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愛用中のドイツ語辞書と、辞書の選び方について

Hallo zusammen! みなさんこんにちは、めいです。
わたしはドイツの大学を出て、翻訳をやったりドイツ語を教えたりしてはいますが、それでもまだまだドイツ語修行中の身です。今もリアルに毎日辞書を引いています。
というわけで今回は愛用中のドイツ語辞書と、辞書の選び方について、本音ベースで語りまくりたいと思います。
それでは、los geht's!


まずは愛しのパートナー紹介

わたしは電子辞書派なので、カシオのEX-word一択でした。
使っているのはこちらのXD-Z7100。2018年モデルです。
ちなみに最新の2019年モデルはこちらだそうです。ソフト面では大きな変更はないようですが、画面がきれいになってて見やすそう…!

紙の辞書か、電子辞書か、はたまた辞書アプリか。悩みポイントの1つだと思うので、これについては後述します。


それではここから、わたしが実際に普段使っているドイツ語辞書について語っていきます!

その前に……
・上述の通りわたしが使っているのは電子辞書版なので、紙辞書及びアプリ版については当てはまらない記述がある可能性があります(中身の確認ができるものはできるだけした上で書きました)が、ご了承ください。
・この記事は出版されている多くの辞書同士の比較ではなく、あくまでわたしが使っているものについて書いたものです。当然ですが、他の辞書を愛用されている方を不安・不快にさせることを目的としているわけではありません。自分が好きなものを使い、学習を続けることが何よりも大切です。


学習者向けの神「アクセス独和辞典 第3版」(三修社)

初めてのドイツ語辞書を買いたい、という人に自信をもっておすすめできるのがこちら。初心者さんから既修者さんまですべての人に使ってもらえる神辞書です。

(三修社公式サイトはこちら


お気に入りポイント

・何を引いてもたいてい載っている
そんなの辞書なんだから当たり前なのでは?と思うかもしれませんが、だからこそこれが一番大切ではないでしょうか?「気になる単語、引けば載ってる」。これは収録語数が73,500語と豊富だからですね。「仕事で歯車についての翻訳をする」とかでない限り、まずアクセス独和辞典で引けば大丈夫です。

・見出しの下の情報が充実している
最重要語に限られますが、これが、パパっと調べたいときにとてもいいんです。fahrenを例にとると、見出しからの冒頭はこんな感じです。

fahren
(乗り物で)行く
(乗り物が)走る
乗る
運転する
(過去基本形)fuhr(過去分詞)gefahren(接続法2式)führe
(以下詳細)

「(乗り物で)行く・(乗り物が)走る・乗る・運転する」の4つが、主な意味であるとわかります。
ゆっくりじっくり辞書を読み込む時間と余裕のあるときは例文まで読むのが基本ではありますが、ドイツ語の授業中なんかに「あれ?これって何て意味だったっけ?忘れちゃった」なんてこと、誰にでもありますよね。そんなとき、アクセス独和辞典のこのレイアウトは圧倒的に使いやすいです。

・動詞の変化形で引いても載っている
これは初心者さんに特に嬉しい点かと思います。
例えば「Weißt du ...? の weißtってどういう意味だろう?」と思ったときに、アクセス独和辞典でそのまま引けば、「wissen『知っている』の現在形二人称親称単数」と出てきます。元の形のwissenがわからなくても、そのまま引けば意味がわかり、そして元の動詞がwissenということもわかるわけです。初級で習う動詞は結構カバーされている印象です。
わたし自身、過去形を習い始めたころ、不規則変化するものは元の動詞が全然わからなくて苦労したので(aßとか、gingenとか…ギムナジウムのドイツ語の授業で小説を読まされたりするとバンバン出てきました)、こんな辞書がほしかったなー。

・現代語が多く収録されている
例えばSmartphone, uploaden, Livetickerなど。新語・現代語に関してはインターネット辞書が強いイメージもありますが、なかなか載っています。びっくりしたのがPark-and-ride-Systemとか。


