inaba fjord

在宅系旅人。教育活動家。30代後半にして約2歳児の父。

inaba fjord

在宅系旅人。教育活動家。30代後半にして約2歳児の父。

マガジン

  • 渦中から君へ

    1才の君にはきっとこのコロナ禍の記憶は残らない。それがどんなだったかを書き残そうと思った。

  • 自然

最近の記事

まだ渦中なので君へ

1年が経った。 しかしまだ渦中なのだ。 これほどまで事態が停滞した1年後は想像していなかった。たぶん僕だけじゃないんだろうが、コロナは今日もこの街の中にいるし、出口は見えていない。 1年前に書き始めた「渦中から君へ」を読み返してみると、ああやっぱ君は成長してるな〜と感じる。たとえばiPadの操作も一年前はぼくやみおさんの手をつかわねばならなかったのに、今では自分でばんばん動画を切り替えていく。ロックの解除こそ自力でできないが、ロックさえ解除すれば自分でYouTubeを見

    • さらにいくつものカチューシャから君へ

      おもしろいくらいスパッと梅雨が明けて、厳しい夏の暑さがやってきた。すっかり寝室に定着していた物干し竿をベランダに戻し、毎日洗濯物がからっと乾く。その代わりに洗濯物を干すために外に出るほんの数分で汗だくになっちまう。この夏は長い梅雨の反動みたいに暑く感じる。 君は最近、家の中でステージを発見した。 それは寝室の、2つのセミダブルベッドを連結した部分にある。連なったベッドのヘッドの部分がちょうど君が立てるくらいの台になっていて、君はそこに立って歌を披露してくれる。レパートリーも

      • さらにいくつもの渦中から君へ

        二ヶ月が経った。 書かなかったこの二ヶ月間、ずっと天気はパッとしない。 これほど長くて雨の多い梅雨は記憶にない。 ジメジメして洗濯物がくさくなるのはいやだ。でもスカッと晴れたところで素敵な場所には行けない現状では、こういう天気も悪くないような気もしてしまっている。 二ヶ月前はまだ楽観的だった。 いま振り返るとそう思う。 きっと少しずつ感染者数も少なくなっていって、みんな外に出られるようになっていく。 あと少し辛抱すれば、また元の生活に戻れるような、そんなつもりでいた。 た

        • 渦中から君へ22

          今日は君の二度目の誕生日。 朝方、君はベッドから落ちた。数週間ぶり三度目。お誕生日おめでとう。 曇り空の中、ぼくと一緒に近くの公園へ。相変わらずすべり台を何度も繰り返し滑り、シーソーではぼくを向かいに座らせる。ただ一番楽しそうなのは砂場遊びだった。 昨日も大家さんのお庭でさんざん遊んだけど、今日もすでに砂場で遊んでいる子たちの中に突入。みんなが持ってきてる砂遊び遊具を借りて遊び始めた。 もちろん皆さん友好的で、君が入っていっても「どうぞ〜」と迎え入れてくれる。でもパパはやは

        まだ渦中なので君へ

        マガジン

        • 渦中から君へ
          22本
        • 自然
          1本

        記事

          渦中から君へ21

          ばあばの家に行くときには車中で音楽を流している。 ぼくは思いつきでよくプレイリストを作っていて、そんなプレイリストの中でも「best hit」というたいへんふんわりしたタイトルのやつが発見された。仕方ないので何を入れたのかもわからぬまま再生してみると、それは大学のころによく聴いていた曲を雑然と押し込んだようなプレイリストだった。 奥田民生、椎名林檎、ミスチルといった本当に大学時代に聴きまくっていたラインナップは、そのほとんどをそらで歌うことができるほどだった。その中にTric

          渦中から君へ21

          渦中から君へ20

          シールの大好きな君。 今日も食品のおまけでついてくるアンパンマンのシールで遊んでいたが、すぐにアンパンマンの胴体と頭の間をちぎってしまった。 直せとぼくのところに持ってくるので、シールの粘着性を利用して無理やり繋げて返した。ひとまずはそれを受け取るけれども、とうぜんのことながらそれはすぐにまた破れる。すると君は泣き出してまたぼくのところに戻ってくるのだが、残念ながらもうアンパンマンは元には戻らない。君はそのことを受け入れない。いくら言ってもわかってくれずに君は泣きわめく。 仕

          渦中から君へ20

          渦中から君へ19

          しかし何はともあれ5月は終わるのだな。 ということを今日もずいぶんと考えていた。 ぜんぜんスッキリしない。 言いようのない不安と悲しみを抱えたまま、この国は湿気に蝕まれていく。 たとえば君を保育園に行かせて本当にいいのだろうか。ぼくは子どもたちを迎え入れていいのだろうか。基本的には大丈夫だと思っているから営業再開を決めたのだけど、絶対的な確信があるわけじゃない。たぶん多くの人が同じような不安を抱えつつも、「日常」を欲している。もう非日常に疲れ果てている。 今朝はみおさんが

          渦中から君へ19

          渦中から君へ18

          いよいよあと一週間で5月が終わる。 今日はキャベツを出荷するために東京と東北を結ぶ国道4号線を3往復した。子どものころから両親がよく行っていた4号線沿いの市場までは片道20分ほどあるのだが、今日はずいぶんとたくさんのバイクを見かけた。今週一週間はずっと曇り空で長袖を引っ張り出す必要があるくらいに寒い日も続いていたけれど、今日は過ごしやすい一日だった。みんな外に出たいという欲求を抑えるのが難しかったのだと思う。道中にある道の駅もたくさんの人で混み合っているようだった。 その

