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『パン屋 まよなかあひる』を読んで

皐月まうさんの最新小説「パン屋 まよなかあひる」読み終わりました!読み終わった今の気持ちと熱を保存するために感想を書いています。


私はまうさんの小説を過去に遡って読んでいたのでリアルタイムで読むことに憧れがありました。特に『少女よ、星になれ』は連載小説だったので作品を一緒に追いかける体験が出来なかったことに悔しさを感じていました。


そんな中なんと!!!『パン屋 まよなかあひる』が連載小説のような形で一日一話投稿されたんです!これは私が憧れていた作品をワクワクしながら追いかける体験でした。一気読みの良さもあると思うのですが、この場合はどんなに早くても一日待たなければならないのです。しかし、この待っている間に作品のことを考えてワクワクしたりソワソワしたりすることで、より作品の価値を高めることが出来るんです!


この小説を一言で表すと「パンが食べたくなって、人に会いたくなる」そんな小説です。


食べること、人に会うことは社会という集団で生活する生き物にとって基礎的でとても大切な要素であると思います。多くの人が毎日当たり前のように行えている一方で、それが当たり前にできなくなるとその個人にとって大きな問題となってしまうこともあります。


個人の意思として、朝食は食べないとか今日は人に会わない日と決断して部分的にそれらを行わないことは時にリフレッシュになることもあると思いますが、個人の意思に反して食べることができない、人に会うことができない状況はかなり苦しいです。


私も体調を崩して食べようとしても吐いてしまったり、人に会うことが怖くなったりしていました。食べることができなくなり、人と会うことができなくなってしまったから体調を崩したのかもしれません。どちらが先なのかは分かりませんが、とにかく苦しい時期でした。


まだ完全に回復したわけではないので、満足するまで食べたり、気軽に人に会ったりすることは出来ていませんが、この小説を読んでいると心の内側から「パンを食べたい、人に会いたい」という欲求が湧いてくることを感じました。これはリッカさんの背中を押してくれる思い切りの良さと、背中を支えてくれる安心感のおかげなのかもしれません。


そしてこの小説は夜が舞台になっています。


夜は日中よりも孤独を感じます。その孤独で静かな空間が、心の中にあるモヤモヤだったり、嫌な記憶の声を大きくすることがあります。今すぐには解決しない悩みをぐるぐると考えてその闇にはまってしまいます。


そんな時に光を照らしてくれるのが他の誰かの存在であるんだろうなと感じました。根本的な解決にはならなくていい、ただ話を聞いてくれるだけでも、ただそこにいてくれるだけでも、それが大きな救いになってくれる。


私は今まで孤独な夜を人に助けてもらったという経験が多くはありませんでした。一人寂しい夜を救ってくれたのは、人ではなく小説やラジオやテレビでした。しかし、『パン屋 まよなかあひる』を読んでそれが小説であれ、ラジオであれ、アニメであれ、映画であれ、その向こうには人がいることに気がつきました。そこに登場している人がいる。それを制作した人がいる。そんなことを考えると、実は私も人に救われていたんだなと感じました。


まうさん今回も素敵な小説をありがとうございます。毎日がワクワクウキウキでした!明日のあとがきもとても楽しみにしています!


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