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脚本14-1「レンジ・イモータル‐ゼロドリップ‐」

《大人の戦隊ヒーローは、こうだ!》


●登場人物
◯袴田是清(はかまだ・これきよ)赤
◯芹沢美蘭(せりざわ・みらん)紫
○田中一洋(たなか・いちよう)緑
○マリー・ピアット:ピンク
○守藤終無(すどう・エンドレス)青
○コンビニ
◯象堂征一郎(しょうどう・せいいちろう)セイ博士
○純未知流(じゅん・みちる)
○春日野輝火(かすがの・てるひ)


雑踏生徒「聞いた聞いた? また惨殺体が発見されたんだってさ」
雑踏生徒「最近多いよねぇ」
雑踏生徒「犯人もまだ捕まってないっぽいしさぁ」
雑踏生徒「警備はしてくれてるみたいだけど、正直休校にしてほしいよ」
雑踏主婦「ねぇねぇ山島さん、ここだけの話なんだけど、大田さんのとこに警察が来てたのよ」
雑踏主婦「えー、もしかして」
雑踏主婦「怖いわねぇ、わたしゃ怖くて怖くて」

 下駄箱前。ほとんどの生徒が帰宅したであろう時間。袴田是清は呼び止められた。

芹沢「是清君、ちょっといいかしら。お話があるの」

 芹沢美蘭が日傘を突きつけ鋭い視線を向けて。この高校、いや、袴田是清、芹沢美蘭の所属するクラスについてのみで都市伝説がある。
 芹沢美蘭と会話をすると、不幸になる。
 それゆえに彼女が口を開いたところを見たものはゼロだった。たった今、袴田是清を除いて。

是清「せ、芹沢さん……」
芹沢「なぁに。これで俺も不幸になるのか、たぶん死ぬまで彼女が出来ないどころか女の子と話すことすら出来ないんだろうなぁ。ああ、こんな醜い顔でごめんなさい。って顔をしてるわね」
是清「そこまで思ってないよ! てか醜いって酷くない!? 普通だと思いたい!」
芹沢「ええ、普通よ。ただあまりにも嫌そうな顔をされたものでムカついたの」
是清「ムカ、え? そんな顔してたの? 俺?」
芹沢「ええ、していたわ。そんなことより、お話があると言ったわよね」
是清「なんでしょ……」
芹沢「着いてきなさい」

 是清はしかたなく芹沢の後ろについていくことになった。
 たどりついた先は住宅街に佇むコンビニ。店頭ライトの奥に月明かりが覗く時間であ
った。

芹沢「ここよ」
是清「コンビニ?」
コンビニ「いつでも美味しいドリップマート♪味覚音痴もドリップマート♪」

 店内にはCMでよく聞くテーマソングが流れていた。とにかく味に拘っているらしいドリップマート、本当に味はいい。

芹沢「いい? あなたはこのメモに書いてある物をこの順番でレジへ持っていくの」
是清「ええっ、こ、これ買うの? なんで」
芹沢「いいから買ってきなさい」

 是清は仕方なく、成人誌、レーズンパン、靴下、とろろをレジへ持っていく。するとレジ係田中に芹沢が問いかけた。

田中「いらっしゃいませぇー」
芹沢「支配するは細胞」
田中「撃滅するは因子」
芹沢「我々は塵をも逃さない」
田中「セイ、ハー」
芹沢「ヨッ、セイ」
是清「なにいまのグベィッ」

 と、是清の言葉を待たず、床が開く。芹沢は床下へスカートを押さえながら直下したが、是清はレジカウンターへ顎をぶつけて血を吐いた。

 明滅する是清の視界が焦点を合わせてくる。さっきまでコンビニにいた彼らは現在、赤青黄色緑黒といった数え切れない種類の色で埋め尽くされた部屋にいた。

セイ「ちゃーっす。美蘭ちゃあん」
芹沢「セイ博士、連れてきました。第五過剰摂取体、袴田是清です」
是清「かじょー、なんだって?」
セイ「かしこマリーちゃん!」
マリー「はぁ~い、マリーちゃんをお呼びですかぁ~?」
セイ「是清ちゃんを縛り付けちゃってー」
マリー「はぁ~い、我慢して下さいねぇ~。ちょお~っと、ちょお~っと痛いだけですからねぇ~」
是清「えええ、痛いの? 嫌だよ、何されるわけ!? なんかこわ! 全体的になんかこわ!」

