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【フェムテック⑭通信】海外Femtechの調達事情と、海外Femtechスタートアップの現状

2022年もあと1週間となったが、フェムテックの市場調査レポート「Femtech Analytics」の2022年第4四半期のレポートがリリース。
レポートの内容と感じたことを記載したので、参考にしてほしい。

(なお、日本円表記については、1ドル=132円(2022年12月24日現在)で換算している)

1.グローバルのフェムテック概要

・フェムテック業界において、企業数が最も多いのは「妊娠・授乳」(18.6%)
・フェムテック企業のうち、米国が43.4%、欧州が26.4%(うち英国が10.5%)、アジアが12.6%となっており、米国と英国にフェムテック企業が集中している
・フェムテック企業は、2015年以前は40カ国で約470社だったが、現在は75カ国で約1,800社を超える

Femtech Analyticsの内容を筆者が翻訳

フェムテック企業は、米国と英国で世界の半分を占めるが、次に多いのがインド(4.9%)、イスラエル(4.7%)、カナダ(4.3%)となっている。

それぞれの国で、フェムテックのコミュニティが立ち上がっており、過去にイスラエルやカナダのフェムテック製品は紹介したが、インドはこれから調べてみたい。

なお、インドは含まれていないが、2022年の東南アジアのフェムテックカオスマップはこちら。シンガポールやマレーシアの企業が多いが、月経関連が38%を占めており、米国・欧州とは傾向が異なる。

人口構造や文化が異なる面もあるが、発展途上国の一部では生理用品を手に入れられず学校に行けない現状もあることを忘れてはならない。

2.2022年第4四半期フェムテック資金調達トップ5

①Maven Clinic(9,000万ドル)

米国を拠点に、企業向けサービスが充実。女性やその家族の健康のためのオンラインサービスを提供。家族を持つ労働者のために、健康管理や医療の提要、仕事復帰のサポートを行っている。

オンライン診療サービス、動画を通じた教育コンテンツ、医療費の処理などの経費ツールを提供し、デジタルによる医療費の削減に取り組んでいる。

これまでの資金調達総額は3億ドル(390億円)。世界中で女性と家族のための医療サービスに対する需要が高まっていることを実証している。

②Delphinus Medical Technologies(3,000万ドル)

米国で、高度な超音波診断の開発をしている企業。米国女性の40%は、高密度の乳房組織を持っており、乳がんを発送するリスクが4~6倍高くなっている。そのため、マンモグラフィだけでは、米国女性のような「密な乳房」を持つ女性の「がん」の約半分を見逃すことになる。
高密度乳房スクリーニングで、マンモグラフィよりも高い精度でがんを識別できるとのこと。

③Gameto(1,700万ドル)

生殖医療分野で新薬開発に取り組む。GametoのプログラムFertiloでは、体外受精と卵子凍結のプロセスをより短く、安全に、効果的にすることをを目指す生物学的製剤を開発。

④Apricity(1,650万ドル)

英国の大手テレヘルス不妊治療クリニック。不妊治療とテクノロジーを組み合わせた生殖医療の新しい形を提供し、妊娠の確率を高めている。

⑤EngagedMD(1,100万ドル)

米国、英国、カナダで不妊治療サービスを展開。患者と医療従事者のクラウドベースのSaaSプラットフォームをを展開。
EngagedMDを使用している病院は、患者1人あたり最大2時間の手動時間を節約できることで、より多くの患者により良いケアを可能にしている。

3.注目すべきフェムテック関連製品

①Gynethotics

カナダを拠点としているCosm Medicalが、失禁などの骨盤底筋疾患に悩む女性のために、子宮の位置異常を矯正する器具「Gynethotics」を開発中。

②Oli

出産前に産後出血を発症するリスクが高い個人を特定できるデバイスで、FDAを取得。米国では、30年前と比較し2.4倍多くの母親が亡くなっているが、数十年でほとんど改善されていない課題を解決。

③Molli

磁気マーキング装置を針で皮下に挿入後、医師がタブレットに接続された杖のようなツールを使い位置を確認することで、腫瘍の位置を正確に把握し、乳がん手術をよりシンプルにすることが可能。

④JADA System

正常な子宮収縮を促進し、子宮の異常出血を抑制・治療するためのシステムを提供。2021年ORGANONが買収。

4.フェムテックの市場予測

・フェムテックの世界市場規模は、2021年に253億ドルに達し、2030年には973億ドルに拡大。2022年から2030年の間にCAGRが16%を超える成長が予測。
・デジタル技術の活用や女性の健康問題に関する意識の高まりがある一方、発展途上国でのフェムテック製品・サービスに関する認知度の低さや、競争の激化が懸念材料

Femtech Analyticsの内容を筆者が翻訳

フェムテック市場は拡大し、健康意識の高まりがある一方で、筆者が個人的に不足しているのは啓発・啓蒙活動だと感じている。
例えば、PMSや更年期障害など、言葉は知っていても具体的な中身まで理解が足りないので、自覚さえもない女性が多いのではないだろうか。

特に、更年期障害に関しては、「更年期だと認めたくない」という女性も多いうえ、日本の場合は法律上「更年期に効きます」と製品に記載することはできない。

まだアイデアがぼんやりしている段階であり、どのように市場を広げていくのか、これからも考え続けたい。