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忘れていた感情が甦る

結婚してから恋愛小説をめっきり読まなくなった。
「冷静と情熱のあいだ」を超える小説にいまだ出会えていない。

そんななか、SNSで目に留まった一文

惚れた側の負けでいい。
どんなグッドルーザーになれるかが、恋に落ちたものの使命だと思う。

MIYAMU「ホワイトカメリア」

グサッときてしまった。

何年振りに恋愛小説を購入したんだろう


世の中には実らないほうが甘美な恋というものがあるし、そっとしておくのがいい想いもある。

それは事実。

だけれどそれは、部外者とそれを過去にできた当事者だけが知りうる真理なんだよな。

恋っていうのは本当に相反する矛盾です。

「これ以上好きになってはいけない」と「でもあなたしか見えない」の矛盾が散らす火花。

この人との永遠なんか一瞬も見てはいけない。
井戸の水を覗こうと深みに顔を突っ込んだが最後、落ちて堕ちて二度と帰ってくることは叶わない。

MIYAMU「ホワイトカメリア」

覗いたら落ちると分かっていたのに。

あれだけ自分に言い聞かせたじゃないってね。
気付いたら底まで落ちていましたみたいな。


恋の感情っていうのは自分の理性や思考をいとも簡単に吹き飛ばす。

ほんとにびっくりするくらい華麗に吹き飛ばされる。

「わかった。
なんとなく悟ったよ。

あれはね、見て楽しむ人だから。
触っちゃいけない人なんだよ。
美術館の一番大きなフロアに飾られている絵のようなものね。

わー綺麗、すごいなー。で完結させなきゃいけないの。
ラインからはみ出して手を触れてしまったら、それはもう警報機が鳴って騒ぎになるわ」

MIYAMU「ホワイトカメリア」


「出会いたくなかった」は「結婚しよう」よりも愛の深い言葉です。

想ってはいけない、という呪いは深く深く心臓に刺さって簡単には抜けません。

おかしいなあ。おかしいなあ。
こんな自分は自分じゃないよなあ。
いままでひとりで立派にやってきたのになあ、おかしいなあって。

そうやって、いつの間にか、人は突然、
アッという間に堕ちていくのだ。

結局、狂いのなかでしか恋愛の真価は求められないのかもしれない。

別に何も期待なんかしてないですけどって思いながらシェーバーを体の隅々まで転がしていた日々に、今、感謝している。



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