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読書でイタリア探訪 〜前編〜

私にとってイタリアという国は、大学で歴史や文化について学んだ国であり、留学生として10ヶ月ほど暮らした国であり、日本に次いで馴染みのある国だ。

そのため、イタリアに関する本を手に取ることが多い。書店で「イタリア」の文字を見かけると、目が吸い寄せられてしまう。


読書でイタリアを旅する。

そんなテーマで選書した作品たちを、前後編に分けてご紹介したい。



内田洋子さんのエッセイ


内田洋子さんのエッセイは、「今日も、読書。」でこれまで何度もご紹介してきた。どの作品も、本当に良い。

一編一編が丁度良い長さで、文章は表現豊か、何より読後の余韻が心地良い。読後の余韻に浸るために読書をしているような感覚だ。

大小様々な宝石が詰まった宝箱のような、そんなエッセイ集たちである。


内田洋子さんは、イタリアを拠点にお仕事をされている方だ。そのため、日本人だけれど「イタリアの視点」を持っている。その視点がエッセイに深みを持たせている。

内田さんのエッセイには、イタリアを旅行するだけでは見えてこない、ディープでありのままのイタリアが描かれている。イタリアで暮らす人々の人生に深く切り込んでいき、彼女独自の豊かな表現で、瑞々しく美しい文章が紡がれている。


どのエッセイからも、「イタリアらしさ」が感じられる。「イタリアらしさとは何か」という議論はあるだろうが、ここではいったん脇に置いておいて、彼女の作品からは、「イタリアにいるかのような雰囲気」を味わうことができる。

しかし同時に、日本をはじめ世界中に通じるような、「人生とは何か」という普遍的なテーマも感じられる。時の流れの切なさや残酷さ、人生を左右するような出会いと別れ。人生において誰もが持っている「些細だけれど大切な物語」が、いくつも切り取られている。

イタリア人たちの人生が魅せる、普通だけれど、心を打つ物語。自分事に置き換えて読むと、心に刺さる。そこには、イタリアの街角の風景が広がっている。



須賀敦子さんのエッセイ


「イタリアのエッセイ」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、須賀敦子さんだろう。


須賀敦子さんは、29歳から13年間、イタリアで過ごされてきた経歴を持つ。文筆業を始められたのは56歳と遅く、イタリアで過ごした日々を回顧し、素晴らしいエッセイを数多く発表した。

文学全集にもその名を連ね、大学の講義でも取り上げられるほど、とにかくすごい方だ。


大学時代の親友が須賀敦子さんを敬愛していて、卒業論文のテーマも「須賀敦子の文学的功績」だった。そのため、個人的に須賀敦子さんの名前は身近で、友人に勧められるがままに読んでいた。

彼女の作品はあまりにも有名で、特徴も魅力も語り尽くされていると思うので、ここでは多くを語らない。


私は特に『コルシア書店の仲間たち』というエッセイが大好きで、世の本好きにはぜひとも読んでほしい作品だ。1950年代のミラノを舞台に、彼女が仲間たちと経営していた「コルシア・デイ・セルヴィ書店」での日々が、気品に満ちた文章で綴られている。

書店に集まる若者たちの熱気が伝わってきて、心が熱くなる。この時代の書店の「交流の場」「表現の場」としての役割、時に衝突しながらも、楽しく苦難を乗り越えていく姿に感動する。



こちらの記事は、以前「今日も、読書。」に書いた記事を修正・再掲したものです。



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