なぜ、アスパラを売りはじめたのか。食いしんぼうエディターのつぶやき。
突然、ホームの右横に「朝6時採り!北海道ニセコ産アスパラ」とショップページのサムネイルが表示されるようになりました。
はい、私、アスパラを売っています(予約いっぱいになっちゃいましたが)。
食いしんぼうの名にかけて、いいものを発掘する編集者の誇りをかけて、めっちゃおいしいアスパラを売っております。ちょっとした偶然の重なりから、アスパラという野菜を取り巻く興味深いことの数々を知ることになりました。
今日はそのお話をさせてください。
アスパラが売れなくて、夏
ご存知の通り、この『自粛期間』で、不要不急の外出は控えようとなったわけですが。一大観光地・北海道では、それは観光客の激減を意味します。
スキーリゾートとして名のある北海道ニセコ町は、冬は各国の富裕層がバンバン訪れる街として有名になっていますが、札幌市から2時間圏内ということもあって、夏は道内在住の観光客が多いところでもあるのです。
さて、道内の都市部からニセコに来る方々の、お目当てとは?
ズバリ、旬の野菜を買うこと。
実際、ニセコ町の道の駅に併設された野菜直売所の人気はものすごく、2018年にはトリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!道の駅ランキング 2018」で2位にランクインしているほど。夏の盛りには太陽をいっぱいに浴びたトマトや葉野菜が並びますし、ニセコは外国人の居住者も多いので珍しい西洋野菜も見つかるとあり、とにかくおもしろいのです。私は地元民としてここを利用していますが、うかつに土日の午前中に買い物に行こうものなら、朝採り野菜を目当てに訪れる人たちで大混雑。レジの20人待ちはザラにある光景でした。
それが・・・ゴールデンウィークは休業を余儀なくされ、その後も緊急事態宣言が解除できない中、なかなか人々がニセコに来ることができない状況が続きました。そうなると「せっかくニセコに来たんだから、親戚においしいアスパラを送ってあげたいな♪」という方も激減してしまうわけです。
アスパラは4月末から少しずつ出回り始め、春の遅いニセコではちょうどゴールデンウイーク頃から露地ものが出始めます。そこから6月中旬までが最盛期。
今年においては、いかにアスパラが受難の年であったか、ご想像に難くないと思います。
さて、私は過去に5年ほど飲食業に関係し、厨房業務も仕入れもしていたことがあります。現在は編集者としてカメラマンとして、農家さんのところに取材にも行きます。その2つの経歴が見事にマッチし、アスパラを使いたい飲食店と農家さんの仲介をすることになり、さらに自分の通販サイトを使って販売してみようと思い立ったわけです。
驚きの朝6時採り! 〜朝採りアスパラがなぜもてはやされるか〜
朝、採れた新鮮な野菜を、その日のうちに送る。朝採り野菜の基本です。
でも「朝採りとは何時に採るの?」とは、考えたことがありませんでした。
農家さんと、仕入れの打ち合わせを済ませ
「じゃあ、初日は何時に取りに来たらいいですか?」
「何時でも!朝6時には用意できてますから」
!?
朝6時には”用意できてますから”!?
思わず聞き返してしまいました。
「え?じゃあ何時から刈り取りしてるんですか?」
「5時くらいかな〜?アスパラってね、気温が上がると内部に熱がこもっちゃうの。鮮度を保つには涼しいうちに刈るのがいちばんいいんですよ」
・・・絶句。そんなに早いんだ・・・。
アスパラは非常に元気の良い野菜で、刈り取り後も体内の養分を使ってさらに伸びようとします。その分鮮度の落ちも早く、日に日に味が薄くなってしまうのです。だからこそ、朝の採れたてをなるべく時間をおかずに食べることで、アスパラのおいしさを存分に味わえるんですね。
とはいえ6月はじめの朝5時台なんて、ニセコでは気温が15℃程度の冷え込んだ日も多くあります。おまけにアスパラの刈り取りは全部手作業で、基準に達した長さのものを、1本1本鎌で刈り取っていくのです。手も冷たくなるでしょうし、ずっと腰を曲げての姿勢で作業を続けるのも大変に違いありません。それでもニッコリ笑って、農家さんは言ってくださったのです。
「うちは小規模栽培だから、なんとか涼しいうちに収穫作業を終えられるんですよね」
そんなに早い時間から準備してくれているなんて。
おいしすぎる!!! 〜アスパラ料理を考える日々〜
さて、初日はお使いになる飲食店(かつての上司が経営)への納入もあったため、アスパラを届けがてら、わざと昼過ぎまでウロウロして賄いにアスパラの天ぷらをのせてもらった私。
ジュワッ!