          渦中から君へ18

          渦中から君へ17

          今週はずっとぐずついたお天気が続いたけれど、終わってみれば予定通り毎日ばあばのうちに行き、ぼくは農業をやり、君はばあばとたくさん遊んだ。 今日、みおさんから腕が太くなったねと言われた。今週はとくにキャベツや白菜の出荷をやっていたから久しく眠っていた筋肉が活性化しているのだろう。残念ながらこれも一時的なもので、月が変わればまた少しずつ筋肉も寝床に帰ってしまうだろう。 いくらぼくが代わりに働いていてもばあばも出動しなければならないときがある。 それは例えば運転が許されていないベ

          渦中から君へ17

          渦中から君へ16

          ちょっと用事があってぼくの職場に君を連れていった。 職場と言っても普通の一軒家で、つい3ヶ月ほど前まで君も住んでいた。なんかずいぶん経った気がするけれど、引っ越したのはほんの3ヶ月前のことなんだな。いまの家から徒歩4分の距離だし、コロナがなければぼくは毎日通っているのでぼくにとっては今でも馴染みのある場所だけど、君はさぞ不思議な感じがしたことだろう。 君は玄関から入るなり、すぐに目についた正面の階段を上りたがった。君が住んでいたころはこの階段には上と下両方に柵をつけていて、君

          渦中から君へ16

          渦中から君へ15

          今週は天気がずっと悪いらしい。 土曜日も農業をするはずが休みになり、日曜は昼間にズームをする予定があって休み。月曜は本業のために農業は休みだったのでばあばのうちにずっと行けていなかった。今日も朝から雨が降っていたのでお休みかと思っていたら昼にばあばから電話があり、午後は仕事をしてほしいということだった。風は強いままだったがなんとか雨は止んだのでキャベツを収穫してほしいと。 そういうわけで君はやっとばあばのうちに行くことができた。 君は行きの車中で寝てしまい、ぼくが仕事に出かけ

          渦中から君へ15

          渦中から君へ14

          「仮設の映画館」というものがある。 コロナウイルスが発生する前からいわゆる「ミニシアター」と言われる映画館はどこも経営が厳しい状況にあった。近年、多くのミニシアターがつぶれてしまってたし、ぼくが神戸に住んでいたときも、通っていたミニシアターが2つもつぶれた。 そしてコロナによって映画館は休業を強いられている。 クラウドファンディングなどでそういったミニシアターを応援しようという動きもあるが、果たしてコロナ後にどれだけの映画館が生き残れるだろうか。本当に心配している。 そんな

          渦中から君へ14

          渦中から君へ13

          今日は天気が悪いこともあって農業はお休み。君はばあばの家に行きたくていつも私が持っていくリュックを押入れから引きづり出してくる。 仕方なくお昼にビデオ通話したときにはばあばにプーさんのぬいぐるみを見せて「ぷーさんぷーさん」と紹介していた。でも録画してた映画「くまのプーさん」を見せてもはじめこそ食いついていたが、わりと早く興味をなくしてどういう意図なのか、抱えていたプーさんのぬいぐるみを部屋の隅に投げ捨ててしまった。どうしてよ? Netflixオリジナル作品の「ハーフオブイッ

          渦中から君へ13

          渦中から君へ12

          寝かしつけで撃沈する。 21時には3人で寝室に入り、みおさんはそのまま君と寝ちゃう。 ぼくは君が寝たら寝室を抜け出し、ランニングをするか、ゲームをしたり映画を見たりするかして夜を満喫する。 それが理想的な夜のあり方なのだが、実際はそううまくいかない。飲まずにランニングするときは大丈夫なのだが、お酒を飲んでしまった状態で暗闇に横にならなきゃならないというのはけっこうな試練だ。とくに最近は日本酒をやっちゃってることが多い。何度か訪れている長野から取り寄せている地酒がうまくて、そ

          渦中から君へ12

          渦中から君へ11

          ゴールデンウィークが過ぎたので田んぼには水が張られ、蛙の合唱がはじまる。 ここら辺は住宅街だけれども、点在する田んぼの横を走れば否応無くそれは聞こえてくる。いったい一枚の田んぼにどれほどの蛙がいるのか。途方もない数の鳴き声が重なり、静かな夜に鳴り響く。一見すれば水面にはなんの動きもないのだが、その真っ黒な水の中から間違いなく彼らは顔を出し、ただただ鳴いている。東京育ちのみおさんは、それを想像するだけで気持ち悪いと言っていた。 君もばあばとの散歩の折、蛙を見つけては「かえう

          渦中から君へ11

          渦中から君へ10

          zoom飲みはよい。 直接会って飲めないのなら、オンラインで飲み会をすればいい。単純な発想だけれど、すごく理にかなっている。君が生まれてからは飲み会というものになかなか参加しにくい状況にあったぼくからすると、オンラインの飲み会が流行るのは逆にありがたかったりする。 先日参加したzoomの飲み会は、もう長らく会っていない大学の友人たちとの飲み会だった。参加した友人たちは栃木、茨城、埼玉、神奈川、北海道、東京といったように今や散り散りになって生活しており、平常時に飲み会を開こ

          渦中から君へ10