ここが惜しい!ポイント

・カナ読みの、コレジャナイ感
この問題、たまにTwitterでも取り上げるんですが、アクセス独和辞典にも一部、コレジャナイ感あるカナ読みが…。
「マルクト」とか「ヴルスト」なんかはもはやお決まりのパターンですが、最近びっくりしたのが「ツヴァール」と「ファール・シャイン」。そ、そうきたか…!
しかも、電子辞書だと発音が聞けるので聞いてみてほしいんですが、100%「マルクト」「ヴルスト」「ツヴァール」「ファール・シャイン」とは言ってないという。(笑)
いや、これはこの辞書だけの問題ではないし、カタカナでドイツ語の正確な読み方を表記するのは無理であることも重々わかっています。でも、でも、このへんは頑張ればいける範囲じゃないのかな…!「マァクト」「ヴアスト」「ツヴァー」「ファー・シャイン」とか。何か業界的な事情とかあるのかな…?謎です。


ドイツ語での表現力を伸ばそう!「アクセス和独辞典」(三修社)

個人的に、自分の書きたいこと・話したいことを調べて書いてみる・話してみることは、ドイツ語力向上に欠かせないと思っています。そのためには、和独辞典という相棒がいると心強いですよね。

(三修社公式サイトはこちら


お気に入りポイント

・新語も豊富に掲載
こちらの辞書は2011年末に発売されたとのことで、数少ない和独辞典の中でも最も新しい部類に入るのではないでしょうか。日常でよく使う単語はもちろんのこと、新語・現代語も多数収録されています。例えば「アクセス権」、「リブートする」、「リストラ」など。

・用例が多く、わかりやすい
日本語で引いたとき、ドイツ語訳だけがずらりと並んでいたとしたら、自分が使いたい意味合いの語を選ぶのは難しいですよね。でも、アクセス和独辞典には用例がたくさん載っているので、それぞれのドイツ語の単語の使い方がわかりやすいです。

・これが言いたい!が、もう用例として載っている
上とややかぶりますが、たとえば「時間」と引くと、別の用例がたくさん出てきます。「時間にルーズな」「時間の問題」「時間のロス」「時間をつぶす」などなど。大体「時間」を引くときって、その語だけではなくて、「時間」という語を使って「時間がXX」「時間のYY」って言いたいことが多いと思うのですが、XXやYYも別々に引くのは結構労力が必要ですよね。そんなときにありがたい、用例たっぷり!な辞書です。


ここが惜しい!ポイント

特になしです♡

あ、書く勉強法に関しては、こちらの関連記事もよかったら^^


ドイツ語を極めたい人のための「小学館 独和大辞典 第2版」(小学館)

溢れ出るラスボス感。翻訳会社にいたころ、これの紙辞書版を使っていました。紙には紙のよさってありますよね…懐かしい。

(小学館公式サイトはこちら


お気に入りポイント

・「もうこれに載ってなければしょうがない」レベルの充実度
収録語数なんと16万語!ということで、本当に何を引いても載っています。医学系、理化学系、生物系の専門用語なども多数収録されています。わたしがよくやるのは、アクセス独和辞典で引いてみる→なければ独和大辞典へ、の流れですね。独和大辞典になければもうネットで検索かけたりしてどうにか探し当てるしかないかな、という感じです。
上級レベルの学習者や、実務でドイツ語を使う方にとっては必須かなと思います。


ここが惜しい!ポイント

・ただただ、重い
紙の辞書ってどれもそうじゃない?と思った方、独和大辞典の重さは学習用辞書のそれとは全然違います。漬物石になるんじゃないか?という重さです(漬物石見たことないけど)。大きいので取り回しもしづらいです。ただ、コンパクト版(上記リンクのものです)が出ていることと、コンパクト版ではない方の独和大辞典を買う人は現実的にはかなり少数だと思われる(価格も税抜き23,000円と高い…)ので、重さは実質的にはネックにはならないかな?

・第2版が出てからもう22年(!)
そうなんです。内容は22年間更新されていないので、新語の類は残念ながら期待できません。もちろん、22年でドイツ語という言語が著しく変化したということもないし、新語以外はほぼ網羅していると言えるので、大きな問題はないのですが。

・電子辞書版のレイアウトが好きじゃない
好みの話になって申し訳ないのですが、アクセス独和辞典と比較すると、使いやすさの面では劣るなあと。理由は、例文や成句を見るためにいちいち「用例」ボタンを押さないといけないからです。地味だけどチリツモな面倒くささもあり、どうしても最初に引くのはアクセス独和辞典になってしまうという。わたしがズボラなだけかもしれませんが…。

なんだか惜しいポイントのほうが多いように見えますが、これらを考慮に入れても、収録語の充実度という点が突き抜けていることから、独和大辞典はドイツ語を極めたい人のための最強の辞書だと思います。