かじった瞬間、口の中に甘く、とろりとしたアスパラの水分があふれました。
根元は甘く、穂先は少し、ほろ苦く。
濃厚な旨み。あふれるほどの水分。
誇張でなく、塩も何もいらないおいしさでした。
その夜は、シンプルにバターソテーにして、卵を使ったソースをかけました。
別の日は、細いアスパラを集めて、さっとバターで炒めてから塩、こしょう、卵サンドの中身の残り。ホットサラダ感覚です。
アスパラの根元に近い部分は、発送用に箱詰めするとき、カットします。
なぜって?箱に入らないから・・・。
でもこの根元の部分、皮を厚めにむくと、中心に近いところの甘さとやわらかさは格別です!よく、農家さんしか知らない味とか賄いの味と言われるものがありますが、これはまさにそのパターンでしょうね!
私はここの部分をチキンスープで煮たり、タコと一緒にアヒージョにしています。写真は?ないですねえ・・・おいしくて一気に全部食べてしまいましたもんね・・・。食いしんぼうなので・・・。
今日は、ガーリックバター炒めにして、桜えびとおしょうゆ仕上げ。最後に桜えびを追加でパラリと。これはごはんに合いそうなお味となりました。
いろいろやってみましたが、しっかり味をつけても持ち味の濃厚な甘みは負けません。中華料理には「牛肉とアスパラのオイスター炒め」なんてものもありますよね。こってり仕上げても、アスパラのシャキシャキした食感と相性が良いと感じます。
とはいえ、そのものの味を楽しむためにシンプルに仕上げても、これまたおいしいという結論に落ち着きました。
つまり、新鮮で旨みが失われる前に食べれば、いろいろな方法でおいしくいただける、ってことですね。
これだもん、みんなニセコに朝採りのアスパラを買いに来るよなあ・・・。
おいしいもんなあ・・・。
というわけで、食いしんぼうのオススメアスパラ 〜野菜あれこれ、考える〜
成り行きで始まったアスパラの発送でしたが、嬉しいことに北海道外から10件以上のご注文をいただきました。そして「アスパラってこんなにおいしいの?」「贅沢にアスパラづくししちゃいました〜!何をしてもおいしい!」「家族も大喜び!」と、嬉しいコメントをたくさんいただいております。
そうかあ。とひとり考える私。
今回は、
□知っているようで知らなかった、朝採り野菜の実態を知った
□ニセコ野菜の底力を知った。おいしすぎる。
□もっといろいろな人に届けたい。届けたいなら、全力で言葉と写真を添えよう
そんなことを考えさせられる、コピーライティングとマーケティングの実地訓練のような機会になったのでした。
さてさて、この長い文章を読んでくださり、ありがとうございました。これが、突然ホームの右側にアスパラの通販画面が現れるようになった背景です。
最後に、大好きな写真家のソール・ライターのことばを。
「神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。」
神秘的、とは言いすぎだけど、まわりにたくさん置かれている素晴らしいものに、目を向けるきっかけになったのは事実です。
■6/14 8:30 追記■
今年度のアスパラ発送は予約分で終了となりました。本当に良い経験だった。
次はどんなプランを作ろうかな、となんだかワクワクしています!
手をかけて野菜を作ってくださっている農家さんに、心からの感謝を。
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旅人フォトライター × 食いしんぼうエディター ウエミチメグミ
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本文中の写真は私が撮影したものです。
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