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あとがき:あの街とか飯テロとか、若き希死念慮とか、
※この記事は小説『パン屋 まよなかあひる』のあとがきになります。本編を読まなくても読めますが、本編を通らないとよくわからないかもしれません。
今回こそはエンタメ一直線に走ってやろう、執筆中ですら何度も決意し直したのに、どうも私はシリアスを持ち込まないと我慢ならないようです。読むのも書くのも軽すぎると物足りない派、まうです。でも、明るいお話にはなりました。
結果的にエンタメ寄りだけど徐々に自分の癖を全開にしていったのですが、いかがでしたでしょうか。多少は楽しんでいただけましたでしょうか。私は4話と6話以降が好きです。ところでお仕事小説部門でいいんですかこれ。
なんの話やねん、という方はお時間頂戴しますがこちらをご参考までに。創作大賞2024応募作品でした。
お時間頂戴しますなんて言いながら、YouTubeショートやTikTokが持て囃される今のご時世、小説ってとんでもなく効率の悪い娯楽なんですよね。そんなものを、しかも素人凡人の小説を計十数分から数十分もかけて読んでくださった皆様は一日何時間で生きてらっしゃるんですか。一生頭が上がりません。リアルタイムで追ってくださった皆様はもちろん、ゆっくり順番に追いついてきてくれる方も、完結してからまとめて読むよ!という方も、ありがとうございます愛してます。
……というゴマすりはいい加減このあたりにして、そろそろあとがきに移りますね(ネタバレあるよ)。
小説では具体的な地名を使っていませんが、舞台は広島県尾道市です。とにかく尾道の街を書きたくて、この小説を書きはじめました。尾道は今暮らす地域に身を置いてからというもの、幾度となく通うほど大好きな街です。たぶん日本一好きです。街の雰囲気、規模、景色、何もかもが私の理想どストライクなのです。あいにく尾道で暮らすことはおそらくこの先叶わないのですが、尾道の小説だけは一度書かねば!と愛を込めて筆を取りました。
ちなみに各話のヘッダー画像、一見話の内容と関係なさそうな風景なのですが、いずれも私が撮った尾道市内の写真です(黒猫も尾道の野良ちゃんです!)。物語は主に夜中に繰り広げられますが、一方昼間の様子は──という、千と千尋のエンディングのようなイメージで写真を選びました。単に夜に撮った写真が使いづらかったのもあるのですが。
そして飯テロ要素。これまでエッセイもどきや短い小説では散々食べ物を登場させてきましたが、そういえばしっかりがっつり飯テロ小説を書いたことがない、と思って。私の初の中編小説(4万字超えましたよ奥さん)は、めでたく飯テロに捧げられました。パンと海鮮丼が食べたくなれ。
主人公・あひる(作者からの愛情表現ということで、愛称で呼ばせていただきます)はそんな街のパン屋に迷い込むわけですが、結局のところ彼女は本当に死にたかったのでしょうか。
後ほどご紹介する当方128さんのご感想でも触れられていますが、1話でボストンバッグの中身もスマホまでも海に投げ捨てたあひる、実は財布だけはちゃっかり所持しています。保険証とか入ってたんですかね。この点に関してはもっと書きようがあったなと思うので機会があればちょこっと直すかもしれないのですが、要は最終話でリッカさんに指摘されている通り、だと思います。ただ死ぬというよりは、自分の人生をリセットするための旅、だったのかも。
彼女の死にたかった理由も、ひょっとしたら漠然としすぎている、と感じた方がいらっしゃるかもしれません。もちろん私の筆力不足ではあるのですが、あえてはっきりとは書かなかったところもあります。だって、若い頃ってなんか漠然と死にたくなること、ありませんでしたか。若い頃とか言いつつ、私も彼女と2つしか変わりませんが。
特に学生の頃はまだ視野が狭くて、思考も狭まりがちだったような気がします。彼女はその漠然とした希死念慮が孤独感と相まってどうしようもなく膨らんで、半ば自暴自棄になって尾道まで旅に出るという行動に出たんじゃないかなと思います。行動に出た時点でおそらく彼女には思い切りのよさがあって、物語を進めるごとにそんな彼女の本来の姿が見えてくる……ように書けたかどうかは微妙です。
あひるの孤独感の根源とも言えた母親との関係についても、小説の時点ではあれで終わらせた方がいい、と考えました。あの場面はあひると母親の関係をどうにかするためというよりは、あひるの中で美化された幻想を現実に引き戻すために必要でした。綺麗事で終わらせたくないのは私の意図でもありますが、でも、親子関係って案外複雑に絡まりあってて、ちょっとやそっとじゃすっきりしない問題でもあります。あひるが母親と本格的に向き合うべきときは、この先いつか訪れるはずです。
今回の物語は特に、まだまだ続く、という余地を残して終わらせたかったんです。最終話は物語の終わりというより、はじまりを意識して書きました。(ラストは専属編集者兼夫に助けられてかなり良くなりました)
それにしてもうまくいきすぎなんじゃないかなあ、と私は感じてしまうのですが、私自身がそうだったから、そういう小説しか書けなかったのです。死にかけた過去って過去でしかなくて、喉元過ぎればなんとやらなんですよね、良くも悪くも。もっともっとどろどろさせてもよかったのですが、それはそれで私の目指したかったエンタメからかけ離れてしまうので、かといってライトすぎても物足りないので、その塩梅が難しかったです。
記事やコメント等でも、いろんな声をいただきました。読者の方々それぞれに感じることに違いがあって、まだまだ未熟だなと気づかされる部分もあって、本当にありがたいです。
そして早速(早速すぎる)感想を書いてくださったお二方の記事をご紹介させてください……!(これ以降のご感想もマガジンに追加しようかなと思います)
どちらも熱が、愛がこもりすぎてて私抱えきれません。ちなみに褒めても私からはなんにも出てきません!が、#創作大賞感想 のハッシュタグをつけて感想を投稿するといいことがあったりなかったりするみたいですね。どうかいいことありますように。
近いうちに、小説に登場させたりモデルにしたりした尾道のお店やスポットもご紹介しようと思います。尾道で深夜営業、と聞いてピンと来た方もいらっしゃるはず……。尾道、とてもいい街です。
それでは、トータル10日間もお付き合いいただきありがとうございました。来週からは通常運転に戻ります。まうでした。
(追記)舞台の尾道紹介記事、できました。
ご自身のためにお金を使っていただきたいところですが、私なんかにコーヒー1杯分の心をいただけるのなら。あ、クリームソーダも可です。