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花と朗読 制作記

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華道家の杉謙太郎さんと福岡でやった「花と朗読の会」の波乱にみちた制作過程を記しました。どうぞご覧下さい。
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#杉謙太郎

花と朗読 制作記(9) 花びら舞う祝祭の嵐

花と朗読 制作記(9) 花びら舞う祝祭の嵐

さて、いよいよ河北家での花会である。
9月にこの場所に来た時からずっと「この場所でやらなければいけないことがある」と魂が反応していた。それが何なのかはわからない。開催日に関しても一体いつに設定されるのだろう、と傍観していた。そうしたら偶然にも新嘗祭(11月23日)の日となった。今では勤労感謝の日とされているが、本来は新穀を神前に捧げ、感謝の意を奉告した上で頂くという大切な儀式がより行われる日である

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花と朗読 制作記(8) 聖なる生と死の躍動

花と朗読 制作記(8) 聖なる生と死の躍動

杉工場での花会はお客様と共に展示されている山本源太さんの半生を一緒に歩きながら朗読していった。家長制度に反発する長男である源太さんが両親と校長先生に手紙を残し家出をするところから始まる。

<手紙>より抜粋
家、家庭制度の中で父や母の考えや、おじいさんの躾までにも
「家」の観念に囚われた。父は果たして幸福だったのか。
絶えず紛争の絶え間のない「家」の中で、俺は取るべき道を知らない。
どんなに苦しく

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花と朗読 制作記(7) 閉じこもりの日々

花と朗読 制作記(7) 閉じこもりの日々

2日間、源太さんの人生と向き合いながら手紙や日記や詩と向き合う。滞在していた場所は薪ストーブだったので朝起きると薪に火をつけるところから始まる。お風呂も薪だった。日に日に要領が良くなり、火付けも上手くなり、火のありがたさを感じる。食事は毎日、冷蔵庫にある地元の野菜を料理する。近所に道の駅もあって、無農薬野菜も果物も、豆腐も新鮮で美味しい。周りには何もないけれど、静かで創作するにはちょうど良い環境だ

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花と朗読 制作記(6) 陶工・山本源太  半生の展示

花と朗読 制作記(6) 陶工・山本源太 半生の展示

宝満山の玉依姫様を河北家にお運びした後、杉工場の山本源太さんの展示準備を見に行く。想像以上に大掛かりな展示だった。源太さんが書き溜めていた日記や手紙、そして詩を集め、若かりし頃からの写真を引っ張り出し、整理し、年代ごとに展示しようということだった。大きな木造の杉工場は大きく4ブースに分けられていた。一つ目の部屋は源太さんの半生の展示。写真と日記、手紙、詩などの文章、そして陶器が年代ごとに並べられる

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花と朗読 制作記(5) 宝満山に玉依姫をお迎えに行く

花と朗読 制作記(5) 宝満山に玉依姫をお迎えに行く

長い長い旅路が終わった。
結局13日間福岡に滞在した。あまりに濃い時間すぎて、もはや時間という概念を超えて、あっちとこっちの間に身を置いているようなそんな期間だった。
時間って、ほんと、伸びたり縮んだりするんだよなぁ。

まずは制作記(4)の続きから。
結局、福岡に到着したその足で宝満山登山となった。
まずは河北家が守ってきた神社の一つである日吉神社にお参りにいった。
河北さんの後ろに立つ産土神様

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花と朗読 制作記(4) 通らなければならぬ関門

花と朗読 制作記(4) 通らなければならぬ関門

制作過程だもの。そんなにスイスイと上手く行くわけがない。

今回も、もちろん例外に違わず。
ふーーー。
初めての人とモノを創る時には、お互いに相手の創り方を知らないからイライラするし、疲れることもある。
創作において大事にしていることの順番が違うのも疲れる。
もちろん、相手だって同じことを思っているに違いない。

私にスイッチが入ってしまい、閃いたことをポンポン投げ、どんどん気持ちが先走ってしまっ

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花と朗読 制作記(2)

花と朗読 制作記(2)

11月に福岡で華道家の杉謙太郎さんと催す「花と朗読」。
前回お伝えしたように開催場所は杉工場と河北邸の2箇所となっている。
趣の違う二箇所なので内容も変える予定。

杉工場の方では、コロナ禍に杉さんがとてもお世話になった陶工の山本源太さんへのオマージュ的な作品にしたいとリクエストがあった。
私も9月に福岡に遊びに行った時に、八女市星野村にある源太さんの窯へ遊びに行った。山の中にある源太窯はなんとも

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花と朗読 制作記(1)

花と朗読 制作記(1)

華道家の杉謙太郎さんから「花と朗読」で何か作品を作らないかとお誘いを受けた。彼は日本中、いや最近ではアジアやヨーロッパなど諸外国でも「花会」を催していたのだが、コロナ禍で否応無しに活動は休止となり、地元である福岡に戻り陶芸に明け暮れていたという。山に籠り土をいじり、窯に火を入れ、沢山の器を作りながら縄文時代に思いを馳せていた。沢山の情報を生まれ落ちた土地から得て、久しぶりに再会した彼は蛹が蝶になる

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