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優しい鬼/レアード・ハント、柴田元幸(訳)






積読本📚の中から、レアード・ハントの小説
「優しい鬼」を拝読しました📖´-
(2023,2,5 読了)






本書を拝読しようと思ったのは、翻訳家・柴田元幸さんの朗読会に参加することになったからです。
前に拝読した「翻訳夜話」で柴田元幸さんの翻訳本を拝読したいと思っていたところ、ちょうど朗読会が開催されることを知ったので参加しようと思いました。





せっかくなので柴田元幸さんの翻訳本を拝読してから参加しようと思い選んだのが本書でした。
なぜ本書を選んだかというと私が敬愛する書店主・田尻久子さんの「みぎわに立って」というエッセイの中で本書のことが書かれておりいつか必ず拝読したいと思っていたから。
今がタイミングだと感じました。
そして、”優しい”と”鬼”という対局の言葉がタイトルになっていて惹かれたというところもあります。






前置きが長くなりましたが、本書についてここから書いていこうと思います。
レアード・ハントの作品は本書が初。
私の記憶に信憑性はあまりないですが、多分アメリカ現代文学にきちんと触れるのもこれが初めてではないかと思います。


南北戦争前のケンタッキーの山の中に住む、独裁的な男と、ほとんどだまされてそこに連れてこられた妻、そして彼らに仕える二人の奴隷娘。
この四人を中心に「優しい鬼」の物語は展開する。

「訳者あとがき」より





四人の語りを中心に物語は進んでいきます。
その中には暴力的なこと、哀しいことも多く含まれているのですが、静かに静かに語られていくので胸がギュッと掴まれて苦しくなるというよりも、語られていく出来事を淡々と受け入れながら拝読していきました。


レアード・ハントは僕が知るかぎり(というと、乏しい読書量ではかなり対象は限定されるわけだが、まあともかく)現代アメリカにおいてもっとも魅力的な声が聞こえる作品を書く作家である。

「訳者あとがき」より






柴田元幸さんの仰るように字を目で追っているのだけれど、耳元で物語を語られているような感覚になりました。
昔のアメリカの田舎で実際に起こっていたかもそれない哀しい現実を今目の当たりにしたようにも感じました。
みんなが鬼でみんな鬼ではない。
モヤに包まれたようななんともやるせない気持ち。
みんなそれぞれが、何かしら罪を背負いその罪にずっとさいまれながらも静かに懸命に生きているように思えました。




正直言うと一度拝読しただけでは作者が物語を通して何を伝えたいのかは私には分かりません。
詩的な語りを掴もうとすればするほどモヤががってしまい、手の内からスルッと抜けてしまう。
ただ、時に暴力的で、物悲しいのだけれど、その中に一欠片の救いがあるのではないかというのが私の感想です。




私にも密かに背負っている罪はあります。
いつかそれを静かに語ることができたら、やっとその時その罪が浄化されていくのかもしれません。

また、原文のタイトルは「kind One」となっています。
直訳すると「親切な人」。
でも、柴田元幸さんはそれを「優しい鬼」と訳している。
なぜなのかは、今の私には残念ながら分からない。
優しい鬼…理解出来ずとも読了後にズンと余韻を残す作品でした。



これを踏まえて本書をぜひ皆さんに読んでいただきたい。
そして、どんな風に皆さんが受け取るのかを聴かせていただきたいです。





そして、柴田元幸さんの朗読会はなんとも贅沢なひとときで、益々柴田元幸さんの翻訳本をもっと拝読していきたいと思いました。

















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