ドイツ語をドイツ語で理解するための「Duden Deutsches Universalwörterbuch」(Bibliographisches Institut GmbH)

よく英語学習法でも「英英辞典を使わなきゃだめ!」などと言われますが、ドイツ語も中級以降は独和だけでは物足りなくなります。
そんなときに用意したい、THE 王道な独独辞典です。

(Duden公式ショップはこちら


お気に入りポイント

・翻訳ではわかりづらい語も、独独ならわかりやすい&理解を深めてくれる
辞書のお気に入りポイントとしていいのか微妙なところですが、やはり中級以上になると意識して独独で引くことが大切かなと思います。正直、意味だけサクッと知りたいときには面倒に感じたりもしますが、たまに独和でピンとこない語(重要語ではないため訳だけ載っているような場合)ってありますよね。そういった単語は、独独で見てみるとわかりやすかったりします。
krassという単語を例に見ていきます。ドイツの(特に)若い人が使っているのを、あなたが聞いたとしますね。まずはいつものように独和から。

アクセス独和辞典
krass
極端な、はなはだしい、ひどい

もちろん、読めばわかる…気もします。でも、ドイツ人の言う „Krass!“ には、なんだか当てはまらない気がする…?こういう「なんとなく違和感」「ちょっと気になる」ときは、独独辞典を引いてみます。

Duden DUW (一部抜粋)
krass
1) in seiner Art besonders extrem:
er ist en krasser Egoist.
2) (bes. Jugendspr.) in begeisternder Weise gut, schön:
der Urlaub war voll krass.

1は独和辞典にも載っている意味でした。でも2は違いますね。若者言葉で「感激させるほど良い、すごい」というような意味だとわかります。
…と、このように、独和に載っていない意味もあったりしますし、あえて翻訳ではなくドイツ語をドイツ語で説明してもらったほうがわかりやすいこともあります。
そんな例をもう1つ。読める人は読んでみてくださいね。

アクセス独和辞典
mitbekommen
①(口語)〔…4を〕理解する、聞き取る
②(口語)〔…4を〕耳にする、聞き知る
③〔…4を〕(持っていくために)受け取る
Duden DUW (一部抜粋)
mitbekommen
1) als Ausstattung o. Ä. bekommen:
bei uns bekommen die Gäste immer ein kleines Präsent mit.
2) etwas, was eigentlich nicht für einen bestimmt ist, [unbeabsichtigt] hören, wahrnehmen; aufschnappen (3):
die Kinder haben den ganzen Streit mitbekommen
3) eine Äußerung o. Ä. akustisch bzw. in ihrer Bedeutung erfassen, aufnehmen:
es war so laut, dass er nur die Hälfte mitbekam.
4) bei etwas anwesend sein und daran teilhaben:
sie hat von den Ereignissen nichts mitbekommen.

結構違うのがわかると思います。

…とまあ、辞書本体についてというよりも独独の意義みたいな話になってしまいましたが、これもよく使っています。


ここが惜しい!ポイント

・初級の人が使うにはハードルが高い
これは、この辞書が悪いとかではなく、どの言語を学んでいてもXX辞書のハードルが高いのは同じことですよね。Dudenからは、学習者用の独独「Deutsch als Fremdsprache Standardwörterbuch」も出ていますし、まずはこちらから試してみるのもよいかと思います。ドイツなら図書館や語学学校とかにも置いてあったりするので。


理解と記憶を助けてくれる「Oxford German Dictionary」(Oxford University Press)

