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読書は、”知の冒険”。 〜孫泰蔵『冒険の書』を読む
『冒険の書』と聞くと、「ドラゴンクエスト」というRPGゲームを思い浮かべてしまうのは、ゲーム好きの幼少期を過ごした者の習性である。
幼い頃の私にとって、「ドラゴンクエスト8」は、間違いなく革命だった。同世代の方は、きっと頷かれていると思う。
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ドラクエ8は、それまでのナンバリング作品に比べ、「冒険している感」が段違いだった。3次元的にどこまでも広がる、大地、海原、そして青空。
今でこそ、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」に代表されるオープンワールドゲームは一般的になったが、ドラクエ8の、あの見渡す限りに広がるフィールドは、当時かなりの衝撃だった。
ドラゴンクエストシリーズでは、セーブデータを「冒険の書」に記録する。
作中で、実際にその冒険の書の中身を読むことは、残念ながらできない。しかし、主人公たちのそれまでの大冒険が、一冊の本にすべて記されていることを想像すると、心が弾むものだった。
小中学校時代は、ゲームの世界で、来る日も来る日も、これでもかというほど冒険していた。あの時の、冒険することに対する純粋な興奮や感動は、何物にも変え難い宝物だった。
最近、「冒険してるな」と感じる瞬間はあっただろうか?
社会人となった今、すっかりゲームからは遠ざかっている。ゲームの代わりに、私は読書をするようになった。
先日、とある本を読んでいて、幼い頃にドラクエ8に衝撃を受けたときのこととか、いくらでも冒険の世界に出かけていたこととかを、ぶわっと一気に思い出した。
そして、その本を読み終えたとき、不思議なことに、あの時の「冒険している感」に近い感覚を抱いている自分がいた。
読書もまた、冒険。今回は、そんなお話。
孫泰蔵|冒険の書 AI時代のディープラーニング
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「私たちはなぜ勉強しなきゃいけないの?」
「好きなことだけしてちゃダメですか?」
「自分らしく生きるにはどうすればいいの?」
「世界を少しでも良くする方法は?」
数々の問いを胸に「冒険の書」を手にした「僕」は、時空を超えて偉人たちと出会う旅に出ます。そこでわかった驚きの事実とは——。
起業家・孫泰蔵が最先端AIにふれて抱いた80の問いから生まれる「そうか!なるほど」の連続。読み終えたあと、いつしか迷いが晴れ、新しい自分と世界がはじまります。
「混迷する世界をつくった本当の課題とはなにか?」
「AIの未来に何をすればいいのか?どう生きるか? 」
「リスキリングってほんとうに必要なのか?」
誰もが迷う「問い」を胸のすく「発見」につなぐ本書は、どう生きるか悩むあなたに勇気と指針をくれるでしょう。
見渡す限りの空と街が広がる装丁が、どことなくドラクエ8を思い起こさせる本書。
『冒険の書』という書名の通り、著者である孫さんが、過去の偉人たちの名著を読み繋いでいくことで、時代や空間の制約を超えて”冒険”する本である。
本書は、孫さんが「本を読むことを通じて冒険をする」様子が、非常にファンタジックな演出で描かれている。
孫さんが本を開くと、辺りが眩い光に包まれ、気がつくとタイムスリップしている。様々な時代の様々な国で、歴史に名を残す偉人たちと邂逅するのだ。
本のページを捲ることがきっかけで、冒険が始まる。普段私たちが読書をしているときに、無意識に体感している本の世界の”冒険”を、わかりやすく可視化してくれている。
孫さんは本書を通じて、「読書こそが冒険だ」と伝えようとしている気がしてならない。
ゲームから読書に変わっただけで、私は昔も今も、冒険に胸を躍らせている。
読書は、ゲームほどわかりやすい冒険ではないかもしれない。でも諦めずに続けていけば、きっといつの日か、何らかの勇者になれる日が来る。
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ちなみに『冒険の書』の中身も、なかなか面白かった。孫さんの知的探究心と社会貢献への熱意には、目を見張るものがあった。
・答えるな、むしろ問え
核心をつくような問いを立てることは、答えを探そうとするよりも、むしろ本質に近づく。これは、特に仕事をする中で、実体験として頷けるところがあった。
僕が思うに、「やりたいことは特にない」と言う人たちは「やりたいこと」の定義を「お金になるようなことの中で、自分がしたいこと」と限定してとらえているのです。
これも、確かにと思わず唸った。知らず知らずのうちに、「お金が稼げる」ということを前提事項にして、やりたいことを探してはいないだろうか。
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あけたらしろめさんのイラストも、本書の良いアクセントになっている。こういう細かいニュアンスやデザインが、「冒険している感」を演出しているのだろう。
さて、そろそろ2023年も終わる。今年の締めくくりとして、残り半月、どんな”冒険の書”を読むとしようか。
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