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#17 太宰治全部読む |文学のために死ぬ覚悟を決めた

#17 太宰治全部読む |文学のために死ぬ覚悟を決めた

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『新樹の言葉』では、太宰の前期〜中期の過渡期に書かれた短編を読み、彼が自由で芸術的な作風を見出すまでの、試行錯誤の過程を追った。

17回目の今回は、『ろまん燈籠』を読む。果たしてどのような作品なのだろうか。

太宰治|ろまん燈籠

本作『ろまん燈籠』は、前回の『新

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#16 太宰治全部読む |『晩年』から『走れメロス』へ、試行錯誤の過渡期

#16 太宰治全部読む |『晩年』から『走れメロス』へ、試行錯誤の過渡期

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『津軽通信』では、太宰の短編の中でも戦争期に執筆された、”シリーズもの”作品たちを読んだ。「未帰還の友に」など、優れた短編も多く発見した。

16回目の今回は、『新樹の言葉』を読む。

「太宰治全部読む」も、ようやく終わりが見えてきた。果たして今回は、どのような作品

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#15 太宰治全部読む |戦地から還らぬすべての友に

#15 太宰治全部読む |戦地から還らぬすべての友に

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回の『もの思う葦』では、処女作『晩年』から『人間失格』の頃まで、太宰の作家人生を横断する随想を読み、感慨に耽った。

15回目の今回は、『津軽通信』。津軽といえば、太宰出生の地だ。一体どのような作品なのだろうか。

太宰治|津軽通信

本作『津軽通信』には、太宰の後期作

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#12 太宰治全部読む |太宰流ハムレットを、戯曲調で読む

#12 太宰治全部読む |太宰流ハムレットを、戯曲調で読む

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回取り上げた『パンドラの匣』では、太宰が実在の日記を下敷きにして書いた作品を読んだ。日常の何気ない”細部”を文学に昇華する、太宰の技術力の高さに舌を巻いた。

12回目の今回は『新ハムレット』。『ハムレット』といえば、イギリスの劇作家、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲で

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#11 太宰治全部読む |匣の中に、希望は残されている

#11 太宰治全部読む |匣の中に、希望は残されている

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回取り上げた『惜別』では、第二次世界大戦によって日本文壇が衰退する中、太宰が何を願いながら小説を書いていたのか、想いを馳せる読書だった。

第11回目の今回は、『パンドラの匣』を読む。

本書に収められている「正義と微笑」と「パンドラの匣」はいずれも、太宰が知人の日記を

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#10 太宰治全部読む |大戦が生み落とした名文

#10 太宰治全部読む |大戦が生み落とした名文

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回は難敵『二十世紀旗手』に挑戦し、敢えなく敗退を喫した。太宰史上最も錯乱した作品たちは、何度読んでも、解読不能だった。

今回は、記念すべき第10回目となる。第二次世界大戦期に執筆された2編を収めた、『惜別』を取り上げる。

太宰治|惜別

新潮文庫『惜別』には、戦争中

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#9 太宰治全部読む |折り返し地点にして、最大の難敵

#9 太宰治全部読む |折り返し地点にして、最大の難敵

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『グッド・バイ』では、未完の状態でも太宰が残してくれた小説が、後の世代で面白い小説を生み出す軌跡に想いを馳せた。

9回目の今回、早くもなのかようやくなのか、「太宰治全部読む」は折り返し地点を迎える。そんな節目に、太宰最大の問題作、『二十世紀旗手』を取り上げる。

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#8 太宰治全部読む |未完のグッド・バイ

#8 太宰治全部読む |未完のグッド・バイ

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『お伽草紙』では、既存の昔話や伝承を下敷きに、太宰のユーモアと想像力が絶妙にブレンドされた短編小説を堪能した。

第8回目の今回は、『グッド・バイ』という短編集を取り上げる。表題作の「グッド・バイ」は、未完の絶筆作品である。

太宰治|グッド・バイ

1948年

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#7 太宰治全部読む |これはパクリではない、創作だ!

#7 太宰治全部読む |これはパクリではない、創作だ!

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『走れメロス』は、太宰の文学的才能が開花し、明るく自由な短編が印象的だった。

第7回目の今回は、『お伽草紙』という短編集だ。

実はこの『お伽草紙』、私にとって思い出深い作品である。

Twitterやinstagramで読書アカウントを開設し、おそらく最初に

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#6 太宰治全部読む |明るくて自由な太宰文学

#6 太宰治全部読む |明るくて自由な太宰文学

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回は太宰の代表作、『人間失格』を読んだ。晩年の太宰が身を削って書いた、人生の総決算とも言える小説に、ひたすら圧倒される思いだった。

今回取り上げるのは、『走れメロス』。

中学国語の教科書に載っている掌編「走れメロス」をはじめ、中期の短編が収録された本作。さて、どうだ

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#4 太宰治全部読む |自分探しの津軽紀行

#4 太宰治全部読む |自分探しの津軽紀行

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。

太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。

前回読んだ『ヴィヨンの妻』では、死へと向かっていく晩年の太宰の、魂を削る哀しい叫びが書き綴られていた。太宰の気分が絶望で塞いでいく一方、文体の完成度は完熟の域へと達していくのが、悲しい皮肉だった。

さて、今回取り上げるのは、太宰が故郷・津軽を旅する紀行小説『津軽』だ。家

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