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渦中から君へ13

今日は天気が悪いこともあって農業はお休み。君はばあばの家に行きたくていつも私が持っていくリュックを押入れから引きづり出してくる。
仕方なくお昼にビデオ通話したときにはばあばにプーさんのぬいぐるみを見せて「ぷーさんぷーさん」と紹介していた。でも録画してた映画「くまのプーさん」を見せてもはじめこそ食いついていたが、わりと早く興味をなくしてどういう意図なのか、抱えていたプーさんのぬいぐるみを部屋の隅に投げ捨ててしまった。どうしてよ?

Netflixオリジナル作品の「ハーフオブイット:面白いのはこれから」を見た。
すばらしい青春映画だった。
マイノリティであることで縮こまっている主人公がいろいろあって飛び立っていくストーリーがよかった。
今だから思うのだが、マイノリティではない状況にい続ける人生ってきっと退屈だと思う。ぼくはゲイではないし、両親も日本人で当たり前のように日本の片田舎で育ったわけだけど、どうしても都会に行きたいという一心で受験して上京した。大学で4年間を過ごす中で頭にあったのは海外で生活したいということだったから卒業後はカナダに行き、帰ってきてからも東京ではなく神戸で暮らすことを選んだ。ひとところにとどまることはぼくにとって恐怖だったのだと思う。とどまることで自分が枯渇してしまうのではないかと。それはつまり、自分が大多数の中に埋もれてしまうことへの抵抗だったのではないかと思うのだ。

それはおそらく間違っている。
移動という手段で自分の空虚さをごまかしているという可能性を拭えない。でも自分はそういうやり方でしか自分が何者かを捉えることができなかったのだと思うし、結果的にはそういうやり方で見出したのがいまの仕事であり、そうである以上、これまでの自分を肯定したいと思っている。

またもやぼくは自分のことばかり話しているけれど、ぼくはぼくの経験からしか君に何かを伝えることができない。だから他の人の話とあわせてどうかぼくのこんな話を聞いて、自分がとるべき道を選んでほしいと思う。

今わりと話題になっているのが芸能人の政治的な発言だ。
芸能人が政治的な発言をするということが、批判を受けている。このセンテンスを読んで君がため息をついてくれることを願っている。そう、あまりにもバカげている。芸能人はバカじゃないといけないらしい。もしくはバカのふりをするのが芸能人ということらしい。実際、多くの芸人、俳優、タレント(タレントってどんな職業なんだろうな)というものは政治的な発言をしないのが当たり前だった。子どものころからそういう慣れ親しんだ人たちが政治的な発言をするのを見聞きする機会は滅多になかった。しかし、SNSの普及のせいか、あるいは現在の政治状況の異常さゆえか、彼らの中にも声をあげる人が出てきた。これは本当に喜ばしい状況であるにも関わらず、それが多くの人にとっては煩わしいことであるらしい。

議論することの意味とは、それによって間違った意見が正され、よりよき合意を形成することにあるのだと思う。しかしそういう意味においては、この国では何かを議論することは不可能に近いと感じている。なぜならなにかを批判することは反発しか生まず、建設的な議論に発展しないからだ。なんでそんなことになっちゃってるのかと言うと、そういう力を教育の中で育もうとしないからだ。だからぼくは学校がダメだって思ってて、自分で何か代替案を提示できないかって思っているわけだ。

コロナウイルスに対して今の政権がやっていることはあまりにも後手後手だし、そのことがわからない人は政治の可能性、あるいは民主主義の可能性についてまったくわかっていない。この国で何かが起こったときに、その国民が困ったり、慌てたり、不安に思ったりしないようにするのが政権の役割のはずだ。そのためにぼくらは投票し、税金をおさめているのだ。それなのに、いま国民の多くが困っていて、これからの生活を不安に思っている。ぼくだってそうだ。なのになぜ、その原因がこの政権にあるのだと気づけないのだろう?「こんな予測不能な事態なら、仕方ない」じゃないのだ。そういう予測不能な事態をなんとかすることこそ、ぼくらの集合知たる政治家の役目なのだ。もしそれが機能不全に陥っているとするなら、それはぼくら国民の過ちであり、教育の失敗なのだと思う。

コロナが起こる前から、いまの総理大臣は史上最悪の総理大臣だと思っていた。そういう史上最悪の総理大臣のもとで史上最悪の事態に陥っているのがいまの状況なのだ。この国には過去を省みる能力が著しく欠けていて、そのことこそがこんな史上最悪な総理大臣を生み出す土壌になっていると思っている。もしこんな史上最悪の状況においても国民がこのことに気づけないのなら、君がこれを読むころにこの国がもっとましな状況になっている可能性は低いと思っている。
統計によれば、まだ10人のうち4人は史上最悪の総理大臣がいい仕事をしていると信じているらしいよ。

けっこうこういう状況に生きているのはつらい。
つらいけれど、君とみおさんと生きてく未来が楽しみだから、ぼくはぼくのできることをしたい。

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