英語が得意な人、英語も同時に学んでいる人にとっては、かなり助かる存在かと思います。紙辞書だと前半が独英で後半が英独辞典だそうです。


お気に入りポイント

・英語を通して理解や記憶を助けてくれる
これを読んでくれている多くの人は、ドイツ語を勉強し始めた時点で英語の知識の方が(程度の差こそあれ)多いはずです。もちろん、初級の段階では独和・和独辞典を使うことが圧倒的に多いとは思いますが、そんな人にも独英・英独辞典は試してほしい!です。
日本語とドイツ語はざっくり言って「違いの大きい」言語同士ですが、英語とドイツ語はそれに比べると「近い」言語です(※表現は感覚的なものですので、言語学徒の皆様どうぞお手柔らかに…)。そのため、ドイツ語の単語の中には、英語で言われたほうが日本語で説明されるよりすっきりわかるものもあります。似た概念や使い方をすることが多いからですね。パッと思いつくのはkommenとcomeとか。
また、ドイツ語と英語を比べてみると、似ているものもあれば似ていないものもあります。これを、理解や記憶のとっかかりにすることができます。「kommenって英語のcomeに似てるじゃん!」 とか、
「anrufenって電話するって意味かぁ。でもcallとは似てないな。覚えとこう」 とか、
「Studieって英語のStudyと似てるけど意味はどうなんだろう?」 とか、
内容は何でもいいです。とにかく自分がその単語を覚えられて、思い出せればいいので、何か引っかかる部分を勉強している間に作っておくことが大切だと思います。そのためには、独⇔日だけの2点を繋ぐだけでなく、英⇔独⇔日の3点を繋いでおくことがより効果的になるのではないかなと、わたしは自分自身の経験から考えています。もちろん他の言語、例えばフランス語やスペイン語などができる方は、点をどんどん増やしてもらえると楽しいはずです。

・例文も多い!!
無料のネット辞書には訳だけのものも多いですが、例文も豊富に載っています。この点は、特に英語が得意な方、英語も独語も勉強されている方にとっては特に嬉しい点かと思います。


ここが惜しい!ポイント

・初級の人が使うにはハードルが高い
特に英独については、複数の意味がある語の場合、どのドイツ語訳が適切なのか選ぶのが難しいかなと思います。


紙の辞書?電子辞書?辞書アプリ?問題

これはもう好みの問題もあるので、絶対これがいいよ!とは言えないのですが、わたしの考える「こんな人にはこれ」を書いておきます。参考程度に見ていただければ!

紙辞書
・紙辞書を引くのが好き!
・付箋を使ったり、書き込みをしたい
・辞書を持ち運ぶことは少ない
・辞書はとりあえず1冊目(=複数の辞書を使い分ける必要がない)

電子辞書
・辞書を頻繁に持ち運ぶ必要がある
・複数の辞書を使い分けたい
・ドイツ語以外の辞書(国語系など)も使いたい
・別言語の辞書なども入れたい(=追加コンテンツで辞書を拡張したい)
・ガツンと投資することで気合を入れて勉強したい
・勉強中にスマホやタブレットを極力触りたくない

辞書アプリ
・辞書を頻繁に持ち運ぶ必要がある
・スマホやタブレットと一体にして持ち運びたい
・複数の辞書を使い分けたい
・すでに別の電子辞書を持っていて、それとは使い分けたい
・必要な辞書だけ購入したい・買い足したい
・海外在住で、上記2タイプの購入が難しい


こんな感じでしょうか?ほかにもメリット・デメリットが何かありましたら、ぜひコメントで教えてもらえると皆が幸せになれると思うのでよろしくお願いします!


ちなみに:ネット辞書や無料辞書アプリじゃダメなの?

うーん、単刀直入に言って玉石混淆なんですよね…。例文が少なかったり、最悪内容とか名詞の性が間違っていたりする(実際に見たことある)のとで、ドイツ語を勉強してきた立場、また教えたりもする立場からは大声でおすすめはできないです。
なんだろう、たまに「これあるんだ!?」みたいな面白い単語とかがヒットするし、あと一番気軽に使える辞書ということもあって、絶対使わないで!とも言いにくいんですけども…。
この訳語はピッタリだな、とか当てはまらないな、とか、そういう判断のできるレベルの方は補助的に使うのもありなのかなと思います(が、そういう方は大体ちゃんとした辞書を使われてますよね。電子辞書忘れた!って日に使うくらいでしょうか)。
ただ、初級の方で何が正しくて何が間違いなのか判断するのがまだ難しい方は、自信を持つために辞書を引いているのに、その辞書に間違いが含まれているかも…?と疑ってかからなければいけない状況は避けたいですよね。
上記以外のものを含めどれもそうですが、出版社から出ている辞書は専門家の英知の結集です。本当は初級の人にこそ、ちゃんとした辞書を手に入れてもらい、用例を読んでもらい、自信をつけていってほしいな…とわたしが思っているのは、こういった理由からです。


以上、長くなりましたがわたしの愛用辞書と、辞書に対する考え方と、辞書の選び方アドバイスでした!
どなたかの参考になれば嬉しいです。
それでは皆さん、辞書を活用して、楽しいドイツ語ライフを♡


P.S. 辞書を引くことについて簡単にまとめたInstagram記事はこちらです。キャプションも読んでもらえると嬉しいです。


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