの法則でとんでもないものが飛んできた話

        引き寄せの法則と書いといて、引き寄せの法則の話ではない可能性があります。あることについてなんとなしに思ってたら、それがイチローのレーザービームばりにピンポイントで自分に飛んできた話です。 僕は少し前から音声配信をやりたいなと思っていました。最近スタンドエフエムみたいに誰でも簡単に音声配信ができるプラットフォームがでてきて、音声配信のハードルが下がってきたのもあります。 僕はもともとオーディオブックやポッドキャストのような音声メディアが大好きでした。僕の一番好きなプログラム

        • 不正警官に松葉杖を投げつけ叫んだ祖母

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の個人的な物語を集めるプロジェクトМесто47。今年最後のエピソードは、自動車事故に巻き込まれて生死の境をさまよった挙句、警察から嘘の証言を強要されるなどで、心に深い傷を負った女性の話です。2000年代初頭ロシアはプーチン大統領が就任し、経済がどん底から回復していく初期段階にありました。しかしソ連の崩壊の影響による混沌とした状況は、依然として市民生活の至るところに顔を出していました。 ========= それは2002年の1

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        • ロシアに住まう
          3本
        • シベリア鉄道に乗ってロシアをぐるり
          16本

        記事

          美術館から追い出された話

          えーと、みなさんは美術館って行きますか?僕は割と好きで、特に外国を旅行した時なんかはよくその場所にある美術館に行ったりします。地元のあんまり大きくない美術館とかだと、ローカルの作家の作品がメインであることが多いので、その作品から国民性みたいなものがうかがえたりしてけっこう楽しいです。 ちなみに、僕が今住んでいるロシアはサンクトペテルブルクにもたくさんの美術館があります。特に有名なのはエルミタージュ美術館でしょう。もとはエカテリーナ2世が建てて、皇帝一家の邸宅だったわけですか

          美術館から追い出された話

          ルカシェンコ大統領に手紙を書いたら返事がきた話

          えーと、みなさんはルカシェンコさんってどなたかご存知でしょうか。 今、平和的なデモを徹底的に弾圧して、世界を騒がしているベラルーシの大統領ですね。強権的な統治スタイルで「欧州最後の独裁者」とか、ソ連時代を彷彿とさせるような言動で「ジャガイモ大統領」とかいうあだ名を与えられ、ロシアのプーチンさんを嫉妬させる勢いで、欧米各国からはひんしゅくを買いまくってる御仁です。で、今日はそんなルカシェンコさんのお話です。 5,6年くらい前だったと思いますが、僕は当時ロシアにある小さなコンサ

          ルカシェンコ大統領に手紙を書いたら返事がきた話

          コップに注がれた海水を飲み干した私 Z世代のロシア青年水兵のストーリー

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の個人的な物語を集めるプロジェクトМесто47。今回はある青年水兵の物語です。祖父から戦争の話を聞いて育ち、愛国的な教育を受けた少年は、成長して海軍の水兵となりました。若くして国に命をささげる覚悟があると語る彼にも、人生のパートナー選びに頭を悩ませるような青年らしい面が見え隠れします。将来のロシアを担う青年水兵は今何を思うのでしょうか。 ========= アンドレイ 21歳 水兵 極東、ウラジオストク 小さい時から母と二

          コップに注がれた海水を飲み干した私 Z世代のロシア青年水兵のストーリー

          ロシアで女性警察官として生きること シベリア鉄道で出会った女性の物語

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回の主人公は、シベリアを抜け極東へ走る電車の中で出会った元女性警察官です。警察官として日々犯罪者と向き合ってきた彼女の話からは、ロシア社会の暗部が見えてきます。そんな中で、犯罪を犯してしまう弱い人々に対して、彼女の眼差しは厳しくも優しさを湛えています。 強い意志を持って現代を生きる一人の女性の物語です。 ========= ビクトリア 42歳 クラスノヤルスク この仕事は冗談の一つでも

          ロシアで女性警察官として生きること シベリア鉄道で出会った女性の物語

          ポーカープレイヤーから動物生理学者へ あるロシア人男性の物語

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回はある男性ポーカープレイヤーの話です。純粋にプレイ楽しむことからスタートした彼は、いつの間にかプロのポーカープレイヤーとして大金を稼ぐようになっていました。ところが外面的な成功とは裏腹に、彼の生活は荒んだものとなっていきます。そして彼にとって決定的な瞬間が訪れました。 ========= 最初は趣味でやってたんです。ただプレイするのが楽しくて。 初めて3千ルーブル勝った時に、これ一本でや

