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3/12まで公開中!伝説のジャズ・ボーカリスト、キャロル・スローンの人生を描くドキュメンタリー映画は必見です!*ハンカチのご用意をお忘れなく。

どうしてもお知らせしたい!Cinequest のオンライン映画祭 Cinejoy で3/12まで(アメリカ時間)の期間限定上映中です!

Sloane: A Jazz Singer

Carol Sloane(キャロル・スローン)て誰?と思われる方も多いでしょう。でも Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)、Billie Holiday (ビリー・ホリデイ)、Sarah Vaughan (サラ・ヴォーン)、Carmen McRae(カーメン・マクレエ)だったら一度は聞いたことがありますよね。Ms. Sloane が “The Great 4”と呼んでいるこの4人のジャズ・ボーカリストと並んで、彼女自身もその名を世界に知られるはずでした。

映画の中で Ms. Sloaneが “Being in the right place at the right time(正しいタイミングで正しい場所に居合わせた)” と言っているように、1961年のニューポートジャズフェスティバルをきっかけに彼女はスターダムに駆け上りました。オスカー・ピーターソンをはじめジャズ界の名だたる顔ぶれとも共演し音楽界でのキャリアを築き始めました。ただそれと同時期にビートルズやローリング・ストーンズを代表とする “The British Invasion(イギリスからロックミュージックがアメリカに入ってきて台頭した)” が起こり、バーブラ・ストライサンドといったポップミュージックなどの新しい音楽が勢いを増すという時代の波にのまれ、彼女のフィールドであるジャズは衰退していきました。

彼女はそれまで築き上げた実力と人気からビートルズやローリング・ストーンズのツアーにも同行しましたが、皮肉にもその彼らに時代を持っていかれてしまったのです。映画の中でもエグゼクティブ・プロデューサーの Stephen Barefoot(スティーブン・ベアフット)氏が “But those were the guys who changed the world, I wasn’t.(彼らが世界を変えた、私ではなかったの。)” というMs. Sloane の言葉を紹介している場面があります。

「アートはお金にならない」
と断言するシーンがあるほど Ms. Sloane は金銭面で苦労しましたが、最後まで強く生きた彼女。電話代の滞納で回線がとまってしまったと思って受話器をあげたら「まだ通じる!今のうちに!」とクラブのオーナーである Buck Spurr 氏に電話をかけます。その後心優しい Spurr 氏と結婚するものの、すぐに彼が病気になってしまいます。最愛のご主人に先立たれてからも、Ms. Sloane は “人生の新しいチャプター” と力強く人生を突き進みます。そんな彼女の自宅の冷蔵庫や柱に貼ってあった言葉は-
“YOU ARE NOT TOO OLD AND IT IS NOT TOO LATE(あなたは年をとりすぎてはいないしまだ遅すぎない)”
“Risk. Fail. Risk Again.(リスクを冒せ。失敗しろ。またリスクを冒せ。)”

Ms. Sloane は「あの世に行く前にもう一度」と84歳でマンハッタンの老舗ジャズクラブ、Birdland(バードランド)でのライブ録音をします。全米や日本から、ファンや友人たちが駆けつけます。ショーの最後、「歌いきった」という表情を見たと思ったのは私だけではないと思います。

映画の中では彼女が衝撃のデビューを果たした1961年のニューポート・ジャズフェスティバルで歌った “Little Girl Blue” の実際の録音も流れます。同曲は最初のアルバムにも収められており、そのレコードを聴く84歳の彼女の様子が映画には収められています。その表情と頬をつーっと伝う涙。見ていて胸がきゅーっとなります。

なぜ彼女にこんなに惹かれるのか。そのスモーキーで美しい声やテクニック以上のその「何か」がこのフィルムを拝見して分かりました。それは彼女は歌う時、それぞれの歌を自分の人生の物語として歌うからなんですね。

Ms. Carol Sloaneは今年1月23日にお亡くなりになりました。彼女のドキュメンタリー映画の初上映(Santa Fe Film Festival)が決まりとても喜んでおられたそうで、その矢先の出来事でした。私はニューヨークに住んでいた時に彼女の歌声に出会ったのですが、聴いているといつもニューヨークの思い出が蘇ります。彼女の歌声が多くの人々を魅了してきたように、これからも彼女が残していってくれた素晴らしいレコードの数々がそうし続けてくれるでしょう。Ms. Sloane、ありがとうございました。

そして彼女の人生の物語をドキュメンタリー映画に作り上げ、シェアしてれたクルーにも感謝したいと思います。3ドルちょっと(と任意の寄付)で見られます。字幕はないですが、エラ・フィッツジェラルドと一緒に車の中で交わした会話だとかビートルズ、ローリング・ストーンズとの思い出話も語ってくれる、とにかく音楽ファンの心を鷲掴みにしてくれる映画です。

いろんな思いが浮かんできて永遠に書き続けてしまいそうになりますが、期間限定なのでとにかく早く皆さんにこのメッセージをお届けしなければ!この辺でアップします、笑。

彼女の詳しい記事を以前ブログで書いていますので、よろしかったらお読みになってくださいね。

www.megforlife.com "Dear Ms. Carol Sloane"

次回もスペシャルな話をお届けします。Ms. Sloane が最後のライブ録音をなさった Birdland で先週末に演奏した友人ギタリスト(今年のグラミー賞の壇上にも上がりました)のお話です。お楽しみに!

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