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渦中から君へ22

今日は君の二度目の誕生日。
朝方、君はベッドから落ちた。数週間ぶり三度目。お誕生日おめでとう。

曇り空の中、ぼくと一緒に近くの公園へ。相変わらずすべり台を何度も繰り返し滑り、シーソーではぼくを向かいに座らせる。ただ一番楽しそうなのは砂場遊びだった。
昨日も大家さんのお庭でさんざん遊んだけど、今日もすでに砂場で遊んでいる子たちの中に突入。みんなが持ってきてる砂遊び遊具を借りて遊び始めた。
もちろん皆さん友好的で、君が入っていっても「どうぞ〜」と迎え入れてくれる。でもパパはやはりこういうの苦手。人見知りなんでね。君は一人の子の遊具の中から気に入ったものを掴むと、今度は別な子のところへと移動。そこでも気に入ったシャベルなどを手にすると、それらを抱きかかえるようにしてまた別な子のところへ。ぼくはもう気が気じゃない。なんせいろんな子の遊具を手にして移動してるから、それらをちゃんと返さないといけない。だから砂場は嫌なのよ!って思ってても仕方ないので、ぼくは保護者の皆さんにすみませんすみません言いながら、君の隙を見て返せるものからさっと返すのであった。

とは言え皆さん、本当にいい人たち。君はさんざん砂場を楽しんでから再びすべり台へ。それからまた砂場に戻ってくるとすでに人は少なくなっており、そこに放置されていた誰かの遊具でまた遊び始めたところで急に雨が降ってきた。

幸いみおさんが車で迎えに来ることになっていたので、公衆トイレで雨宿りしているとほどなくしてみおさんの車が到着。そのまま買い物に行く道中で君はぽてっと寝てしまった。

夜はもちろん誕生日パーティ。
ばあばにアパートに来てもらって、ぼくの姉と弟ともズームをつないだ。昼間に姉から届いたプレゼントはアンパンマンのおままごとセットで、君はもうずっとそれで遊んでいる。みんながズームに現れてもお構いなしで、ディナーもろくに食べずに遊んでいる。ばあばもそれに付き合わされているから、せっかくのディナーもまともに食べられなかったんじゃないかな。
姉と弟の後はMちゃんともズームをつないだ。Mちゃんはぼくの友人の娘なのだが、たまたま君とまったく同じ誕生日。お互いに用意したケーキのろうそくを吹き消した。君は「2」をかたどったろうそく。Mちゃんは「3」をかたどったろうそく。
やはりMちゃんは吹き消すのが上手だったけど、君もなんとか自力で吹き消すことができた。
そんなこともあって君はテンションが高いまままたばあばと遊び出し、ズームの前にはろくに姿を現さなかった。

とうとうばあばとの日々は終わりを告げ、明日からは保育園に行く毎日がまたはじまる。
そんなこともあってばあばと君が別れるシーンはとても印象的だった。と言いたいところだが、ワインを2本空けた後のぼくの記憶には何も残っていない。ばあばはどんな気持ちで帰っていったのだろう。

ぼくが目を覚ました夜中の2時に、君はまたベッドの下の方で落ちかけていた。抱えて上の方まで引き上げてから、ぼくは起き出して後片付けをはじめた。
フローリングに散らばった君のおもちゃ。姉からのプレゼントだけでなく、君のありとあらゆるおもちゃがぶちまけてある。昼寝も短かったから眠かったせいもあるのかな。遊ぶことよりも散らかすことがおもしろいのかなと思うほどにたくさんのおもちゃが引っ張り出され、君がなげやったその場所で寝る前の君のテンションの高さを示している。

「不気味なものの肌に触れる」という映画を見てから食器を洗い、君のおもちゃを片付けたころには空が白んでいる。
今日も分厚い雲が空を覆っている。近くの高いマンションはいくつかの部屋にあかりがついている。向かいの単身者向けアパートの通路の蛍光灯がちかちかしている。一羽のカラスが広い空を悠々と旋回している。もちろん半袖だけど、この風の涼しさはまだ本当の夏じゃない。でも確実に夏は近づいている。
なんせもう6月。
伸びきったぼくの髪の毛の中はじんわりと汗ばんできている。来週末には散髪に行こう。


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