見出し画像

【429/1096】声が届かないときは、呼吸を深くする

429日目。毎年書いているYear Compassを、オンラインで一緒に書く会に参加していて、とてもよい。基本的には1人で書くだけだが、画面上でも同じ時間に同じことをやっている人がいるというのはなんだかよい。ありがたい。


今日は今年最後の満月ですね。願い事、しましたか。

さて、声が届かないときである。
自分の声が相手に届かないという場合もあるが、今日は逆のことを書く。
相手が目の前で話しているのに、自分の中に届かなくなるときのことである。
音としては聴こえており、言葉の意味もわかる。
しかし届いていない。

まず、私の場合、この状態に気づくようになるまでに、かなりの訓練時間が必要であった。たぶん、2年はかかっている。
その状態になったことを、指摘されても、「は???」みたいな感じだったので。
「いや、聞いてますけど?」的な。
何を言われてるのかわからない的な。

まあ、もうその指摘を受けてる状態では届いてないし、むしろ、今となっては、指摘しているのがいまいちな対応だよねとは思うけれども、相手もベストを尽くしてくれていただけだ。

声が届かないのは、相手に「リスペクト(尊重)がない」と私が解釈した場合に起きる。
この解釈は、本能的な解釈で、自動反応である。だからなかなか気づけない。

脳は、わかりやすく分類すると
①爬虫類脳
②情動脳
③思考脳
にわかれている。

①と②が安心感があるときに、③が正常に働く。
①はサバイバル、生存本能で、空気とか水とか、食料とか、住むところ、寝る場所とか、そういう生きるベースがととのっている状態が必要。
②は哺乳類が、繁殖するために大人が子どもをケアするためのつながり、団結をすることが大事。つまり、人とのつながりがある状態、相手から尊重、共感、思いやりがあることが必要。
③はいわゆる論理的、理性的、合理的思考、内省などに使われる人間だけが持ってる脳である。思考脳は生まれたときは完成されていなくて体験と環境で順応し変化する脳で、ニューロンがつまって生まれてくる。生まれて感覚情報を取り入れると、ニューロンがつながり始めて、神経回路を作っていく。

声が届かないとはどういう状態かと言うと、②の情動脳が危険、脅威を感じているので、脳と身体が防衛状態になっているということである。
情動脳は、常に、尊重が必要なのだが、過去(主に子ども時代)に「尊重されていない」という経験をして、その経験に基づく解釈が出来上がっていると、尊重がない状態を「危険」と判断する。
実際のところ、今、目の前にいる相手が自分を尊重をしてくれているかどうかではなく、何らかのトリガーで「あ、尊重されていない」と自分が解釈すると自動運転でそうなる。
ちなみに、この解釈は、あれがこうでこうなったからとのんびり考えているわけではなく、一瞬で起きる。0コンマの領域である。反射的反応。
しかも、言語は関係ない。非言語でなんらかをキャッチして解釈している。

このモードになると、視野は狭く、聴覚の聞き取れる周波数が変わり、振動への対応が変わる。身体は緊張し、どうにかして生き延びることを優先する。
いわゆる、闘争/逃走モードである。
闘争(Fight)も逃走(Flight)もできない状態になると凍り付く(Freeze)。この3つの防衛モードを3Fと呼んだりする。

たとえば、「あんなことを言うつもりがなかった」と後から思うことはないだろうか?
それは、このモードになっているときに起きる。
なぜなら、本能的に防衛している中で使う言葉は、相手とのつながりや思いやりを優先しないので、思考脳からもぎとってきた今使えるものを後先考えずに出すからである。
あとから、それが侮蔑の対象となろうとも、今、生き延びるのが優先なので、おかまいなしなのである。
相手にキレるとか、罵倒するとか、沈黙する、無視する、などもこれ。

防衛するモードなので、相手と真につながったら危険なのだ。敵かもしれないから。
そして、この敵かもしれないという判断を、思考脳はしていない。
情動脳と思考脳では、処理スピードが全く違う。
情動脳の処理スピードは、思考脳の100万倍である。
そして、あまりに早いので、思考脳は情動脳が防衛モードの処理をしていることに気づいていない。
そして、一度このモードに入ると、20~30分戻るのに時間がかかると言われている。
その間、思考脳は使えない状態(情動脳にハイジャックされている)になるが、おさまった後に、なぜ自分がそのようなことをしたのか混乱し、それに対して思考脳が言い訳、自己防衛、沈静化、正当化、他責、矮小化をする。

これ、すごくないですか?
これ知った時、めっちゃおもろいなーと思った。
同じ部屋(頭蓋骨)の中にいるのに、知らんのかいな!とツッコミたいが、まあ、進化の過程でそのようになったのにはそれなりの理由があるんだなあと感慨深かった。
いや、自分的にはもちろん生きづらいので、すぐやめたいと思ったけれども。

というわけで、防衛モードのとき、思考脳は働かない。寝てる。
思考脳は、つながりがあって安心感のある状態で十分な働きができる脳なのであって、防衛反応が出てる時は、サバイバルするほうが優先なのだ。
身体は、なによりも命を優先する。
あと、脳は身体の一部であって、脳が身体をコントロールしているわけではない。

なので、声が届かなくなるのである。
ぼーっと霞がかったようになり、クリアな思考はできなくなり、恐怖を基盤に動くようになる。
恐怖を基盤にすると、自分の中にすごいノイズが出てくる。
「自分には価値がない」
「不適格な人間だ」
「自分はできないやつだ」
このノイズを聴きながら、相手の声を聞くことになるわけである。

そのノイズを聴いているときに、たとえば「話、聞いてる?」と指摘されたらどうなるか?

