妊娠にまつわる迷信あれこれ

妊娠中、悲しいことにお葬式に出席する機会がありました。臨月だったのですが、大切な伯父のお葬式だったので大きいおなかを抱えてお別れを言いに行ったのです。その際に、そういえば、妊娠中にいろんな類の迷信を聞いたなぁと思い至ったのです。迷信を信じているわけではないのですが、そういうものがあること自体がなんだか興味深いなと思ったので、今回はそのお話を。

たとえば、実家に遊びに帰る途中、火事現場を通過したことを母に話すと、「妊婦が火事を見るとあざのある子が生まれるから見たらあかん」と言われたこともありました。あるときは、夫と外食中、カウンター席で一緒になった見知らぬおばさまから、「妊娠中にあわびを食べると目が綺麗な子が生まれる」と教えてもらったり。また、ある程度大きくなってきた私のおなかは、後ろからは妊婦だとわからないほどにズンと前に突きだしていたことから、道行く人に「まぁ、男の子ね」と言われたり(そしてまさにそうだったからなんとも・・・)。女の子だとおなかは横に広がるとか、ほかにも性別に関しては、顔つきがきつくなると男の子、とか、つわりがキツイと女の子、というのも。

それ以外にも、トイレを掃除するとキレイな子が生まれるやら、妊娠中はくじ運が上がるやら、焼肉を食べたりオロナミンCを飲むと陣痛が来る、やら。数え上げればきりがないほどにたくさんの迷信や噂が・・・。よくもまぁそんなに考えつくもんだなぁと、妙に感心してしまいます。地域によって、国によってもいろいろ違いがありそう。

冒頭で触れたお葬式においての迷信は、「妊婦はお葬式(火葬場)に行ってはいけない」というもの。死者がおなかの赤ちゃんも一緒に連れて行ってしまう、とかなんとか・・・。なんかちょっと怖い。この迷信をひもといてみると、昔のお葬式では女性が労働しなければならなかったので、妊婦の負担を軽くするための方便だったのではないか、と。たしかに、昔は喪服も着物で辛いだろうし、子どもを産む年齢の女性は食事等の準備を率先してやらなければならない立場だったろうし、長時間の拘束はかなりの負担だったことは想像に難くない。ただ、それでもお葬式に出席しないわけにはいかないときは、おなかのなかに鏡を忍ばせておくと死者の霊が反射されて大丈夫、との抜け道も用意されていた模様。私の場合、迷信を信じたわけではないのですが、火葬場との行き来が体力的に厳しかったので、火葬場には行かず葬儀場で休んでおりました。

新たな命を無事にこの世に送り出すために、昔からいろんな方便を用いて妊婦の身体や精神を守ったり、誕生を心待ちにしたりしていたんだなぁと、昔も今も変わらない、命がけの行為であるお産の凄まじさを思うのでした。

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