          ポーカープレイヤーから動物生理学者へ あるロシア人男性の物語

          コインコレクターの物語 コインが私に語りかけるもの

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回はモスクワの赤の広場で出会ったコインコレクターの男性のお話です。ヴィタリーは子供の時に砂場で偶然見つけた古コインに魅せられ、それ以来コインを集めてきました。彼は古いコインを手に取り、その持ち主たちに思いを馳せます。そうすることで彼は「何か」に触れることができると言います。 ========= ヴィタリー、42歳 住んでるのはモスクワの郊外のレウトフ。古いコインを集めてるんだ。一番最初

          コインコレクターの物語 コインが私に語りかけるもの

          女子二人でロシアをヒッチハイクで横断してみた話

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回はヒッチハイクをしてロシアを旅する二人の女の子の話です。彼らの旅の途中では、時に元受刑者から刑務所の様子を聞き、時に12トントラックの運転席に座り、豪雨の中を暴走する車の中で震え、眠れぬ夜を警察署で過ごしたりもしました。広大なロシアの大地をあえてヒッチハイクで移動する彼女たちの旅は、さまざまな人との出会いであふれています。 ========= 私たちはヒッチハイカーよ。普段は建築資材と

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          KFCのポテトの着ぐるみの中で僕の見ている夢

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回は途中下車した街で出会った青年の話です。KFCのポテトの着ぐるみを来て街中でチラシを配る大学生のオレグは、幼いころから家計を支えるために働いてきました。大学生になった今もバイトに追われ、大学の授業を受けるのもままならない状態です。そんな彼にはかなえたい夢がありました。 ========= オレグ、18歳、エカテリンブルク 出身はトムスクのアレクサンドル村。家は貧乏子だくさんで12の時

          KFCのポテトの着ぐるみの中で僕の見ている夢

          あるロシア人の母親の物語 親に棄てられた私が難聴の子供を授かった意味

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回は列車の中で出会ったある女性の話です。母親である彼女は幼いころ両親のネグレクト(育児放棄)にあい、施設で育ちました。自らも一児の母親となった彼女は、経済的な困難を抱えつつも難聴を抱える我が子と日々向き合っています。他人の数倍は困難な人生を歩んできただろう彼女の口からは、しかし、世間への恨み言ひとつも出ることはありません。 彼女は愛する我が子のため、すべてを捧げると心に決めています。 ==

          あるロシア人の母親の物語 親に棄てられた私が難聴の子供を授かった意味

          家継ぐ人々 ロシア ミレニアル世代の幸せの在り方

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。前回から三回に渡り「家継ぐ人々」と題して、家をめぐる様ざまな人々の話をご紹介しています。今回の主人公であるアレクセイは、ロシアの地方都市カザンに住むごく普通の青年です。祖父母の代からの家を引き継ぎ、Airbnbで貸し出すためにこつこつと修理をしています。そんな彼は「幸せ」になるために日々試行錯誤を繰り返し、その不器用とも言える姿には、日本の若者にも通じるような普遍的な苦しみが垣間見えます。 「

          家継ぐ人々 ロシア ミレニアル世代の幸せの在り方

          家継ぐ人々 築120年ロシアの古民家に私が住む理由

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろんな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回から三回に渡り「家継ぐ人々」と題して、家をめぐる様ざまな人々の話をご紹介します。ロシアは日本と異なり、古い建物を取り壊して立て直すということを滅多にしません。丁寧に修復保全を行い、歴史ある建物群を保護しています。住民としては不便なことは多々ありつつも、それを許容する文化がロシアには根付いています。しかし、そのような考えに反するような動きも地方ではあるようです。今回のお話の主人公であるコンスタ

          家継ぐ人々 築120年ロシアの古民家に私が住む理由

          レース編み職人として、ロシア人女性として

          シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろんな人の話を聞くプロジェクトМесто47。第五回目は、まるで中世の世界から飛び出してきたようなレース編み職人の女性の話です。自らの家庭を家父長制の典型だという彼女は、夫の許可なしで家を空けることはありません。しかし、彼女にとってそれは当たり前のことであり、彼女は幸せな結婚生活を送っていると言います。レースを編み、信仰を持ち、夫のために尽くす。彼女の話からロシア地方都市の保守派の人々のありようが見えてきます。 ========= アンナ

          レース編み職人として、ロシア人女性として