 抵抗むなしく囚われた是清は台座に固定されていた。その周りを数人が囲み、なにやら話し込んでいる。

終無「こいつが五人目かぁ?」
マリー「そうみたぁい、博士が目キラキラさせてたよぉ~」
田中「しかし我々にも選択する権利はある。仲間を選別する機会がほしい」
終無「いっちーよぉ、こいつを最初に見たのお前だけだろぉ? どーよ?」
マリー「私触ったぁ~」
終無「マリーちゃんは捉えただけっしょ」
田中「僕が見た感じは、普通だね。特に、感想はない」
マリー「マリーちゃんはぁ、けっこうタイプぅ~? かも?」
終無「そんな感想は……えっ!? マリーちゃん!?」
芹沢「私が見つけたの。文句あるの?」
田中「いえ、文句はないのですが……、彼の意見は聞いたのですか?」
終無「ねぇ、マリーちゃん」
芹沢「聞いてないわ。必要ないもの」
田中「また君は。強引な」
終無「マリーちゃん、俺マリーちゃんが好きだよ!」
マリー「早く目覚めないかなぁ~?」
セイ「はいよぉ~! どいたどいたぁ!」

 医療器具のようなトレーを転がしながら突撃してくるセイ博士をヒラリと避ける。

セイ「お目覚めの時間でぇすよー是清ちゃーん」

 チクリと注射をすると、是清の身体が痙攣を起こした」

田中「さぁ、どっちになるか」
芹沢「私の見つけた個体よ、こっちの味方になるに決まってるわ」
マリー「手ぇ握るぅ~」
終無「マリーちゃんっ……」
セイ「消化が始まったら。君たち、いいね?」
終無「しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね」
是清「グガアアアアアアアアアアア!!!」
田中「消化だ。仕留めるよ」
芹沢「待ちなさい」

 芹沢は是清のお腹をハンマーのように殴った。

是清「グボァッ!」
田中「ひどい」
終無「ざまぁ」
是清「うううう……うっ」
セイ「戻ってきたぁねぇ」
マリー「おかえりぃ~」
終無「しねしねしねしチッ」
是清「……これは、なに?」
セイ「説明しよぉぉぉぉぉうっっ!」
是清「うわ、ちょっと耳元で叫ばないでください……」
セイ「まず真実を告げる。君の過ごしてきた世界は偽物だぁよぉ。今日から君は本物の世界を見ることになる。覚悟は良いかぁい?」
是清「……ちょっと何言ってるかわからないです」
芹沢「博士、私が説明します」
セイ「はぁい、じゃ任せたよ。皆散った散ったぁ~」
マリー「美蘭ちゃんずるぅい」
セイ「君たちはぁ、僕の新発明を試してくれよぉ」
田中「ほほう、それは興味深い。是非。博士、是非」
是清「芹沢さん、いったい何が何なんですか。最初から全てがわからないです」
芹沢「この世界はね、地球そのものに見限られたの」
是清「見限られた? どういうこと?」
芹沢「数年前、世界の総人口が百億人を超えた事は知ってるわよね? その増えすぎた人口を減らそうと、地球は自己防衛のため「補正因子」をバラまいた」
是清「……」
芹沢「簡単に言うと地球自身が人間というウィルスを殺すために抗生物質を自力で作り出した。ってとこね」
是清「地球が、人間を殺すために?」
芹沢「そう、それを私たちは「消化作業」と呼んでいるわ」
是清「でも身体はなんともないけど」
芹沢「それが「補正因子」の特徴よ。感染者は視覚を操作されて、人型AIロボットを人間だと判断するようになるの」
是清「それに何の意味が?」
芹沢「人類の生殖機能を奪うため。人間と人間が恋に落ちれば人間は増え続けるでしょう? けれどそれがロボットと人間なら?」
是清「子はできない……そういうことか」
芹沢「そうよ。それが第一段階。でもこれは大した問題じゃない」
是清「第一段階? まだ何かあるのか?」

 警報装置が作動した。館内に「消化生物」襲来を知らせる放送が流れる。


脚本14-2「レンジ・イモータル‐ゼロドリップ‐」へ続く

◆まとめ
 脚本14-1「レンジ・イモータル‐ゼロドリップ‐」
 脚本14-2「レンジ・イモータル‐ゼロドリップ‐」
 脚本14-3「レンジ・イモータル‐ゼロドリップ‐」
 脚本14-4完「レンジ・イモータル‐ゼロドリップ‐」
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