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母親は留学したらと言うけれど。

大学生になった頃くらいから母親は留学したらと言ってくる。コロナ禍になってからは言われないけれど、それまでは時々言われていた。確かに留学したらしたで得られるものはあるんだろうけど、少し納得できないことがある。

僕は心の底から留学したいというよりも、日常生活の中で抱いた好奇心を大切にしたい人間らしい。だから本当にやりたいと思ったら自分でもびっくりするくらいワクワクする。

でも母親は僕の好奇心を尊重してくれない。

例えば姪っ子が生まれた時。

高校3年生の秋ごろに姪っ子が生まれて、受験生なのにも関わらず学校から帰った後は毎回1時間くらい姪っ子を抱っこしていた。だけどそれは親が帰ってくるまでの話。

まず母親の車が見えた瞬間に姪っ子をベビーベッドに寝かせて、部屋に入りあたかも勉強してました風の感じになるように工作をする。そして親が家の中に上がってしばらく経ったであろうタイミングを見計らって、あたかもちょっと休憩するためにリビングに来ました感を出す。そのついでに姪っ子を見る。

こんなことをよくやっていた。

母親は「勉強しろ!」だけしか言わない人だったので、勉強せずに姪っ子の世話をしている様子なんか見られたら間違いなく逆鱗に触れる。そもそも高3の時は口を開けば衝突してばかりだったけど。

だからその逆鱗に触れないように勉強してます感を出しつつ、かつ姪っ子の世話をするという生活を送っていた。

でも赤ちゃんが家に居たらそりゃ好奇心が湧いてくる。泣いてる時とかは何で泣いてるのか考えていろいろ試してみたり、どうやったら寝かしつけられるのかとか考えたりするの結構楽しかった。

だから今思うとその好奇心が満たされるなら、もし大学に落ちてもそれはそれでよかった。赤ちゃんのお世話の仕方なんて大学じゃ学べないことだから。

これ以外にも好奇心を損なわれたことがある。

数年前の夏に姉の友達が遊びに来てBBQをすることになった。昼は川に遊びに行って夜BBQをすることになっていたけど、僕は1人で家に居た。だから姉たちが帰ってくる前に火おこしをしようと思って準備していたら、母親が帰宅。

案の定母親は僕の好奇心をつぶしてくる。

これまで家族でBBQをしたり、姉の友達がBBQをしに来たり、親戚で集まってBBQをすることもあった。だけど火おこしはいつも父親がやっていて、僕がやることといったら内輪で仰ぐか火が大きくなりすぎないように見とくくらい。

だからその日初めて火おこしが出来る!と思ってすごく楽しみにしていた。しかも最初から紙袋の中に炭が入っていて、袋に火を移すだけで勝手に着火してくれる優れもの。

何でそれだけで火が付くのかとても気になってこの目で確かめたかったのに、「眼鏡は変だからコンタクトをつけろ」という母親の一言でその願いは叶わなかった。

眼鏡かコンタクトかなんてどうでもよくて、別に姉の友達に変だと思われるのもどうでもよくて、ただ自分の手で火おこしをしたかっただけなのにその好奇心は一瞬で削がれた。

その時はかなりテンションが低くなったのを覚えている。

小さい子供が駄々をこねてそれを遮るのは分かるけど、いい年したほとんどのことは自分でできる人間がやろうとするのを遮る理由は無いはず。だけど母親は平気で遮ってくる。

だから日常の中にある好奇心を遮ってくる人に留学したらと言われても、「よし留学しよう!」という風には思わない。別に留学の費用は出さなくてもいいから、息子の意思や好奇心を尊重してくれればそれだけでいい。

日常の中にあるほんのわずかな好奇心を。

大きなお金を使わずともそれだけで勝手に満足するから。

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