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GOOD WAR TOUR 19. モータープール

m.tanaka

朝8時から電話で全体ミーティング。
みんなの声を聞けて少し安心する。

昼から現地で、朗くんとまをさんと、音響のノブさんとで打ち合わせ。展示について考えてゆく。
試しにまをさんと私の声で録音してみて、ノブさんがスピーカーの塩梅を調整してゆく。

公募もしていた「あの日にまつわるモノ」として、私はうさぎのぬいぐるみを二つ持ってきていた。
子供の頃、毎年年末年始の一週間ほど、長野までスキーに行っていた。
このぬいぐるみは小学2年生の頃、そのスキーの道中買ってもらったものだった。
私には「宝物」がなかった。子供の頃から一緒にいるおもちゃやぬいぐるみなんかもなかった。
子供の頃は、なぜか「あなたの宝物はなんですか?」と聞かれることが多い。宝物を聞かれたとき、みんなアレコレ答えるのだが、私にはそれがなかった。
だからこのぬいぐるみを見たとき、私はこの子を宝物にしよう、一生大切にしようと決めたのだった。

光りそうで光らない、CCOの文字。

おおげさだが、はじめて自分で決意したあの日、そしてそれをまだ続けてる。
それから時間が経って、恣意的に「宝物にする」と決めたあのぬいぐるみは本当に宝物になった。
「あの日」にまつわる「もの」、と聞いたとき、私はこれが最初に頭に浮かんだのだった。
それなのに、いざ現場に持ってきてみると、なんだか照れくさくって、どうでもいい気がして、鞄から出すことができなかった。

海が見える。

私は私が茫漠と生きていけることを知っている。
だからこうして自分で何かを決めて、ポイントを打つようにして暮らしていく。
私は今までこういうふうにして生活してきたんだなと思う。
自分で決めて(おおげさな決意でもって)、自分で守って、自分で自分の人生を作っていく。

名村造船所跡地の窓は汚いので窓越しの景色は彩度とシャープが落ちている。

やっぱり「あの日」って、極めて個人的なものだ。
「あの日」の話をするとき、その人の/自分の、コアな部分に触れている/触れられている気がして、
「きかせてくれてありがとう」「きいてくれてありがとう」
素直にそう思う。

出演者陣にそれぞれ家で録音してもらった音声が、次々とLINEグループで送られてくる。
ノブさんが順次それらを編集してくれて、実験的に空間に放ってみる。
音が、言葉がスッと頭に入ってくる。
でも代わりにこの「場」の存在感が減ったような。「場所」と「声」が乖離している。  
体があったから、同等に存在しているオブジェクトたちにも目が向いたんだ。ああ体も一つのオブジェクトなのだなと実感する。

朗くんが、この場の示す「あの日」が「公演中止」の小さな枠に収まってしまうことを避けたい、というようなことを言った。
そう、もちろん別に、公演中止を惜しむ会をしたいわけじゃない。
でもこれは、紛れもなく一つの「あの日」になったよと思う。




制作28回目
日時:2022年1月25日(火)
出席:河井、蒼乃、河合、田中
場所:クリエイティブセンター大阪 名村造船所跡地

『GOOD WAR』は、私たちが「あの日」と聞いて想像する争いと日常で構成されています。
私たちは生きている限り、これからも誰かと戦い続けなければいけません。現時点で戦っていなくても、生きている限りいつか争いに巻き込まれます。『GOOD WAR』ではいずれ来る「その日」と、過去にあった「あの日」との向き合い方を鑑賞者と共に考えるべく、だれかの「あの日」で集積された記憶のモニュメントとして演劇作品を立ち上げます。

『PIPE DREAM』は、演出と出演を行う河井朗の祖母が医療ミスで植物状態に陥ったことをきっかけに、河井自身がマッチングアプリなどで無作為に出会った人々に「理想の死に方」についてインタヴューを行い、その中で語られた言葉から構成されています。
自身で動かすことのできない自分の身体、生きることも死ぬことも決められなくなった遠い自身、その自身の決定権を握っている人、それぞれと意思の疎通を図ることを試みる作品です。

『GOOD WAR』『PIPE  DREAM』

原案 『よい戦争』(作:スタッズ・ターケル 訳:中山容 他 1985年7月25日出版:晶文社)
構成・演出 河井朗
ドラマトゥルク 蒼乃まを、田中愛美
出演 伊奈昌宏、諸江翔大朗、渡辺綾子
美術 辻梨絵子
音響 おにぎり海人、河合宣彦
照明 松田桂一
制作 金井美希
制作協力 (同)尾崎商店、黒澤健
衣装協力 MILOU
記録 田中愛美

日時・会場
2022年2月10日(木)〜2月15日(火)|北千住BUoY
※当公演は一部公演日時・内容を変更して実施されます。詳しくはルサンチカWEBサイトをご覧ください。

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