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栄養食事療法№9 骨粗鬆症(こつそしょう症)編 男女共に若い時から強い骨を育てよう

骨粗鬆症と言えば、高齢女性の病気と認識されています。
しかし、男性も年齢と共に骨密度が減少し、骨粗鬆症のリスクがあります。

女性は閉経をきっかけに急激に骨密度が低下しますが、男性は30代をピークに50代からゆっくりと15年程かけて低下していきます。
特に、過剰な飲酒、喫煙、内科的疾患が関係しているとわかっています。

「自分には関係ない」と思わずに、男女共に若い時から骨を強くしておくことは、健康長寿のためにも必要だと思います。

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〇骨粗鬆症とは

長年の生活習慣や加齢によって骨量の減少、骨密度の低下、骨質の異常が生じて、骨がスカスカにもろくなり骨折しやすくなった状態をいいます。

初期の頃は、腰や背中に痛みがあり医療機関に受診すると「圧迫骨折」と診断されることがあります。

重大なのは、骨折が原因で寝たきりになることです。

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骨粗鬆症の原因は、加齢や閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の減少によることが知られています。

しかし、高齢の女性ばかりではありません。

最近のように自粛生活が長引くことで、男女共に栄養や運動が不足し、筋肉量の低下とともに骨の強度の低下が危惧されます。

今は問題がなくても、数年後に影響が出てくるともいわれています。

早めの対策が必要です。

〇骨のために意識したい三つのこと

① 骨を強くする食事をする(カルシウムを十分にとる)
② 日光浴でカルシウムの吸収をよくする(体にビタミンDを作る)
③ 運動で骨を強くする細胞を活発にする

今回は、栄養と食事を中心にお話を進めていきます。

〇骨を強くする食事

〔カルシウムの摂取〕
骨組織の維持のため、特にカルシウムを意識して十分にとる必要があります。
また、他の栄養素が不足しても骨密度低下につながるため、エネルギーをはじめ栄養バランスの良い食事摂取が重要です。

現在、日本人のカルシウム摂取の推奨量(厚生労働省日本人の食事摂取基準2020:健康でいられるための基準)は、成人男性で1日750~800㎎、女性で650㎎としています。

しかし、国民健康・栄養調査(2019)の結果を見ると、カルシウム摂取量は成人男性で460~580㎎、女性で400~570㎎でした。
カルシウムの推奨量を大幅に下回っており、骨粗鬆症や骨折予防のためには相当不足していると言えます。

日頃から、カルシウムを多く含む食品を積極的に食べるようにしなければならないと考えます。

カルシウムを多く含む食品には、乳製品や大豆製品、小魚、海藻等があります。意識して毎日の料理に取り入れます。

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カルシウムの吸収についても理解しておきましょう

乳製品のカルシウムは、他の食品のカルシウムよりも吸収率が高いため、牛乳やヨーグルトは少なくとも1日に200~300g補給し、カルシウムとビタミンが強化された乳製品を選ぶとさらに良いです。

乳製品より吸収率は低いのですが、小魚、豆腐、緑黄色野菜にもカルシウムが含まれます。中でも、骨ごと食べられる小魚はカルシウム摂取に適しています。
ただし、小魚の佃煮類は、塩分が多く内臓を含むためコレステロールも多いので過食は控えましょう。

一方、通常1日のカルシウムは野菜からも約1/5を摂取していますが、小食や食欲のない人で野菜が少ない場合は不足しがちです。
こうした人は、野菜を1日300g程度(両手の平に一杯)に加えてカルシウムを含んだ治療用食品やサプリメントで補う検討も必要と考えます。

すでに、骨粗鬆症と診断され治療中の方は、カルシウムが700~1000㎎は必要ですので、主治医や、管理栄養士、薬剤師にご相談の上、カルシウム強化食品やサプリメントを活用しましょう。
ただし、過剰摂取は問題になるので、サプリメントでは1回500㎎以上摂取しないように気をつけなければなりません。

しかし、カルシウムだけ気をつけていればよいというわけではありません。

〔ビタミンD〕
カルシウムの吸収には骨が沈着するために必要なビタミンDを不足なくとる必要があります。
ビタミンDは、魚類、卵、きのこ類等に含まれます。魚と卵に大半を依存していますので、これらが嫌い又は食べない人は不足していることがあります。
ただし、日光に当たることで体内につくられるので、大きく心配する必要はありません。

また、カルシウムとビタミンDを同時にとると、腸でのカルシムの吸収が効率的に高まり、骨密度の上昇や骨折予防に期待が持てます。
魚を牛乳で煮る料理、例えば魚介のグラタンやシチュー、クリーム煮等がおすすめです。

〔ビタミンK〕
骨量増加作用があるビタミンKも不足なくとる必要があります。
ビタミンKは納豆に含まれていますので納豆をよく食べる人は不足しません。
また、ほうれん草や小松菜等の緑黄色野菜にも含まれていますので、毎日、野菜を食べるだけでも充足できます。

これらのように、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素は、普段注意することが少ないですが、意識して食事に取り入れることが大切です。

〔カルシウムの阻害と排泄の促進〕
カルシウムの吸収を阻害する物質にはリンがあります。
リンは、スナック菓子やインスタント食品等の加工食品の添加物にリン酸塩として含まれています。
リン酸塩は、尿中へのカルシウムの排泄を増すので注意しましょう。

また、アルコール飲料やカフェイン飲料は、カルシウムの尿中排泄を促進するため、過飲しないことが望まれます。

〔たんぱく質〕
骨折の予防のためには、筋肉の減少を防ぐことも大切です。
たんぱく質性食品である肉、魚、卵、大豆製品等は毎日意識して食べます。
小食の人は、1品のおかずにたんぱく質性食品を2種類組み合わせて食べると、豊富にとれます。
例えば、納豆に卵を加える、鶏肉入り茶碗蒸し、豆腐の蟹あんかけ等です。

〇日光浴でビタミンD 

カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、日光を浴びて紫外線に触れると皮膚で合成されます。
30分から1時間程度日光浴をすることで骨の健康に役立ちます。

高齢者ばかりでなく、自粛でお家時間が長くなると、外出の機会が減って、日光を浴びることが減少するため、ビタミンDの不足が心配されます。

人混みへの外出は避けつつ、日当たりの良い場所で散歩をすることは必要です。

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〇運動で骨を強くする

骨は、負荷がかかるほど骨を作る細胞が活発になり、強くなる性質があります。
散歩や階段の昇降、手すりにつかまってかかと落し等の軽い運動を日常生活に取り入れることは良いと言われています。

運動は体の筋肉を鍛えるだけでなく、同時に身のこなしが良くなり、転倒や骨折の予防にもつながります。

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〇献立作成の時にカルシウム量が不足しやすい

noteの記事で、前回までにヘルシー献立を数日間提案しました。
改めてカルシウム量を見ると、1日平均650㎎でした。成人男性1日の推奨量750~800㎎にはとどかず、不足していました。

ヘルシー献立作成時に、エネルギー量やたんぱく質量、塩分量等に加え料理の美味しさを求めると、カルシウム量を充実させることは、なかなか困難なのです。

骨粗鬆症を起点に献立を作成する場合は、カルシウム量の多い食材の使用と、カルシウム強化食品の活用は重要な視点と考えます。

私も、できることからやっています。
本日もありがとうございました。

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