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女子二人でロシアをヒッチハイクで横断してみた話

シベリア鉄道に乗ってロシアを周り、いろいろな人の話を聞くプロジェクトМесто47。今回はヒッチハイクをしてロシアを旅する二人の女の子の話です。彼らの旅の途中では、時に元受刑者から刑務所の様子を聞き、時に12トントラックの運転席に座り、豪雨の中を暴走する車の中で震え、眠れぬ夜を警察署で過ごしたりもしました。広大なロシアの大地をあえてヒッチハイクで移動する彼女たちの旅は、さまざまな人との出会いであふれています。

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私たちはヒッチハイカーよ。普段は建築資材とドア販売の会社で働いてて、その間は旅のために節約してる。それで夏に旅立つわけ。上司はもちろんいい顔はしないわよ。夏は一番の稼ぎ時だし。

人生でどんな選択もできるわ。私たちは旅をするっていう選択をしたの。だって、オフィスでパソコンの前に座ってるよりはいいもの。

友達がロシアを5年かけてヒッチハイクで旅したのに影響されたの。私たちも試しに10日間の旅に出てみて、それでやみつきになっちゃった。最初は自分の住んでるアルタイ地方を周ってみた。去年はクリミア半島までヒッチハイクで行ったわ。バルナウルからノボシビルスクまでの4500kmは6日間かけて旅した。その後クリミア半島の周りをヒッチハイクして見て周った。黒海とアゾフ海の沿岸の辺りね。今はバルナウルからウラジオストクに向けて旅の途中なの。もう一月以上旅してる。

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幹線道路から近いルートを通るようにしてる。そうすると先に進みたいと思った時にすぐに車もつかまえられるし。全ての旅程は予め考えてるわ。最初にルートを設定して、それで何日くらいでいけそうか計算するわけ。旅の途中で地元の人にどこかおもしろい場所がないか聞いてみて、気になったらそこに行ってみるの。基本的に街へ行くことは少ないわ。街より自然を見る方がいいの。寝るところはカウチサーフィン(編注:宿泊先を探す旅人と、 無料で場所を提供する現地の人とを結ぶSNSサービス)で確保してる。

ドライバーは親切な人たちよ。「もし俺が止まらなかったら、きっと二人ともこの先ずっと徒歩で行くことになったよ」ってみんな言うの。でも実際には路上に出て割とすぐに乗せてくれる車が見つかって移動できる。時々わたしたちのうちどちらか一人なら乗せてもいいって言う人がいるけど、別れて行動するのは危険よね。

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ドライバーはいろいろと面白い話をしてくれる。一度イルクーツクを旅して周っていた時のことなんだけど、いつも通り車が一台止まってくれて「私はオリャ」「ジェニャよ」「俺はアレクセイ。じゃあ行くか」って言って出発したの。しばらくすると、彼は刑務所の人間について話始めた。それから私たちの方を見て「俺も3回くらい塀の中に入ったよ」って言ったの。たぶん私たちが怖がって車から飛び出して逃げ出すと思ったんじゃないかしら。でも私たちは彼にいろいろ質問したの。8時間のドライブで、彼はいろいろ教えてくれたわ。配給されるパンで何が作れるか、居房での正しい振舞い方とか、正しいチフリ(編注:ソ連時代の強制収容所で囚人が作っていた濃い紅茶)の作り方とか。

一度だけど警察署で夜を過ごしたこともあった。アルタイ共和国のテレツコイェ湖まで行った時のことなんだけど。運転手がサイドブレーキをかけ忘れて車を離れてしまって。車はそのまま湖に向かって行って屋根の部分まで水に浸かったわ。お金もパスポートも車の中だった。車が気泡を立てながら沈んで行くのを見てた。映画みたいだった。それから、まずトラクターを呼んで引き上げようとしたんだけどダメだった。次にシシガ(編注:ソ連時代に開発された四輪駆動車。軍用車としても使われる)を呼んだの。結局地元の警察署の人たちが同情して警察署まで連れて行って、そこで署員用の部屋をあてがってくれた。毛布と紅茶を用意してくれて暖まることができたの。

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こんなこともあった。車に乗せてもらえたのは良かったんだけど、その時はバケツをひっくり返したような大雨で、フロントガラスのワイパーは動いてなかった。そんな中を車は時速100キロ以上で走っていく。ドライバーは「見てくれよ!こんな走りができるなんてすげえだろ!」って。大音量で音楽をかけてて、その振動で窓ガラスの水滴が散るくらいだった。彼は対向車のライトだけを手がかりにして運転してたの。ものすごく怖かった。幸運だったのはその土砂降りが長く続かなかったことね。

ピャチゴルスクから来た長距離トラックに拾ってもらったことがあった。サマラで乗せてもらってオムスクまで3日間の旅ね。運転席の後ろのキャビンで寝かせてもらったわ。その時に運転席でハンドルを握らせてもらったの。ようするに12メートルある20トントラックを運転させてもらったってこと。私たちは普通車の運転免許しか持ってないのにね。

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バックパックの中身は、寝袋に靴下、下着にTシャツ、パンツにショートパンツ、あとは飯ごうに食材、生理用品に救急箱くらいかな。

ヒッチハイクの旅っていうのは、完全に自発的な旅行なの。どんなリスクがあるのか判断しないといけない。だって誰かが「今日のうちに1000km進めますよ」なんて保証してくれるわけじゃないし。旅は、日々出会う人たちと物語であふれてるの。自分で運転したり電車で移動するんだったら黙っててもいいけど、ヒッチハイクの場合はおしゃべりしないわけにはいかないでしょ。それでたくさん新しいことを学べる。出会った人の人生の一ページに自分っていう足跡を残すことになるのよ。もちろんその逆も然りよね。ネットでなんか見つかんないような場所よ。私たちは旅の途中は24時間一緒に居て、それでお互いからエネルギーをもらってる感じ。お互いを理解するのに言葉はいらないの。

旅の途中でロシアの地方のいろんな民族の人たちと出会って、それで自分の国に愛着を持つようになった。私たちは必ずしも海外に出る必要はないの。だって、こんなに大きな国でこんなにたくさん素敵な場所があるんだもの。世界中探してもこんな国ないわ。時間と思いさえあればそれを目にすることができる。時々、些細なことに美しさって見つけることができるって思うの。バルグジンで見たような夕焼けは他のどこでも見られないと思う。鮮やかなオレンジ色の太陽、冷たくて青い水。タタールスタンの入り江みたいな温かい海もきっと他では見つけられない。

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もう2ヵ月旅をしてるから、そろそろ家に帰りたい。お気に入りのソファで寝転んで、大好きな猫を抱っこして。次はタイに行きたいと思ってる。アジアの南の方を周るの。タイ、カンボジア、ラオスって。

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