相手が攻め込んできたとさらに防衛反応が出る。
身体は見境なく全身に緊張が起きる。脳はさらに不安定になる。自分の内側が混乱を極めている。
外側からは、怒って攻撃しているか、不機嫌になっているか、沈黙して我慢しているか、笑ってごまかしているように見えるか、かたまっているか、ぼーっとしているように見えるか、な感じである。

でも、防衛モードになっていることを降りないと、相手が「ちゃんと受け取れていないみたいだけど大丈夫?」と言う意味合いで「話、聞いてる?」と言ったことには気づけない。
すごいメカニズムだなあ。

ちなみに、防衛モードでいるときに、思考でこのノイズに気づくのは、かなり難しいといろんな学者が言ったり書いたりしている。
でも、身体を手掛かりにすれば見つけることができる。
身体では、必ず、「呼吸が浅くなる」「どこかに緊張が入る」ので。
そして、呼吸を深くして、身体の緊張を解除すると、ノイズが消える。

だからまず、呼吸を確認するのが大事なのだ。

相手とつながりたい、大切な存在なのに、防衛モードで対応してしまっていると、永久につながれないので。

ふだんから、胸でする早い浅い呼吸で過ごしている場合、常に防衛モードが準備万端でスタンバっている。
現実にストレスを感じるような状況になっていなくても、脳に「防衛、厳重警戒!」と合図を送っているようなものなのである。

脳は身体の一部なので、身体の状態と常に一致している。
身体が、呼吸が浅い、どこか緊張している、力んでいる状態であったら、思考脳はつかえていない。
つねに、情動脳が警戒警報だしていて、身体の内側は混乱している。
その混乱を思考脳なのだが、思考脳が働いていないので。

ずーっとこの状態で生きてきている場合、緊張している状態に気づけない。根っこから緊張しているので。

じゃあ、どうすんの?と思うでしょ?
だから意識的に呼吸を変えるんですよ。

呼吸を深く、一定のペースに戻すことに集中する。
呼吸が深くできるようになることがものすごい大事。
深い呼吸(横隔膜を使った腹式呼吸)でいるときに、過剰な緊張状態でいることはできないからである。
そのように身体はできている。
横隔膜を使った腹式呼吸を学習するには、時間がかかる。
時間はかかるが、やるだけの価値があると世界のソマティックな心理学つかってセラピーしている先生方は口をそろえて言う。

というわけで、私は呼吸をやり始めたら、防衛モードが外れていられる時間が増えた。

そして、あれ?今、この人の声が届いてないな、と気づけるようになってきたわけである。
相手が支配してきている、暴力をふるってきているなどの状況ではないのに、防衛モードが発動しているということは、私の内側にそう解釈するトリガー(引き金)がある。
そこを観て、受容する。受容すると、行動を変えられる。
防衛モードを発動しなくてよくなる。

私たちの情動脳は、常に尊重、共感、思いやりが必要なのだ。
そのためには、まず、自分自身に尊重、共感、思いやりを与える必要がある。
身体の緊張をとるのは、自分自身への尊重であり、共感であり、思いやりだ。そして、一緒にいる相手のためでもある。

私が日々、常に自分に言い聞かせているのは、(特に子育てで・・・)
「相手は常にベストを尽くしている。たとえ、私の目にそうは見えなくても」というものだ。
防衛反応で出している行動は、不適切に見えることは多い。
でも、私たちはみんな健康で、幸せに、お互いを尊重しながら生きていきたいと願っている。

ということで、なかなか気の遠くなることではあるが、これを続けていくことにしている。

では、またね。






■告知■

★2023年 呼吸であり方をととのえるお稽古★
1年間をとおしてお稽古するクラスです。

https://www.mayumiinaba.com/breatheclass

★2023年 おうちで性教育~包括的性教育を学ぼう~★

おうちで実践する性教育を学びます。
身近な人から子どもたちに性について
どんなふうに届け、伝えられるのか?を
共に考え学びましょう。

月1回開催です。初回は、12月16日(金)10時~12時
(全10回 オンライン) 

https://ouchideseikyoiku.peatix.com/

1096日連続毎日書くことに挑戦中です。サポートしてくださるとものすごくものすごく励みになります◎ あなたにも佳いことがありますように!